FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

現在は旅の記事をお休みし、旅関連の本を紹介する読書ブログに切り替えています。

東海林さだお『ニッポン清貧旅行』|読書旅vol.43

ノマドワーカー高城剛さん、駐在員の坂井禧夫さん、起業家の岡本まいさんと、直近3回の読書旅で3者3様の海外生活を覗き見し、移住への夢が膨らみに膨らんだタイミングで、ふと我に返りました。

いまはコロナ禍。海外移住はおろか、海外旅行さえままなりません。もちろん、その気になればいくらでも海くらい渡れますが、少なくとも私はしばらく日本に留まる予定です。

そこで、もうちょっと身の丈に合った本を読もうと、今回は東海林さだおさんの『ニッポン清貧旅行』(1993年/文春文庫)を手に取ってみました。

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清貧、すなわち、無理に富を求めようとはせず、行いが清らかで貧しい生活に安んじていること。美しい日本語です。

元上司の奥様の言葉〈貧乏は良くても貧乏臭いのは嫌〉に感銘を受け、折に触れて頭の中で反芻している私。かねてより〈清貧〉の2文字には、その名言と同様の凛とした強さを感じていました。

 

東海林さだおさんとは

御歳84の東海林さだおさんは、言わずもがな、大ヴェテランの漫画家/随筆家です。連載開始から50年を超える『タンマ君』や『サラリーマン専科』を筆頭に、現在もバリバリ第一線で活躍中。

コロナウイルスの流行によって苦汁を嘗める飲食店にエールを送らんと、外食にまつわるエッセイ『大衆食堂に行こう』を出版されたのも記憶に新しいでしょうか。

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本稿の主役である『ニッポン清貧旅行』は、月刊誌『オール讀物』で1980年から続く長寿連載『男の分別学』を編纂したものです。この『男の分別学』からは20冊以上の書籍が誕生していて、数えてみると『清貧旅行』はシリーズ7作目でした。

タイトルに〈旅行〉と付いているものの、旅に特化した本ではありません。都内を走るオープンカーの不自然さを揶揄する話、勇気を振り絞って高級寿司店に入るも慇懃な店主に玉砕された話、求人広告の名コピーをあれこれ分析する話、わけありげな人々が集う平日昼間のデパート屋上をひたすら観察するだけの話など、お題はさまざま。その中に4つの旅ネタが挿入されています。

 

現代貧乏旅行のススメ

この作品が書かれたのは、バブルが終焉を迎えた時期。とはいえ、それでもまだ日本がいまよりはイケイケだった時代です。本編には「いま、貧乏が贅沢だ。(中略)体験しようと思ってもなかなかできるものではない」とあります。そんななか、著者はある旅のプランを発案。

“貧乏旅行をすればいい。貧乏旅行をするのは簡単だ。うんと安い旅館に泊まればいい。うんと安い旅館の、一番安い宿費のところに泊まれば、宿の人や他の客にさげすまれていろいろつらいことがあるにちがいない。それが貧乏の味だ”

果たして、埼玉某所の小さな温泉地にたった1軒だけ佇むボロ宿を探し当てた東海林さんと担当編集者さん。観光案内所で「あそこはもうやっていないんじゃないですかね」と言われ、期待は募るばかりです。

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貧乏旅行の観点から見た宿の不合格項目は、部屋が広い、浴衣に糊が利いている、寝具が清潔、湯量が多い、食事が美味しい。合格項目は、歩くたびにミシミシ音を立てて揺れる、約3畳の風呂場には窓がなく、浴槽には蓋がしてある、布団が薄くて硬い……などなど。総合評価は以下の通りでした。

“貧乏を満喫した、というわけにはいかながったが、ところどころにキラリと光る貧乏があって、その貧乏がとても懐かしい”

ちなみに、この旅のキーワードは〈みじめ〉。合言葉に〈ひがむ〉〈ねたむ〉〈そねむ〉を掲げるも、物質的なみじめさは感じなかった一方で、〈ねたみ〉〈そねみ〉のほうは居合わせた若いカップにたっぷり味わわせてもらったそうです。何のこっちゃ?

 

庶民派グルメを食べ尽せ

すみません。読書感想文というか、単なるネタバレ文になっていますね。どうかしばしお付き合いを。本書でもっともページ数が割かれているのは、東海林さんにとって初となる韓国旅行のエピソードです。

ここで〈タイトルにはニッポンって付いているけど……〉と立ち止まらぬようご注意ください。東海林さんの文章を前に細かい点を気にしていたのでは、埒が明かなくなります。

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さて、男だらけで臨んだ初めての韓国・ソウル。市内観光は皆無、宮廷料理には目もくれず、妓生ハウスにも立ち寄りません。金浦空港から可楽洞市場に直行したあたりからも察知できる通り、御一行はひたすら庶民派グルメを食べ尽します。

そもそも東海林さんが韓国へ行こうと思い立ったのは、知り合いに「本場の焼肉キムチはこんなもんじゃないよ」としつこく言われたから。

日本の焼肉だって十分に美味しいのに、訪韓経験がないために反論できない自分が悔しくて……みたいな具合です。くだらないって? いやいや、最高に素敵な旅の目的じゃないですか。

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何せ、『冬ソナ』を柱とした韓流ブームより10年も前ですからね。いまではすっかりお馴染みとなった韓国料理にまつわる諸々――パンチャン(付き出し)文化も、焼いた肉をハサミで切るあの光景も、鍋料理のシメを飾るポックンパ(おじやと炒飯の中間っぽいやつです)も、すべて驚きと共に事細かく紹介されている点が却って新鮮でした。

ハイライトは、何と言ってもポシンタン動物愛護団体から何かと槍玉に挙げられる、かの有名な犬鍋です。ご自宅でワンちゃんを飼われていた東海林さんにとって、かなり勇気のいるチャレンジだったことは想像に難くありません。しかし、ポシンタン屋で腹を括った東海林さんは……。

“われわれがここでとり得る行動は二つしかない。①食べる。②食べない。②の食べない場合は、そのまま誰か他の人に食べられるか、捨てられるしかない。この犬は、いまから助けることはできない。(中略)やはりわれわれのとるべき行動は、①が正しいのではないだろうか”

それが正しい選択だと思います。しかもめちゃくちゃ美味しかったらしく、なおさら良かったです。店に入って注文した以上は、ありがたく命を頂戴するのが礼儀。

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犬食は韓国に古くからある伝統文化の1つです。別にどこかからペットをさらってきたわけじゃなく、農場で飼育したものが市場などを経由し、食堂に出回っています。そのへんは、とまったく同じ。

私自身はおそらく今後も犬肉を試せないと思います(やっぱりつらい……)。だけど、日常的に肉も魚もガツガツ食べている身としては、この食文化を否定する理由などとても挙げられません。

 

……って、話が変な方向に進んでしまいました。重ね重ねすみません。強引に記事の締めに入ると、〈貧乏を追求してみじめさを味わう旅をしよう〉然り、〈日本と韓国のキムチの違いとは何ぞや?〉然り、しょうもないテーマを自分なりに設け、トコトンそれをやりきる旅っていいな~と感じました。

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遠方へ行くのが躊躇われる昨今においても、コンセプト次第ではちょっとしたお出掛けだって物凄く非日常的なワクワク感を得られるんじゃないかと。ついでに、テーマはくだらないほど盛り上がる気がします。

例えば、野草湧き水だけで食い繋ぐ3泊4日の究極キャンプとか。いや、撤回。自分で書いたくせして、それはちょっと実行したくないですね。今晩じっくり考えてみます。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

books.bunshun.jp

 

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