FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

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吉田友和『旅はタイにはじまり、タイに終わる――東南アジアぐるっと5ヶ国』|読書旅vol.97

今回選んだのは吉田友和さんの『旅はタイにはじまり、タイに終わる――東南アジアぐるっと5ヶ国』(幻冬舎文庫/2014年)。前回の『タイからはじめるバックパッカー入門』を読了後に、ふと読み返したくなりました。

吉田さんの作品をブログで取り上げるのはこれが2回目。人生初の海外旅行が世界1周のネムーで、それを機に旅行作家へ転身されたという変わった経歴の持ち主です(※新婚旅行の様子を記した処女作『世界一周デート』は次回にて)。

 

バックパッカーごっこ?

カンボジアラオスミャンマー、マレーシアの4か国と国境を接する、まさに東南アジアのハブと呼ぶに相応しいタイ。

同国を起点とした自由旅行の方法論が書かれている『タイからはじめるバックパッカー入門』に対し、『旅はタイにはじまり、タイに終わる』は実践編とでも言った感じでしょうか。

人気作家の仲間入りをし、仕事や講演で国内外を飛び回っていた最中、吉田さんは自身の旅のスタイルをいま一度見直すことに。果たして行き着いたのがバックパッカーごっこ

際限なく時間があるわけではないし、ハイペースに移動をしつつ少しでも多くの街を目指したい欲張りな気持ちも捨てがたい。あまりきついのも正直体がついてこないし、好んで苦行に身を置くほどのストイックさはそもそも持ち合わせていない。

無闇矢鱈と節約はしないが、かといって効率ばかりを追求するのは御法度とする。あくまでも、大人なりにできる範囲でのスタイルでの見直しだ。

新婚当時のハードなバックパッカーには回帰しない、バックパッカーの楽しい部分だけを採り入れる――最高じゃないですか。

ラオス航空ンコクエアウェイズが運営するディスカバリー・エアパス(※現在は販売休止中)を利用し、香港、タイ、ラオス、ヴェトナム、カンボジア、そしてタイに戻ってくるこの旅。1か所あたりの滞在期間は2日前後と慌ただしい旅程です。

具体的なルートは、香港からサムイ島(空路)、サムイ島からチェンマイ(空路)、チェンマイからノンカイ経由でビエンチャン(陸路)、ビエンチャンからパクセ(空路)、パクセからホーチミン(空路)、ホーチミンからプノンペン(陸路)、プノンペンからバンコク(空路)といった具合。

フルサービス・キャリアを利用しながら要所で長距離バスを使って陸路での国境越えも挿み、バックパッカーの醍醐味をちゃっかり享受しています。

しかも、観光地までの移動手段や予算には大してこだわらず、アクセスしづらい場所へは迷わず現地ツアーに参加し、タクシーにもバンバン乗車。これぞ無理をしない大人のバックパッカーごっこ。潔いです。

 

旅の達人は心配性

妥協しまくりのバックパッカーごっこなる旅行スタイルに加え、吉田さんがかなりのビビリかつヘタレで、ずっこけ型の旅行者である点にも物凄く共感。

ビビリだの、ヘタレだの、ずっこけ型だの、散々な物言いだと思いましたか? すべてご本人が作中で書かれている表現ですので誤解なきよう。

まず吉田さんの心配性ぶりが尋常じゃありません。例えばホーチミン行きのフライトでボロボロの飛行機に搭乗した際、すぐさま座席のシートポケットに入っている安全のしおりで機体名を確認。

続いて、製造元をスマホで検索し、西安飛機公司の旅客機だとわかるや否や、もう気が気ではない様子です。西安飛機公司は吉田さんがこの旅で搭乗する少し前に墜落事故を起こしていたそう。

だとしても、乗ってしまったものは仕方ないし、何より航空機の事故率は0.0009%、ましてや同じ会社の飛行機が短期間でトラブルに遭う確率なんて……。

それなのに、“事前に知っていたらなら、絶対に(予約を)入れなかっただろう”と愚痴る往生際の悪さ。“無事に到着したときには涙が出そうになった”とも綴られています。

年間に何十回と飛行機に乗る方ですよ。「世界中を飛び回る旅行作家でもこんなもんなの?」と、妙に安心してしまう自分がいました。

実のところ、私もわりとビビリな質。あれこれ先回りして不安に駆られるも、結局、取り越し苦労で終わるケースが多々あります。

トホホなエピソードが満載の『旅はタイにはじまり、タイに終わる』を読んだ多くの方は、おそらく「超が付くほど旅慣れた人でもこうなら、自分もこれでいいんだ」みたいに自己肯定感がアップするはず。

加えて、石橋を叩きに叩いて渡ってきた吉田さんだからこそ、これまで旅先で大きなトラブルに見舞われなかったのだろうとも私は思いました。

 

東南アジア周遊がグッと身近に

最後に、バックパックを担いで外国を巡ってみたいと考えている方へ。前回の『タイからはじめるバックパッカー入門』は、出発前の準備や現地到着後の流れなどが項目別に記載され、自由旅行の敷居の低さに気付かされる内容となっています。

で、今回の『旅はタイにはじまり、タイに終わる』では、具体的な旅のケーススタディができ、東南アジア周遊がより身近に思えるに違いありません。

これを読めば、「いつか行きたいな~」と思っていた皆さんの旅が案外すぐにスタートするかも。勇気ワクワク感が得られる作品です。

※記事内の画像は私が撮影したものです。本著と直接的な関係はありません。

www.gentosha.co.jp

 

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