FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

旅のこととか、旅に関する本のこととか。

井形慶子『ロンドン生活はじめ! 50歳からの家づくりと仕事』|読書旅vol.75

今月上旬にプレミアリーグの新シーズンが開幕しました。例年までは注目カードをチェックする程度で、口が裂けても熱心なファンとは言えない私も、地元の英雄である三笘薫選手がブライトンに入団した以上、今シーズンからはちゃんと毎試合の動向を追っていこうと思っています(それにしても前節のデビュー戦はお見事でした。存在感ありすぎ!!)。

そんな超個人的イングランド・ブームも相俟って、同国に関する本を取り上げようと、自室の棚を眺めてみたものの、見つかったのは前職時代に読んだ音楽関連の書籍ばかり。

パンクも、レイヴやUKベース・カルチャーも、何となく気乗りせず、近所のブックオフに駆け込んで井形慶子さんの『ロンドン生活はじめ! 50歳からの家づくりと仕事』(2011年/集英社文庫)をゲットしてきました。

 

50歳で夢を叶えた女性

1988年創刊の雑誌『英国生活ミスター・パートナー』で編集長を務め、エッセイも多数執筆されている井形さんは、20代から英国式のオールドスタイルな住宅に魅せられていたとか。

その後、100回を超える渡英経験を経て、ロンドンのハムステッドにフラットを購入。リーマンショックの煽りでポンドが急落したのも、井形さんを後押ししてくれた模様です。それが人生100年時代の折り返し地点とも言える御年50の時でした。

……にしても、ポンドが急落したとはいえ、マンションを売却して老後資金も切り崩し、手元にほとんど日本円が残らない状態になったというから、物凄い決断力

大きなリスクを負ってでも、子育てがひと段落したタイミングで長年抱いてきた夢をガッチリ叶えるなんて、カッコ良すぎます。

こういうヴァイタリティーの塊みたいな方の作品に触れて、私も少しばかりその恩恵にあずかろうとするのは、虫が良すぎますかね?

ちなみに、還暦を超えた現在も、井形さんは東京とロンドンを行き来しながら、精力的に執筆&編集活動を続けられています。

 

ロンドンの住宅事情

『ロンドン生活はじめ!』は、緑豊かな高級住宅地のハムステッドに古いフラットを購入し、それを全面リフォーム、憧れの2拠点生活を叶えるまでの日々が綴られた一冊です。

とりわけ内装へのこだわりがハンパじゃなく、小ぶりのシャンデリアや毛足の長い絨毯など、ヴィクトリアン・テイスト溢れる品々を求めてロンドン中を奔走する姿は、もう執念としか言いようがありません。

正直、インテリア全般にさほど関心がなく、ローラ・アシュレイっぽい世界観とも縁遠い私は、井形さんがあまりにも自分と真逆すぎて、むしろ興味津々。

加えて、ここ1年ほど副業で住宅設備会社の資料作成をお手伝いしてきたおかげで、同地のリフォーム事情にも〈なるほどね~〉となりました。

著者曰く、英国人のリフォームしたい設備ベスト4は、1位がバスルーム、2位がセントラルヒーティング(全館空調)、3位が2重窓、4位がタンク。4位のタンクは〈セントラルヒーティング作動中にシャワーを使っても水が止まらないようにしたい〉みたいな具合だそうです。

対する日本は、マンションのリフォームに限定した場合、排水管耐震浴室キッチンが上位に挙がると書かれています。

セントラルヒーティングについては別途コラムでも解説。〈イギリスの暖房機器といえばセントラルヒーティング〉と前置きしたうえで、直接何かを燃焼するわけではないため空気を汚さず、ヤケドの心配もなく、乾燥知らずで喚起不要、各部屋の温度差もほぼナシ、しかも省エネ……といったメリットを挙げている井形さん。

セントラルヒーティングは徐々に日本でも普及してきたと聞きますが、イギリスの住宅では1960年代から一般的で、なおかつ、リフォームしたい設備の第3位に2重窓がランクインするあたりも、断熱エコに対する意識の高さが窺えます。

もちろん、この結果にはかの地の厳冬が大いに影響しつつも、何はともあれ日本が断熱住宅の後進国と言われ、諸外国から〈全然エコじゃない!〉と指摘され続けてきた理由が、本書を通じて少し理解できました。

国民の大半が築100年以上の中古物件に住み、ピカピカの新築よりも伝統的なタウンハウスを好むという話も素敵。イギリスに限らずヨーロッパ全体にわりと共通しているこうした考え方があってこそ、地域ごとの古い街並みもしっかり守られているのでしょう。

このへんのトピックは海外移住や旅に関係なく、引っ越しリフォームを考えている方が読むと、私なんかよりも格段にいろいろ吸収できるかと思います。

 

超多民族社会を生き抜くコツ

住宅の話はもとより、私がもっとも惹かれたのは、多民族社会な側面に触れている箇所です。ロンドンの白人人口はこの10年間で50%台後半から60%台前半の間を緩やかに推移(※白人人口の中にはポーランド系移民も含まれます)。

アングロサクソンの国というイメージも今は昔。ロンドンっ子の半分以上が移民その子孫です(※拙い英語力で無理矢理イギリス国家統計局のデータを読みました。間違っていたらごめんなさい)。

井形さんがリフォームを依頼した職人のパラブさんもインド系移民の2世。建築業に携わる父のもとで幼い頃より現場仕事を見て育ち、25歳で起業したこの男性が、会社を軌道に乗せるまでの苦労や、インド系への差別問題を語っていくパートに、グッと心を掴まれました。

井形さんに欠陥品を売りつけてきた業者に対して、パラブさんの奥様(ラニさん)が物凄い剣幕で詰め寄った場面と、それを受けて著者が感じた以下のくだりから、今後ますます本格的に移民社会へと突入していくだろう日本に住む私たちは、学ぶべきものがありそうです。

ロンドンという多民族社会では、違う民族が共存していくために、お互いに生活していく上で自分を守っていかなくてはいけません。ラニの主張する迫力を間近で見た私は、このような社会では自分の権利を守る事も命がけなのだと知りました。

旅行者としてこの国を見ていたときとは違う、イギリス社会の側面を突きつけられて、自分の権利を守るとともに他者の権利も尊重する、イギリスでよくみられるqueue(キュー)の光景が浮かびました。イギリス人は街のいたるところで並んでいます。

少し前のことですが、一つしかないカフェのトイレで並んでいたとき、「僕は時間がかかりますが、先に使いますか?」と、前に並んでいた若い男性に尋ねられ、フレキシブルなマナーに驚いたことがあります。こちらが女性だから気遣ってくれたのか定かではありませんが、それが若者であった事、まして男性であった事に驚いたのです。

自己を守りつつ他者をも尊重する、このような考えが、骨太の生活力に繋がるのだと思います。

 

三笘も冨安もがんばれ!

欧州4大リーグのうち、EU加盟国を除外した外国人枠が3名までと決められているラ・リーガセリアAに対し、プレミアリーグブンデスリーガ制限なし。

このような点からもイングランド(とドイツ)の柔軟で開けた姿勢が見て取れますし、それゆえに、よりアサーティヴな対応が求めらことは想像に難くありません。

……と、最後の最後で強引かつ急角度でサッカーの話題に戻してみました。同じ島国なのにまったく異なる日英。サッカー自体のレヴェルの差だけじゃなく、人との距離感などコミュニケーション面でも戸惑うシーンはたくさんあるでしょう。

でも、推しの三笘選手も、一足先に昨シーズン目覚ましい活躍を見せてくれた冨安選手も、本気でめちゃくちゃ期待しています。〈日本人選手にとってプレミアは鬼門である〉的な通説をどうか打ち破ってください。

てか、どんなオチよ? いつも以上に文の流れが意味不明になってしまい、反省しています。〈三笘も冨安もがんばれ!〉じゃなく、〈まずはお前ががんばれ〉って感じですかね。次回はもうちょっとがんばります。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

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