FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

現在は旅の記事をお休みし、旅関連の本を紹介する読書ブログに切り替えています。

さくら剛『海外旅行なんて二度と行くかボケ!!』|読書旅vol.38

Travelの語源はTroubleだと、昔何かで読みました。〈それは間違いだ〉とする説もありますし、〈いやいや、どちらも同じ語源(ラテン語で3本の杭を表す拷問具のTrepalium)だよ〉との説もあります。

正解は確認していません。だけど、私はTravelの語源がTrouble説、もしくは同語源説を信じたいです。だって、何だか粋じゃないですか。

今も昔も旅にトラブルはつきもの――ずいぶんと交通手段が発達し、選べないほど情報を得られたとしても、程度の差こそあれ、それは変わりません。

そんなこんなで今回ご紹介するのは、自称・8流作家(※実際は控えめに言っても売れっ子作家)であるさくら剛さんの海外旅行トラブル事例をまとめた『海外旅行なんて二度と行くかボケ!!』(2019年/産業編集センター)です。

 

元引きこもりによる旅行の手引書

『海外旅行なんて二度と行くかボケ!!』などという剣呑な題名にドキッとされた皆さん、どうかご安心ください。

2006年の処女作『インドなんて二度と行くかボケ!!…でもまた行きたいかも』に始まった暴言タイトルは、さくらさんお馴染みのやり口。海外旅行に対する著者なりの愛情表現だと思っておきましょう。

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この表題センスからも窺える通り、さくらさんは少々あまのじゃくで、結構な変わり者です(……でも私は好きです)。アウトドア派のリア充民には程遠く、お笑い芸人を目指して上京するも、すぐに挫折して半引きこもり生活へ。バイトや派遣の仕事で食い繋ぎつつ、ゲーマードルオタとして日々精進されていきます。

そうした最中、彼女に振られて約1か月間のアメリカ旅を決行。時は9.11直後、航空券の価格が暴落していた時期です。しかも自身初の海外ひとり旅だっていうから、自暴自棄状態で渡米した様子は想像に難くありません。

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そのアメリカ旅行の最終地、ラスヴェガスで襲われた腹痛話からスタートする本書。インパクト大な帯文「旅とは1割のキラキラと9割の苦痛!!」に続き、エピローグにはこう書かれています。

“この本では、「旅先で旅行者が出くわしがちな苦労やトラブル」について、私自身が経験した事例と対処法を各章で紹介していきたいと思います。もしみなさんがトラブルの具体例を予め知識として持っていれば、旅立ちに際して対策を練ることもできるし、実際にそれに出くわした時にも冷静でいられるかもしれません”

とはいうものの、有益な情報は1割、残りの9割はしょーもないです。例えば、ラスヴェガスでお腹の治療に要した金額は2万ドル保険に入っていたおかげでその費用を全額負担してもらえた。バックパッカーの中には無保険だったために病院へ行けずに旅先で亡くなられる方もいるので、みんな保険に入ろう――これは前者の1割に該当する部分です。

片や、保険会社に連絡する前に、まずは末梢神経から大脳皮質に伝わる信号にすぎない痛みを興奮で吹き飛ばそうと、あくまでも鎮痛用の医療目的エロ本を購入。ところが、効果はありませんでした――これは後者の9割に該当する部分です。

よって、この本を読んでも、あまりケーススタディにはなりません。章が進むごとにコンセプトから脱線し、〈きっと何かの伏線に違いない〉と思わせておいて、一向に回収される気配がないまま、ゴールまで突き進んでいきます。

 

Youはなぜバックパッカーに?

……と、ここまで書いて、褒めているんだか、貶しているんだか、わからないですよね。私的にはめちゃくちゃ褒めているつもりです。

1人の大人として〈さくらさん、そんなこと言っちゃダメですよ〉と突っ込むべきかもしれませんが、〈実は自分も似たようなフシがあります〉系の共感エピソードが本編のそこここに。

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もっとも頷いてしまったのは、現地で知り合った人のお宅訪問。それのどこが旅の苦労やトラブルなのかって? そうなんですよ、とてもありがたい話なんです。ローカルとの交流は旅冥利に尽きます。先方も厚意で誘ってくれているわけですし、大抵の場合は喜んでお邪魔させていただきます。

が、しかし、ぶっちゃけ面倒臭いな~と感じる時もありませんか? また、行ったはいいけど場が持たなかったり、目の前に出された食べ物や飲み物に内心ビクビクしたり、帰るタイミングを失って気まずくなったり。

そりゃ、言葉文化もまるで違う人と交流するのですから、いろいろな思いが交錯して当然だと思います。

ただ、それを厄介事としてハッキリ明言してしまうのが凄い。良識ある社会人なら口に出しませんって(もちろん褒めています)。

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さらに、さくらさんはもともと睡眠導入剤を服用しないと寝つけない体質で、若干の潔癖傾向にあり、怖がりで、なおかつ、ご本人曰く「他の個体とコミュニケーションを取る能力が著しく低いという生物的欠陥」をお持ちの方。

人1倍、いや、100倍くらい神経を尖らせて世界各地を巡っている姿に、思わず涙がこぼれました(笑いすぎて)。

発展途上国格安ゲストハウスあるあるとも言うべき、共同トイレの立て付けの悪さだとか、水の流れが悪すぎて前の人の〈落とし物〉が残ったままだったとかを、恨み節満載で長々と説明するネチっこさよ。

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〈なぜバックパッカーになったんですか?〉的な疑問と共に、〈それでも旅を続けるこの人は生粋の変態なのだろう〉なんて確信めいた思いが込み上げてきました。

とはいえ、旅先のトラブルは不可避だったとしても大事に至らなかったのは、さくらさんが極度のビビリ症で、他人をなかなか信じない性格の賜物なのじゃないかとも感じます。

“「石橋を叩いて渡る」どころか、石橋を鹿島建設にコンクリート重点工法と鋼板巻立て工法で補強してもらい、それでもやっぱりびびって渡るのをやめるくらいの究極の警戒をし続ける、それが達人の旅スタイルというものだ”

あながち間違っているとは言い切れません。私も肝に銘じておきたいと思います。

 

とにもかくにも、さくらさんの文章はおもしろいです(※好みは物凄く分かれます)。隙あらばくだらないダジャレを放り込んでくるし、比喩表現はだいたい不謹慎か、ゲーム音痴な私には何のことやらサッパリわからないネタだらけなのに、不思議とページをめくる手が止まらなくなります。

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ついでに、屁理屈ばかり言って、嫌味っぽくて、悪態しかついていないかと思いきや、ごくたま~に知的な一面を覗かせ、真理をズバッと突く言葉がポロッと出てきちゃうあたりもたまりません。

で、現時点での最新刊にあたる本書『海外旅行なんて二度と行くかボケ!!』は、これまで地域別にまとめられてきたさくらさんの旅エッセイを、かなり駆け足でギュッと凝縮したダイジェスト的な趣があり、初めて読む人にはピッタリかと思います。興味のある方はぜひ(※万人にはオススメしません)。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

www.shc.co.jp

 

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