FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

旅のこととか、旅に関する本のこととか。

平間康人『アジア「裏」旅行』|読書旅vol.61

しばらく南の島に関連した書籍が続き、すっかり心も洗われたところで、今度はその反動から、スリ/盗難/ぼったくりなどなど、旅につきまとう厄介なトラブルをまとめたエッセイが読みたくなりました。

これ系の本なら四の五の言わずに彩図社です。私は危険地帯の様子観光名所の裏の顔を知れる作品が好きみたいで、数えてみると、当ブログで彩図社の旅本を紹介するのは今回が7回目でした(確率にして11%強)。

 

二足の草鞋を履く作家

本稿の主役『アジア「裏」旅行』(2003年)の著者である平間康人さんは、中学3年間をイギリスのウェンブリーで過ごし、大学卒業後に旅行会社へ就職するも、わずか4か月で退社。

タイ料理屋イヴェント運営会社を転々とした後、ITアウトソーシングのサラリーマンとライターの二足の草鞋を履いて活動されている人物です。

ただし、二足の草鞋云々というのは2019年の情報で、Twitterの更新もストップしている現在、平間さんがどこで何をされているのかは不明。

アフリカ「裏」旅行』(2008年)や『南米「裏」旅行』(2011年)をはじめ、危なげな本ばかり執筆してきた方ゆえに、一抹の不安も覚えつつ、おそらく本業に手一杯で、いまはSNS無精が発動中なのでしょう。

『アジア「裏」旅行』のプロフィール欄には、〈近い将来(?)サムイ島でバンガロー経営の予定〉と書かれていて、なかなか実現できていない点も含め、勝手にシンパシーを抱いています。

平間さんにはいつかサムイバンガローを開いてほしいし、私も現在の生活の延長線上にあるノマドワーカーとかじゃなく、向こうでその手の商売をしたいです。

 

トラブルを招く男?

さて、『アジア「裏」旅行』の話。本編には、平間さんがアジア旅行で経験してきたさまざまなトラブル事例をたっぷり掲載。

だいたい友人と初めて行った海外旅行先の香港で、着いた初日にアラブ人集団からボコボコにされるって、ある意味、この人は持っているとしか思えません。

以降も、マニラで拾ったタクシーの運転手と口論になり、車のボディーを思いっきり蹴り上げて立ち去ろうとしたが最後、背後から鉄パイプで強打されたり……。

はたまた、暇を持て余していたアーグラ滞在時に〈一緒にチャイを飲もう〉と誘われ、のこのことついて行った先で軟禁された挙句、とうとう日本語でブチ切れ、ドアを壊して逃亡したり……(※運が悪ければ、殺されてもおかしくない場面だと思います)。

自業自得とまでは言いませんよ。平間さんにも多少の落ち度があったとはいえ、原因は概ね先方にあります。だけど、この人は相手の挑発に乗ってしまいがちな性格らしく、自ら問題を大きくしている気がなきにしもあらず?

そんなわけで、あまりこの本を参考にしちゃいけません。真に受けて同じ対策を取ろうものなら、とんでもない事態を招く可能性大。

それでも、ビビりな私は埒が明かないと判断するや、早々にど妥協してしまうタチなので、悪徳ドライバー詐欺師連中に頑として立ち向かう著者の勇士には、胸がスカッとしました。

 

ナメられてたまるか!

日本人は世界各地でカモにされます。ナメた態度で日本人に近寄ってくる輩は、過去に日本人から不当なお金をせしめたか、素行の悪い仲間から良からぬ知恵を吹き込まれているはず。

ここで私やあなたがあっさり折れてしまえば、この先、日本人ツーリストの間でさらなる被害が生まれかねません。

平間さんの危険を顧みない行動に、賛否は分れて然るべき。で、めちゃくちゃ無責任なことを言うと、私は彼の態度に賛成派です。日本を背負ってふざけた輩を成敗してやろう的な気概を、行間から薄っすら感じました(深読みしすぎ?)。

ちなみに、物騒なエピソードのみならず、合間にはちょっとイイ話もところどころ挿入されます。例えば、バラナシ日本料理屋で出されたカツ丼+肉じゃが+おしんこの3点セットが、どれも日本食の概念からかけ離れた品だったため、料理好きの平間さんは翌日から店主にクッキング講座を開いたとか。

また、一概にイイ話とは言い切れませんが、同じくインドのピザハットに入ろうとするも、格好がラフすぎたせいで、店員さんから「金はあるのか?」と軽く入店拒否された際の余話に、私はグッときてしまいました(※インドに限らず、私の経験上ではフィリピンやインドネシアでもピザハットは高級店の部類です)。

頭に来た平間さんは、一緒に行動していたリキシャマンとその友達4人を呼び寄せ、改めて店内へ入り、周囲から注がれる軽蔑の眼差しを無視して大量オーダー

会計時にドアマン2人が出口を塞ぐという侮辱を受けながら、〈こんなに安いのか〉とヒンドゥー語で呟き、紙幣を叩きつけたのです。

なお、この時、リキシャマンは著者の誘いを一度断り、ギリギリまで入店を躊躇ったそう。インドに根付くカースト制度の一端を見たと同時に(本当はこんなレベルじゃないんでしょうけど)、平間さんの芯の強さというか、納得のいかない事柄に対しては自分を曲げない方なんだな~と感じました。

全編を通じて平間さんなりの筋がちゃんと通っているからこそ、数々のデンジャラスな思い出話も、鼻持ちならない武勇伝ではなく、読者の興味関心を引ける仕上がりになっているのは確か。単なる〈大胆不敵な俺の自慢話〉だったら、私は早々にページを閉じていたと思います。

 

やっぱりアジアはおもしろい

〈物価が安く、ご飯が美味しく、人々はとてもフレンドリー〉といったイメージが強く、距離の近さも相俟って、日本から手軽に行けるアジア。しかし、手軽な反面、険性が忘れられがちではないかと、著者は警鐘を鳴らします。

外務省領事局が発表した2016年の海外における日本人の犯罪被害件数を見てみると、窃盗に関してはヨーロッパが全体の約56%とダントツの1位だったものの、詐欺、強盗/強奪、傷害/暴行、脅迫/恐喝の件数はアジアが他を圧倒(※大使館への相談件数が少ないテロや殺人は、被害項目別の統計が取られていません)。

参考までに、詐欺が全体の約49%、強盗/強奪が全体の約30%、傷害/暴行は全体の約48%、脅迫/恐喝は約54%でした。

もっとも、これはあくまでも大使館への相談件数をまとめたデータで、地元警察に駆け込む人だって相当数いるでしょうし、軽めの被害であれば〈自分の注意力が足りなかった〉と諦める人もいるでしょう。

そもそも日本からアジア各地に行く人の数が多いのだから、犯罪に巻き込まれる人数も多くて当然ですけど、何にせよ〈フレンドリーな人の中にも騙す人はいるよ〉って事実を頭の片隅に入れておくだけで、被害に遭うリスクはいくらか軽減されると思います。

とにもかくにも、『アジア「裏」旅行』の本編でたっぷり読者を怖がらせておいて、こんな文言もさらっと添えてしまう平間さんに、私は激しく共感しました。

最後にひとつ、私はさんざんな目に遭っていながら、それでもアジアに行くのを止めることはない。日本に帰ってくると、危険なことなどすぐに忘れて、次はいつ行こうかと考え出す始末だ。

アジアにはそれだけの魅力がある。人間の根源的なエネルギーに満ちている迫力がある。大きなエネルギーには必ず反動がつきものだ。その反動が危険ということになるのかもしれないが。それとうまく付き合うことがいい旅をするコツだと思う。

私はこれからもアジアに通い続ける。

私はアジアの謎にエネルギッシュな部分が大好きです。エネルギーが渦巻く場所には人が集まり、人が集まる場所では揉めごとだって起きる。正直、治安の良すぎる場所には、さして魅力を感じません。すぐ飽きちゃうんですよね。

こういう本を読むと、やっぱりアジアって最高だな~って思います。だから、私ももう少しコロナが落ち着いて、海外旅行の敷居が下がったら、ぼちぼちアジア通いを再開させるつもりです。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

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