FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

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中田和尚『中国の全省でバカヤローと叫ぶ』|読書旅vol.80

今回は『中国の全省でバカヤローと叫ぶ』(2011年/彩図社)を選んでみました。2022年は日中国交正常化50周年の節目にあたる年。両国の友好関係をどうにかこうにか保とうとしている時期には、あまり相応しくないチョイスですかね。

でもまあ、何ともそそられるタイトルじゃないですか。人でゴッタ返す万里の長城のカヴァー写真も素晴らしいです。

 

全省踏破を目指して

著者の中田和尚さん(もちろんペンネーム)は、1965年生まれ、兵庫県出身。関西の上場企業に勤め、2004年に出張で初の中国上陸を果たします。

異常な臭気が漂うトイレ、反対車線を逆走するタクシー、ケツ丸出しの子供、歩道を平気で走るバス、ゴミ箱状態の道路、勤務中に堂々と寝る警官……。

見るものすべてが新鮮で、ありえない光景と出来事のオンパレード。関西人であるオレの目には、国を挙げてボケまくっているようにさえ映った。

続けて、「短期滞在なら面白いけど、絶対に住みたくない国だな……」と率直な感想を綴られている中田さん。しかし、人生はままならないもので、その出張の1年後に広東省への赴任命令がくだされてしまいます。

慣れない環境下で激務に追われる日々のなか、中田さんは週末の小旅行で気分転換をはかるように。ほどなくして、3年の赴任期間内で中国全省を踏破したいと思い立ち、さっそく行動を開始しました。

表題からも窺える通り、行く先々で珍事件が起こるわ、起こるわ。その様子を少々の自虐と、たっぷりの愚痴を交え、テンポ良く伝えてくれます。

他の作家さんを引き合いに出すのはご本人やファンの方に嫌がられるかもしれませんが、最大級の敬意を込めて、私は宮田珠己さんとさくら剛さんを足して割ったような文章だなと感じました。

かなりがあります。やや下品でもあり、見方によっては差別的でもあります。だから、おそらく万人受けはしません。けどれども、刺さる人にはめちゃくちゃ刺さると思います。実際、私にはぶっ刺さりました。

よくぞ、彩図社はこんな逸材を発掘したな~と。本書が中田さんにとって最初で最後の作品になっているのは本当にもったいないです。

 

世界遺産もB級スポットに様変わり?

さて、第1章は世界遺産に監禁される(閉じ込められる)という、日本では、いや、世界的に見てもなかなか考えにくいアクシデントでスタート。ユネスコが定めた〈世界遺産条約履行のための作業指針〉を思いっきり無理した大らかな管理体制に、のっけから度肝を抜かれました。

現時点で中国は世界遺産の多い国ランキング堂々の第2位。長い歴史を持ち、国内の至る場所に遺跡がゴロゴロあるせいなのか、人民の皆さんはそれらをさほどありがたがっていない模様です。

例えば西夏王陵でのひと幕。乗り越え禁止の看板は無残に投げ倒され、塀の上には複数の人影が……。アンコールワットやボロブドゥールなどで私もしばしば目にしてきた中国人のこうした行動は流石に笑えません。とはいえ、この手のノリ(↓)はけっこう嫌いじゃないです。

中国では由緒正しい寺だろうが世界遺産だろうが、やたらと電飾をつけたがる傾向がある。早くそのセンスの悪さに気づいてほしいものだ。

サカイトオルさんの『中国B級スポットおもしろ大全』を例に挙げるまでもなく、珍スポット好きが中国に足繁く通う理由も何となく理解できます。

珍スポットと言えば、広東省にある28メートルの超巨大な男根岩もヤバイです(チン違いか……いろいろスミマセン)。ご参考までに岐阜県中津川市のアレは8メートル、福岡県田川郡のアレは13メートル、宮崎県小林市のアレは17.5メートル。日本の有名な男根岩と比べても、大陸のアレはちょっとスケールがデカすぎません?

ちなみに、男根岩の近くには女陰岩もあり、見学中に急な雷雨に見舞われた中田さんは、雨に濡れたその岩を見て……以下、自粛します(重ね重ねスミマセン)。

 

堂々たるパクリ芸

中国のパクリ文化に目がない私は、某牛同チェーンの人気にあやかったオレンジ色の看板が目印の吉川家はもとより、マクドナルド(麦当劳)とケンタッキー(肯塔基)を大胆に合体させてしまったマクタッキー(麦塔基)の存在に抱腹絶倒。

ミッキーマウスドラえもんピカチュウにキティーちゃんまでもが仲良くお出迎えしてくれる石景山遊楽園にも劣らない夢のコラボが、知らぬ間にひっそりと実現していました。

また、孔子の故郷として知られる泰山では、観光名所の1つとなっている望人松(別名:迎客松)と記念撮影してくれる業者が、サンプルとしてブッシュ元大統領の写ったパネルをデカデカと展示。ブッシュも訪れたのかと思いきや、よく見ると合成だったらしいです。何でもありかよ!

今秋のコレクションで発表されたディオールのミドル丈スカートが、明時代の伝統服であるマミアンスカートに酷似していると一部で炎上し、国営メディアまでがディオールにコメントを求める事態へ発展したのは記憶に新しいところ。

で、そもそも大して似ていない(≒盗作と呼べるレベルではない)といった問題は抜きにしても、部外者の私からすれば〈もっと国内で摘発すべきコピー商品が山積しているでしょうに……〉と思わずにはいられません。中国おそるべし。

(本書に登場する)ツッコミどころ満載のエピソードが、これから中国旅行に行こうと考えている方、あるいはなんらかの形で、今後中国人と付き合う予定がある方の参考になれば幸いだ。

いや、特に参考になるとは思えないな……。まあ、中国という国がいかに凄いかだけでも伝われば、オレは満足なのである。

タクシー運転手が高速道路の出口からバックで侵入して決死の無銭走行に打って出たり、フツーにニセ札が流通していたり、泊まった宿の夜間トイレが壺だったり(男性はともかく、女性はどうやって用を足すの?)、驚愕のエピソードだらけ。

参考にはならなくても、中国という国がいかに凄いかだけは十分伝わりました。そして読了したいま、「短期滞在なら面白そうだけど、住みたくはないかな……」と、私も中田さんとそのまんま同じ感想を抱いています。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

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