FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

旅のこととか、旅に関する本のこととか。

青山誠『バンコク恋愛事情 愛タイ!』|読書旅vol.95

『さわやかタイ読本』『バンコクジャパニーズ列伝』『トロピカル性転換ツアー』に続き、またまた舞台はタイです。どうしてタイにまつわる本の感想文を連投しているかと言うと、10月末より約1か月タイへ行っていたから。

2020年3月ぶりとなる訪タイが楽しみすぎた私は、出発前にタイ関連の本を読み、いっそうテンションを高めていたわけです。

今回取り上げる『バンコク恋愛事情 愛タイ!』(2007年/双葉社)も含め、旅気分を盛り上げるのに相応しい作品だったか否かは、自分でもよくわかりません。

なお、10月21日にアップした『世界一蹴の旅 サッカーワールドカップ出場32カ国周遊記』以降のブログ記事はすべて渡航前に書き溜め、予約投稿していた旨も、併せて白状しておきます(自分の性格上、旅行中にちゃんとブログを書くとは思えなくて……)。いつにも増して雑な仕上がりゆえ、気が向いたらリライトするつもりです。

 

なぜバンコクに通い続けるのか?

前置きはこのへんにして、本稿のお題である『バンコク恋愛事情 愛タイ!』について。執筆を手掛けた青山誠さんは、主に歴史・紀行・人物伝を扱うリーライター。下掲の『散歩の達人』のウェブサイトによると、紀行のなかでは特にアジアの辺境を得意とされているとか。

san-tatsu.jp

おそらく辺境地への経由で繰り返しバンコに立ち寄っていたのでしょう。いつしか青山さんは、買春目的でバンコクを訪れる日本人男性に対し、こんな疑問を抱くようになります。

数年前から俺は、このバンコクで遊ぶ男たちのことが気になっていた。とても不思議だったのだ。働き盛りの男が忙しいスケジュールを調整し、長時間狭い飛行機にとじ込められる苦難の旅をしてまで、なぜバンコクに通い続けるのか? 日本でお手軽な風俗に通うか、素人相手に援助交際でもしていたほうが、よほどコストパフォーマンスは高そうな気がする。

また、その男たちの多くが、タイで馴染みになった風俗嬢のことを「俺の彼女」と呼ぶのをよく耳にした。日本で遊んでいても、馴染みになったキャバクラ嬢ソープ嬢のことを「彼女」とは呼ばないだろう。ここに、不思議を解くキーワードが存在するように思う。

つまり、彼らはバンコクへ「遊び」に行っているのではなく「レンアイ」をするために言っているのだ、と。高い航空運賃を払って機長な有給休暇を消費しても、会いに行く価値はあると確信しているのだ。彼らは、昔の「アジア豪遊」といった買春旅行者とは、あきらかに異質なタイプの人種なのである。

 

ハマリすぎた男たち

本書の主役はバンコクで娼婦にどハマリしてしまった殿方たち。かしこまった場所で見ず知らずの人にインタヴューするのではなく、著者とは飲み仲間顔見知りばかりです。そこはご自身もバンコクでソレ系の店に通われていた賜物でしょうか。

読んでいて若干引っ掛かったのは、取材対象に向けられるやや白けた目線。確かにどれもけっこうハイレヴェルな事例ではあります。

彼女いない歴10年以上だの、素人童だの、日本では女性と無縁な生活を送っているケースが多く、これぐらい行き過ぎちゃった人でないと、読者の関心を引けないのも事実。その行き過ぎちゃった人と嬢の皆さんとの関係を疑似恋愛とし、本が進行していきます。

でもね、私からすると、割り切って遊んでいる人(=青山さんタイプ)も、心まで骨抜きにされた人も同じ穴の狢。

実録パートはよしとして、心まで骨抜きにされた人、すなわち取材相手の言動に対して著者自身の考えを述べていくパートに関しては、〈自分のことを棚に上げて……〉とか〈同朋をそんなふうに言わなくても……〉的な思いがどうも拭い去れませんでした。

それに、相手がプロだろがアマだろうが、私は恋愛なんてほぼほぼ錯覚だと思っているフシがあり、本人が本気ならそれはもう疑似の付かない恋愛と謳ってOKなんじゃないかと。彼らの恋愛が本物か偽りかを第三者がとやかく口出しするのって、少々野暮な気がします。

つまるところ、実録に特化して何を感じるかは読者に委ねてほしかった、あるいは、他者の分析だけでなくご自身の体験をベースにした省察も入れてほしかった、というのが個人的な感想※あくまでも私個人の好みの話です)。

 

夜のガイドブック

いや、この書きぶりは誤解されますね。本全体としては非常に好きです。ナナ/ソイ・カウボーイ/タニヤ/パッポンといったバンコク4大風俗街にフォーカスし、各エリアの歴史や特色、業態の分類、そこで商売する女の子の傾向、システムや料金体系、外国人客の序列(金払いの良い日本人の評判は上々だそうですよ)などなどを紹介。凄く勉強になりました。

エリアごとの客層は何となく肌で感じながらも、ぶっちゃけ、ゴーゴーバー、テーメー、バービアの細かな違い格付けをよく理解していなかった私にとって、『バンコク恋愛事情』はこれ以上ないほどわかりやすい教科書です。

加えて、巻末の参考文献一覧まで辿り着き、日本語で書かれた関連書籍がそれなりに充実している点にも驚かされました。

言わずもがな、初心者の人にとっても、〈自分の性格や嗜好にはこのエリアに狙いを定めたほうが良いだろう〉みたいな発見があるはず。

ちゃんとお金を落とせない私なんかより、未来のお客さんに読んでもらったほうが比較にならないほど大きな価値があります。

何事も経験。バンコク妖しいネオン街に興味津々の方は、この本を参考にぜひ勇気を持って一歩踏み出してみてください……って、何の話でしたっけ?

 

いざタイへ!

今回の訪タイでも、ナナやソイ・カウボーイのあるスクンヴィット地区に数泊し、鼻の下を伸ばした日本人男性と派手な身なりのタイ人女性のカップルを数組ほど目撃しました。これもまたバンコクらしい光景の1つ。

お金で愛を買う行為にネガティヴな声も上がりがちですが、デレデレした男性陣の表情を見るのが私は意外と嫌いじゃないです。〈汗水流して稼いだお金を自分の幸せのために使って何が悪いの?〉という感じ(けっこうグレーではあるものの、違法行為ではないですしね)。

オタクが推しに貢いだり、ギャルが自分へのご褒美にブランド・バッグを買ったり、私やツレが普段の出費を抑えて旅行につぎ込んだりするのと感覚的には大差なし。夢中になれる何かを持っているって、ある意味、尊いです。

本編に登場するナナ・プラザで日本人ウケNo.1のRainbow2をはじめ、一時はコロナ規制で閉店を余儀なくされていたバンコクの夜の遊び場も活況を取り戻しつつある現在。ファランアラブ系はすでに大勢戻ってきています。あとは日本人男性の本格的な帰還を待つのみ。

この種のネタを不快に思われる方もいらっしゃることは承知のうえで、欲望渦巻くバンコクの空気感が好きな私は、完全にコロナ前の状態に戻ってほしいとの願いも込め、今回あえて『バンコク恋愛事情』を取り上げてみました。

さて、次回から読書ブログはしばらくお休み。やっと旅ブログを再開できます。よかったらまたお立ち寄りいただけると嬉しいです。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

www.futabasha.co.jp

 

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