FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

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田代正廣『台湾はなぜ親日なのか』|読書旅vol.81

前回取り上げた『中国の全省でバカヤローと叫ぶ』は私的に大好物なタイプの作品なのですが、1つ引っ掛かる箇所がありました。それは中国を23省4直轄市5自治区2特別行政区の計34区分としていた点です。

中国側の認識は確かにそうでしょうし、著者も23省の後ろに「台湾を含んだ場合」と補足されていたとはいえ、少なくとも係争地域である台湾は中華人民共和国の一部でないと見なすべき。

国際法上、台湾は独立国家として承認されていません。でも、私の中で台湾は台湾。スポーツと政治は分離しようとか言っておいて、世界大会で台湾がチャイニーズ・タイペイと名乗らざるを得ない状況にも、物凄い違和感を覚えています。

そんなわけで、今回は『台湾はなぜ親日なのか』(2015年/彩図社)を。なお、自治区(新疆ウイグル内モンゴルなど)と特別行政区(香港とマカオ)にも、無知なりに感じるところはたくさんありつつ、ひとまず台湾のお勉強から。

 

いまこそ台湾を知ろう

最初に白状しておきます。私は『台湾はなぜ親日なのか』を長らく積読していました。数年の時を経て本書を開いたきっかけは、ペロシ米下院議長の訪台と、それを受けて行われた中国の軍事演習です。

8月の時点ですぐに感想文をアップしようと思ったものの、をブログのコンセプトに掲げている手前、ちょっとテーマがずれるかな~と一旦保留。

しかし、今月は彩図社縛りで記事を投稿することに決め、ついでに『中国の全省でバカヤローと叫ぶ』の23省問題も重なって、〈せっかくだし紹介しておこう〉みたいなノリです。

電子機器メーカーに勤めていた著者の田代正廣さんは、1980年代に台湾の高雄へ赴任。その際、なぜ台湾は日本に好意を寄せてくれるのか不思議に思い、関連資料を集めはじめ、取材を重ね、そして『台湾はなぜ親日なのか』へと至ります。

 

日本統治時代の功績

日清戦争後の日本統治下の台湾、世界大戦後の台湾、中国国民党による戒厳令下の台湾、さらに現在の台湾と、4つの章に分れる本書。これを読んで、台湾史の流れがだいぶ掴めました。

1660年代にオランダ占領から台湾を解放した鄭成功の母親が、平戸出身の日本人ということすら私は知りませんでしたが、何にせよ古くから続く日本と台湾の妙な縁を感じた次第。

また、日本初の植民地となった台湾に、時の政府がインフラを整備して近代都市の建設に尽力した事実も、うっすらと概要を認識していた程度で、具体的に児玉源太郎新渡戸稲造が何をしたのかは本書を通じて初めて学びました。

台湾の統治の目的は、征伐することではなく、安定した生活をもたらすことである。(中略)台湾も日本と同じアジア人の国だから、近代化を図り、根底から変えてほしい。部下の実力を見抜き、部下を信頼して任せ、自分の損得を行動基準に置かず、人物本位を徹底するように。

上記は、台湾人の慣習を重んじた第4代総督の児玉源太郎が、民政局長の後藤新平にあてた言葉。ここで指す部下は台湾人かと思われます。さらに著者は続けます。

これらの考えは、産業で得た利潤を本国に吸い上げる欧米型の植民地政策とは根本的に異なるものである。民衆から搾取するのではなく、民衆に忠誠を強いるものでもなく、民衆と共に生きようとするものであった。

画期的! 上下水道や交通網を整備し、阿片や疫病対策に力を注ぎ、ダムを建設し、農業改革を推進した日本統治時代の話は、いまも台湾の歴史授業でそうとうな時間が割かれているらしいです。

下関条約の時に伊藤博文は清側の代表から「台湾には4つの禍がある。それは阿片、土匪(ゲリラ)、首狩り族、風土病で、統治は不可能」と言われたとか。

それを30~40年で様変わりさせた(主にインフラ整備における)日本の功績は、台湾で高く評価されている反面、日本の教科書には私が記憶する限りほとんど出てきません。

こういう話を義務教育のカリキュラム内でちゃんと教えてくれないから、私みたいな愛国心の希薄な人間が育つんですよ(たぶん)。

ついでに、田代さんは台湾高速鉄道で日本のテクノロジーが採用された経緯について、〈直前に921大地震が起こり、地震大国・日本のノウハウが必要だったのでは?〉という見解に加え、〈台湾近代化の礎を築いた日本統治時代の技術力や功績が買われた結果ではないか?〉と考察。願望込みで私もこの説を信じたいです。

 

日本は中国に比べてマシだっただけ?

とは言いながらも、植民地時代ですからね。台湾へ派遣された日本人の中には地元の方に傲慢な態度で接する官僚や軍人がいたと言いますし、第二次世界大戦下に強制された皇民化も、台湾人の慣習を重んじた児玉源太郎の施策の真逆を行くもの。このあたりは読んでいていたたまれない気持ちになりました。

結局は蒋介石の圧政や戒厳令の押さえ込みに比べ、日本のやり方がまだマシだっただけ。反中感情の高まりと共に年々それが美化され、さらにファッションやアニメ、アイドルをはじめとする日本ブームも相俟って、台湾=親日国なイメージが浸透しているのであって、私たち日本人はあまり自惚れちゃいけません。

田中角栄が急ピッチで進めた日中国交正常化にしたって台湾をないがしろにしすぎだし、その後も中国に良い顔をしたいばっかりに、日本は台湾にけっこう酷い仕打ちをしてきました。

東日本大震災直後に世界でいちばん義援金を用意し、1周年の追悼式典でも献花を送ってくれた台湾に対し、民主党政権の不手際で国名を読み上げる指名献花から外してしまったミスなど言語道断。

式典に出席した中国への配慮で、意図的に台湾の名前を削除したとかじゃなければいいのですが……(流石にそれはないか。)。

 

親台派の日本人にできること

もっとも、中国の顔色を窺わず好き勝手に振る舞える国や機関は、世界中どこにもありません。WHOIOCも中国の言いなり。

台湾が国連に加盟できる日は果たして訪れるのか。真の意味での台湾独立を心から願う一方、政治外交レヴェルでの進展はなかなか見込めなさそうです。こと日本政府には、まったく期待していません(※あくまでも個人の意見です。ちょっと最近、政治不信が増していて……気分を害されたらゴメンナサイ)。

だけど、民間レヴェルとなれば話は別。先述した民主党政権の大失態も、日華協会石巻市の中学生がタッグを組み、台湾の主要テレビでお礼広告を流して挽回してくれています。

私たち日本人は台湾が大好きで、『週末台北のち台湾一周、ときどき小籠包』をピックアップした記事でも書いた通り(※詳しくはこちら)、コロナ前までは人気旅行先ランキングで台湾がハワイと1位を競い合っていました。

ついでに、我が家の烏龍茶プーアル茶は台中問題における心情も加味して必ず台湾産にしています。言わずもがな、台湾産のお茶は味も最高!

まあ、台湾茶を買うとか、台湾産のフルーツを買うとか、たとえ1つ1つは些細な行動だったとしても、日本に住む親台派※あえて親華派とは書きません)の民間人は、もっと意識的にラヴコールを送ったほうがいいんじゃないかなと。

コロナ以降、他国に比べて厳しい入境規制を敷いている台湾と日本。観光目的で人が行き来できるのはもう少し先になりそうですが、台湾からたくさんの観光客が日本にやって来て、日本からもたくさんの観光客が台湾に行ける――そういう当たり前の日常が早く戻ってほしいです。そうなれば、台日関係もより良くなるはず。

無論、私も台湾旅行へ出掛けたくて仕方ありません……なんて、最後の最後で若干ブログの旅コンセプトに無理矢理寄せてみました。

とにもかくにも、『台湾はなぜ親日なのか』は台湾を知ることで日本についても考えさせられる素晴らしい作品です。日本目線で都合良く書かれがちな類似本とは異なり、現地の政治運動家など違う角度の意見も交え、極力フラットに事実を伝えようする姿勢が伝わってきて、そのへんも凄く魅力的だな~と感じました。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

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