今回ピックアップしたのは西沢泰生さんの『心がワクワクして元気が出る! 37の旅の物語』(2019年/産業編集センター)。帯文には〈旅でリフレッシュしたいあなたに〉とあります。
折しもいまはお盆期間。連休関係なく働かれている方からしたら〈ケンカ売ってんの?〉みたいな気分になるかもしれませんが、かく言う私も絶賛勤労中です。
しかも、現在抱えている仕事はビックリするほど儲けが少なく、フリーランスなので休日手当てもつかず、マジでやってられません……と軽く愚痴ったところでそろそろ始めましょう。
『わたしの旅ブックス』とは?
『心がワクワクして元気が出る! 37の旅の物語』は、産業編集センターより出ている人気シリーズ『わたしの旅ブックス』の第16弾。
出版社のホームページには〈各分野で活躍する著者が「旅」をテーマに綴る読み物シリーズ。人生を豊かに彩る旅の魅力と醍醐味を一人でも多くの人に伝える〉と書かれています(※詳しくはこちら)。
同シリーズを彩ってきた書き手には、椎名誠さん、蔵前仁一さん、丸山ゴンザレスさん、石田ゆうすけさんといった名だたる旅行作家のほか、歴史家の河合敦さんやビートルズ研究家の藤本国彦さん、東欧雑貨ブームを火点けたチャルカ店主の久保よしみさんら、ちょっぴり意外な名前もチラホラ。
ちなみに、当ブログで過去に投稿しているさくら剛さんの『海外旅行なんて二度と行くかボケ!!』も、『わたしの旅ブックス』の中の一冊です(※詳しくはこちら)。
さて、大変失礼ながら、私は本書を手に取るまで西沢泰生さんのことを存じ上げませんでした。簡単なプロフィールをご紹介すると、出版プロデューサー兼ライターの西沢さんは1962年生まれ。
子どもの頃に見た『アメリカ横断ウルトラクイズ』でクイズに目覚め、大学時代には『アタック25』や『クイズタイムショック』で優勝を果たします。
肝心の『ウルトラクイズ』には6回目の挑戦で念願の予選突破。それが新卒1年目の年でした。本戦への参加条件は1か月間スケジュールを空けられること。
入社から半年も満たない新人が会社に1か月の休暇を申請するなんて、かなり勇気のいる決断だったはずです。
しかし、夢を叶えるべく、有休を使い切って(+欠勤もして)出場した第10回大会の『ウルトラクイズ』。西沢さんは決勝の舞台であるニューヨークまで辿り着き、準優勝という輝かしい記録を残されています。
なお、『ウルトラクイズ』出演後は、しっかり会社に戻って社内報の編集などを行い、40代半ばで脱サラ。これまでに発表された著書には、書店で見覚えのある雑学書が複数並んでいました。
西沢さん的地球の歩き方
このように風変わりな経歴を持つ西沢さんが、旅をテーマに執筆された本書。自身初の海外旅行にして、『アタック25』の優勝賞品として獲得したパリ旅行のエピソードから、〈らしさ〉が炸裂しています。
ここでカミングアウトすると、当時は、クイズをやっていたので、せっかくパリ観光をしているのに、名所の見方が独特でした。
ルーブル美術館に入ったのも、『モナ・リザ』や『ミロのヴィーナス』など、クイズに出そうな有名な美術品を生で見るためだったのですから動機が不純ですよね。
絵や彫刻を鑑賞するというより、「『モナ・リザ』の絵の隣や、向かい側にはどんな絵が展示されているのか?」とか、「『ミロのヴィーナス』の背中はどうなっているのか?」など、クイズに……なかでも○×クイズで出題されそうな、へんなところをチェックしていました。
凄い思考回路! 何かを極めた人ってやっぱり変ですね(良い意味です)。個人ブログも含め、他所様の書いた紀行文を読むのが大好きで、その人その人の旅の様子を覗き見しては、ひとりニヤニヤしている私にとって、このくだりはツボでした。本当に旅行のスタイルは十人十色です(にしても、西沢さんは特異!)。
心が満たされるトリヴィアの数々
この本には西沢さんの実体験のみならず、有名人絡みの旅に関するよもやま話もたっぷり詰め込まれています(むしろメインはそっち)。扉に書かれた著名人の名言も胸アツ。例えばこんな感じです。
- どんなに洗練された大人のなかにも、外に出たくてしょうがない小さな子どもがいる(ウォルト・ディズニー)
- 旅はどんなに私に生々としたもの、新しいもの、自由なもの、まことなものを与えたであろうか。旅に出さえすると、私はいつも本当の私となった(田山花袋)
- 人が旅をするのは、到着するためではありません。それは旅が楽しいからなのです(ゲーテ)
- 旅の過程にこそ価値がある(スティーブ・ジョブズ)
- 危険を冒して前へ進もうとしない人、未知の世界を旅しようとしない人には、人生は、ごくわずかな景色しか見せてくれないんだよ(シドニー・ポワチエ)
角野卓造さんが大のひとり旅好きだったことも、さだまさしさんが旅に関する曲を書かない理由について「永六輔さん作詞の“遠くへ行きたい”以上の歌は作れないから」と公言していることも、伊能忠敬が日本地図を作る旅に出た真の目的は地球の大きさの測定だったことも、全然知りませんでした。
読書中はとにかく〈へ~〉の連続。ちょっぴり心を満たしてくれるトリヴィアの数々に、ついつい愚痴っぽくなりがちなやさぐれモードの私も、気付けばワクワクして元気が出てきました。
そんなこんなで、お盆休みを返上してがんばられている方も、休みはあっても燃料費の高騰やコロナ自粛で満足に遠出できないと嘆いている方も、台風で予定が流れてしまった方も、束の間の現実逃避とばかりに『心がワクワクして元気が出る! 37の旅の物語』を手に取ってみてはいかがでしょうか。
※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。
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