FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

旅のこととか、旅に関する本のこととか。

Book-Asia

高野秀行『未来国家ブータン』|読書旅vol.111

6月は環境省が提唱する環境月間。私も1冊くらいそこに絡めた作品を紹介しようと、高野秀行さんの『未来国家ブータン』(2012年/集英社)を選んでみました。 雪男を追って 高野さんがブータンへ行くきっかけとなったのは、生物資源探索企業の代表(飲み仲間…

川内有緒『バウルの歌を探しに バングラデシュの喧騒に紛れ込んだ彷徨の記録』|読書旅vol.110

コロナウィルスの流行で外出自粛が推奨された2020~2021年、私はここぞとばかりに積読していた本を読みました。 その流れで『パリの国連で夢を食う』を手に取り、川内有緒さんの文章に惹かれ、デビュー作の『パリでメシを食う』や、開高健ノンフィクション賞…

小野一光『震災風俗嬢』|読書旅vol.107

今回選んだのは小野一光さんの『震災風俗嬢』(2016年/太田出版 ※2019年に集英社より文庫化)です。「旅に出られない間は旅に関する本の感想文をアップする」と宣言しているくせに、いわゆる旅の本ではありません。 しかし、ダークツーリズム/ブラックツー…

高杉裕二『中国で会社をつくったら、ひどい目に遭いました』|読書旅vol.106

今回取り上げる書籍は高杉裕二さんの『中国で会社をつくったら、ひどい目に遭いました』(2014年/彩図社)。前回の『中国なんて二度と行くかボケ! ...でもまた行きたいかも。』に続いて剣呑なタイトルです。 家庭の事情で旅行できない現在は、旅に関する本…

さくら剛『中国なんて二度と行くかボケ! ...でもまた行きたいかも。』|読書旅vol.105

母のリハビリ生活が長引く最中に、ご両親の介護について綴ったさくら剛さんのnoteを一気読みし、著者に対する印象がガラリと変わりました(※詳しくはこちらから)。自然と涙が溢れてきました。 ただし、それを紹介するのは自分的に違和感。あくまでも当ブロ…

高野秀行『イスラム飲酒紀行』|読書旅vol.104

陰暦6月の満月はヴィサカブーチャ(仏誕節)。今年は5月22日で、タイではお酒が飲めません。タイの禁酒日は年に5回あり、スーパーやコンビニ、飲食店でアルコールの販売が自粛。 この禁酒日が近付くと、普段はまったく読まれない『【検証】タイの禁酒日やア…

宮田珠己『わたしの旅に何をする。』|読書旅vol.103

3回連続で宮田珠己さんのエッセイに関する感想文の投稿です。何かすみません。しかも、近作ならまだしも、すべて20年以上前に書かれた作品ですが、どうか引き続きお付き合いください。 サラリーマン時代の雄姿 今回は、2000年に刊行され、そこから7年の時を…

宮田珠己『ときどき意味もなくずんずん歩く』|読書旅vol.102

こちらのページで書いた通り母の手術をきっかけに生活が一変。隣でリハビリの応援をしたり(※応援するだけで、実際は何の役にも立っていない)、他愛のない会話をして退屈しのぎの相手になったりする毎日を送っています。 母と過ごす時間は穏やかそのもの。…

宮田珠己『ジェットコースターにもほどがある』|読書旅vol.101

大型連休っぽいアクティヴィティーを何ひとつしないまま、GWが後半戦に突入してしまいました。残りの3日間も特にアガる予定は控えていません。 そこで少しはレジャー気分を味わおうと、今回は『ジェットコースターにもほどがある』(集英社文庫)を選んだ次…

春間豪太郎『草原の国キルギスで勇者になった男』|読書旅vol.100

前回の『グレートジャーニー 人類5万キロの旅1 嵐の大地パタゴニアからチチカカ湖へ』にて冒険欲が刺激された流れで、今回は『草原の国キルギスで勇者になった男』(2020年/新潮社)をピックアップ。 ニュータイプの冒険家 まず本書を執筆された春間豪太郎…

吉田友和『旅はタイにはじまり、タイに終わる――東南アジアぐるっと5ヶ国』|読書旅vol.97

今回選んだのは吉田友和さんの『旅はタイにはじまり、タイに終わる――東南アジアぐるっと5ヶ国』(幻冬舎文庫/2014年)。前回の『タイからはじめるバックパッカー入門』を読了後に、ふと読み返したくなりました。 吉田さんの作品をブログで取り上げるのはこ…

藤井伸二『タイからはじめるバックパッカー入門』|読書旅vol.96

前回の投稿に書いた通り、家庭の事情でしばらく旅行はお休み。旅へ行けない期間は読書ブログを復活させます。 今回選んだのは藤井伸二さんの『タイからはじめるバックパッカー入門』(2021年/光文社知恵の森文庫)。私にとってこれが藤井さんに触れる初めて…

青山誠『バンコク恋愛事情 愛タイ!』|読書旅vol.95

『さわやかタイ読本』『バンコクジャパニーズ列伝』『トロピカル性転換ツアー』に続き、またまた舞台はタイです。どうしてタイにまつわる本の感想文を連投しているかと言うと、10月末より約1か月タイへ行っていたから。 2020年3月ぶりとなる訪タイが楽しみす…

能町みね子『トロピカル性転換ツアー』|読書旅vol.94

男性から女性に、女性から男性になった方の談話も載っている『バンコクジャパニーズ列伝 いろいろあってバンコクにいます』を再読し(※詳しくはこちら)、ふとプーケット島を舞台にした能町みね子さんの実録エッセイ『トロピカル性転換ツアー』(文春文庫)…

皿井タレー『バンコクジャパニーズ列伝 いろいろあってバンコクにいます』|読書旅vol.93

前回の『さわやかタイ読本』(※詳しくはこちら)の延長線上で、今回はクーロン黒沢さんやエポック伊藤さんと共に同書を執筆された皿井タレーさんの『バンコクジャパニーズ列伝 いろいろあってバンコクにいます』(彩図社)をご紹介します。 何かを極めた在バ…

クーロン黒沢/皿井タレー/エポック伊藤『さわやかタイ読本: 国際奇人変人都市・バンコクへようこそ!』|読書旅vol.92

『東南アジア四次元日記』を再読し(※詳しくはこちら)、東南アジアのおもしろさを改めて確認したところで、今度はバンコクにズームイン。大作『さわやかタイ読本: 国際奇人変人都市・バンコクへようこそ!』(2002年/太田出版)をピックアップしてみました…

宮田珠己『東南アジア四次元日記』|読書旅vol.91

2010年発売の『世界一蹴の旅 サッカーワールドカップ出場32カ国周遊記』に感化され(※詳しくはこちら)、私も読書を通じて目前に控えたW杯出場国を疑似旅行しようと、手始めに日本が戦うグループEからドイツとスペインに関する本を直近2回で紹介しました。 …

奥田英朗『港町食堂』|読書旅vol.86

前回の酒と肴をテーマにした紀行文『世界ぐるっとほろ酔い紀行』に続き、今回ピックアップするのは奥田英朗さんのエッセイ『港町食堂』(2005年/新潮社)です。秋真っ盛り。食欲が止まりません。 直木賞受賞もおかまいなし? この『港町食堂』は雑誌『旅』で…

高木瑞穂『売春島「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』|読書旅vol.83

思いつきで始めた彩図社強化月間(創業30周年おめでとうございます!)。まだまだ好きな作品はたくさんありますが、私のスロウな更新ペースを考えると、これが今月ラストの投稿になる模様です。 トリを飾るのは『売春島「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』(2017…

崔碩栄『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』|読書旅vol.82

前回ピックアップした『台湾はなぜ親日なのか』を経て、今度は反日国である韓国について改めて考えてみたくなり、崔碩栄さんの『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』(彩図社)を手に取りました。 なお、もともと2014年に刊行されたこの…

田代正廣『台湾はなぜ親日なのか』|読書旅vol.81

前回取り上げた『中国の全省でバカヤローと叫ぶ』は私的に大好物なタイプの作品なのですが、1つ引っ掛かる箇所がありました。それは中国を23省と4直轄市と5自治区と2特別行政区の計34区分としていた点です。 中国側の認識は確かにそうでしょうし、著者も23省…

中田和尚『中国の全省でバカヤローと叫ぶ』|読書旅vol.80

今回は『中国の全省でバカヤローと叫ぶ』(2011年/彩図社)を選んでみました。2022年は日中国交正常化50周年の節目にあたる年。両国の友好関係をどうにかこうにか保とうとしている時期には、あまり相応しくないチョイスですかね。 でもまあ、何ともそそられ…

鹿取茂雄『封印された日本の秘境』|読書旅vol.79

今月は彩図社強化月間。嵐よういちさんの『海外ブラックマップ』に続いて取り上げるのは、鹿取茂雄さんの『封印された日本の秘境』(2010年/彩図社)です。 家庭と趣味の両立 2006年作『命がけで行ってきた 知られざる日本の秘境』でデビューした鹿取さんは…

さくら剛『インドなんて二度と行くか!ボケ!!...でもまた行きたいかも』|読書旅vol.70

前回ピックアップした『インド人の頭ん中』の流れで、もういっちょインド本を。今回はさくら剛さんの『インドなんて二度と行くか!ボケ!!...でもまた行きたいかも』(2006年/アルファポリス)を選んでみました。 さくらさんの作品を当ブログで取り上げるのは…

冬野花『インド人の頭ん中』|読書旅vol.69

直近で紹介した作品には、たびたびインドの話が登場します。旅人たちを魅了してやまないインド。〈行けば人生観が変わる〉と言われるインド。 マミヤ狂四郎さんはバラナシについて〈さすがに聖地なだけあって、神聖なる動物として崇められている牛は野放しで…

蔵前仁一『ホテルアジアの眠れない夜』|読書旅vol.68

前回ピックアップした蔵前仁一さんの自叙伝『あの日、僕は旅に出た』(2013年)は、文中にそれまで発表されたエッセイの話もチラホラ登場し、自然と過去作も読み返したくなる構成です(※詳しくはこちらから)。 ならば続け様にもう1冊、蔵前さんの作品を紹介…

宮田珠己『旅の理不尽 アジア悶絶篇』|読書旅vol.66

引き続きアジアの旅エッセイです。前回ご紹介したマミヤ狂四郎さんの『アジア裏世界遺産 とんでもスポットと人を巡る28の旅』は、著者みずから率先してトラブルに巻き込まれようとするフシがあり、一般の旅行者にはなかなか体験できないエピソードだらけでし…

マミヤ狂四郎『アジア裏世界遺産 とんでもスポットと人を巡る28の旅』|読書旅vol.65

集中力をどこかに置き忘れてしまったのか、ここ数日、どうにもこうにも注意散漫気味です。こういう時は真面目に読書しようとしても頭に入ってきやしません。 そこで、何も考えずにゲラゲラ笑え、かつ、くだらない挿画が多めの本を選ぼうと、マミヤ狂四郎さん…

水木しげる/村上健司『水木しげるの日本妖怪紀行』|読書旅vol.64

何だか妖怪づいています。前回の『アジアもののけ島めぐり―妖怪と暮らす人々を訪ねて』はバリ、ランカウイ、沖縄、ボルネオを舞台にしていましたが、沖縄のみならず、日本にも全国津々浦々たくさんの妖怪がいるはずだよな~と。 ならば今度は日本妖怪めぐり…

林巧『アジアもののけ島めぐり―妖怪と暮らす人々を訪ねて』|読書旅vol.63

梅雨の真っ只中。ジトジトした季節には怪談話がよく合います。かの『四谷怪談』だって、かつて四谷が鬱蒼とした湿地だったからこそ、生まれたはずですしね。 そんなこんなで、今回は林巧さんの『アジアもののけ島めぐり―妖怪と暮らす人々を訪ねて』(光文社…