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崔碩栄『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』|読書旅vol.82

前回ピックアップした『台湾はなぜ親日なのか』を経て、今度は反日国である韓国について改めて考えてみたくなり、崔碩栄さんの『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』(彩図社)を手に取りました。

なお、もともと2014年に刊行されたこの作品は、2019年に情報をかなりアップデートして文庫化。当記事では文庫版の感想を書いています。

 

反日教育は行わているのか?

公立高校のラソン大会で生徒たちに反日的なスローガンを叫ぶよう強制した教師が、それを拒否した学生に暴言を吐くという、2019年当時、日本でも少し騒がれた話題からスタートする本書(※事件の詳細はこちらの文春オンラインの記事へ)。

著者の崔碩栄さんはソウル生まれソウル育ち。1999年に留学生として来日し、大学院修了後は劇団四季ガンホーで日韓を橋渡しする業務に従事。2009年には一旦帰国するも、現在はふたたび日本に拠点を置いて、領土問題歴史問題にまつわる記事を多く寄稿されています。

表向き韓国では反日教育が行われていないことになっています。韓国側がそう主張しているのみならず、日本のメディアでも同種の意見を見聞きします。

ところが、崔さんは「確かに教科書の記述と単語だけを見たら、敵愾心や嫌悪感を学生に植え付けるような表現はさほど目立たないかもしれない」と前置きしたうえで、エピローグにこう書かれていました。

私が思う反日教育の定義は次のようなものだ。まだ、国家、民族、イデオロギーなどに対する概念が頭の中で固まっていない子ども、つまり日本に対して何の先入観や偏見を持っていない子どもが小学校に入り、義務教育と高等教育を通して日本に対する反感や憎しみを覚えるようになったのなら、それが「反日教育」だ。

さらに、「今の韓国の小学生たちを見たとき、日本に対して反感や憎しみを持っていることが多い」と続ける崔さん。

先入観偏見を持っていなかった子どもたちの中に、どうやって反日感情が芽生えていくのか。もちろん周りの大人の思想やテレビで流れるニュースも大いに関係しつつ、本書では教育にスポットを当ててその過程を探っていきます。

 

竹島問題に見る教育の在り方

例えば竹島問題(独島問題)。かねてより地理の授業では韓国の最東端と紹介されていたものの、次第に幅を利かせはじめ、2009年、とうとう小学5~6年生を対象とする1つの教科に格上げ。単独の教科書まであるらしいです。

日比谷公園と同程度の面積で、特別な資源があるでも、人が住んでいるでもなく、領土問題を除いた地域情報はほんのわずか。案の定、客観的な地域情報だけでは教科書としての分量が足らず、「韓国の主張、推測、希望、正当性、すべきこと」が追録されたとか。

韓国社会では「一致した意見」はすなわち「真実」とみなされ、その数が多ければ多いほど、神聖不可侵の領域となる。竹島問題がまさにこの例である。

(中略)この「一致した意見」は、韓国では必要十分な「根拠」として認められることになる。皆がそう思っていれば、他の根拠など必要ないからである。

ある世論調査によると、竹島を韓国の領土だと考える韓国人は98.2%。地動説を信じる同国民の割合86%と比べても、その異様な多さに驚かされます。

教育の在り方が知識の詰め込みから主体性を伸ばす方向へとシフトして久しい昨今、いくら日本絡みとはいえ、国連でも先進国入りした韓国が、自分の頭で考える余地を与えない、政治的な主張を多分に含んだ授業を子どもにしているって……。

 

日本の悪行は盛る

国民の総意が史実を盛る様子は歴史の教科書にもありありと。陸軍志願平制度については1960年代の時点で「若者を侵略の道具にした」と表現されていたのに、少しずつ徴用徴兵といった言葉が足され、内容も志願から強制へと緩やかに移行。

従軍慰安婦問題も然りです。強制連行を裏付ける資料はなく、日本の左派知識人より発信された情報がきっかけで、1990年初頭に同問題が過熱し、現在へと至るのは周知の通り。

そもそも市民団体のヒアリング資料をさほど歴史考証しないまま、義務教育の教科書に採用してしまうって、日本ではまず考えられませんし、次々と新たな情報が追加されていったのでは、両国間の歴史認識もズレていく一方です。

これも著者の言う一致した意見の真実化の一例。日本政府も事実は事実として認め、それに見合った賠償をすると伝えていることですし、どっかで折り合いをつけたいところ。いや、国民の反日過剰を巧みに利用してきた韓国政府は、一生この問題に折り合いなんかつけたがらないかな?

 

日本の善行は消す

話を盛る以外に、隠ぺいor削除パターンも見受けられました。日本海の建てた病院で日本人医師より種痘法を学び、天然痘から祖国を救った池錫永の功績は、日本の部分を外国に置き換えて教わるそうです(間違ってはいないですけどね)。

また、かつて中学校の音楽の教科書で10曲も掲載されていた洪蘭坡唱歌は、2000年代入って彼が親日派のレッテルを貼られるや否や、根こそぎ抹消。世界No.1の反日国として名高い北朝鮮すら、いまも洪蘭坡の曲を学校で歌うというから、流石にこれはやりすぎでは?

ネタバレっぽくなるので、このへんで止めておきますが、こうした事例が各時代の教科書の引用も交えて、次々と登場します(校外学習の定番スポット、西大門刑務所の話も強烈)。

小中高の授業でも、大学入試公務員試験でも、省庁や大企業の昇級に必須とされる国史能力検定試験でも、日本の悪行を盛り、善行を消す教えが徹底されている現在の韓国。

確かに、教科書に載っている1つ1つの表現は、露骨に敵愾心や嫌悪感を植え付けるものではありません。しかし、長期間に渡ってジワジワとこういう教育が続いたら、否が応でも反日になりますよ。何なら露骨に敵愾心や嫌悪感を植え付ける表現よりタチが悪い。

 

心地よい関係を構築するために

さて、ここで私の立場を明白にしておきます。私は韓国が大好きです。韓国料理には目がないし、愛用している化粧品も韓国産がけっこうな割合を占めています。人並み以上に韓流ドラマは観てきたし、K-Popもそこそこ聴いてきました。

韓国で気に入らないのは政治報道のやり方くらい。父の出張に無理矢理同行していた学生時代も含め、訪韓回数だってまあまあ多いほうだと自負しています。

だから、本書を読んで衝撃を覚えたと同時に、これまで韓国の方々から受けてきた親切を思い返し、変な話、ますます韓国好きになりました。

もし私が韓国で生まれ、韓国式の教育を受けてきたら、道に迷っている日本人は助けません。オススメの店も教えないし、拙い韓国語で話し掛けられても無視するし、意気投合して連絡先を交換することもないはず。

隣のテーブルに座ったアホな日本人がチョッパルを食べ切れなくて途方にくれていても、店の人に持ち帰り用のタッパーを頼むなんて、絶対しないと思います。でも私がいままで出会った韓国人は、まったくもって違いました。

特に右寄りの人はこの本の内容に憤慨するか、「韓国の教育は全然ダメだね」と謎のマウントを取りたくなるかもしれません。だけど、著者が『韓国で行われている「反日教育」の実態』を書いた狙いは、日本での反韓感情を煽りたかったのではなく、むしろその逆。

この本を通し、韓国人の反日感情が後天的なものであり、自らの体験ではなく歪んだ学習や情報習得により起きているということを日本の読者に伝えることができればと思う。私を含む多くの韓国人の人格形成のベースを知ること、そしてその後の教育変遷を知ることで、今の、そして今後の世代の韓国人を知り、互いに心地よい関係を構築するための良きヒントとしてほしいと望む。

いまの韓国社会に広がる反日感情が、見聞によって間接的に芽生えたのなら、日本人が直接的にポジティヴな印象を与えることで状況は徐々に好転していくだろうと思っています。そこは日本に数多いる韓国フリークの腕の見せどころ。

そういえば、日本人に対して良いイメージを持っていなかった朴智星選手も、Jリーグでプレイして考えが変わったと、昔どこかのインタヴューで読みましたっけ。

最後に、冒頭で触れたマラソン大会の様子をSNS上に暴露した高校生や、本書の著者に最大限の敬意を払いたいと思います。日韓関係の改善を心より願っている私は、こういう方々の勇気ある言動に触れるたび、いつもめちゃくちゃ熱い気持ちにさせられています。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

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