FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

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吉田友和・松岡絵里『世界一周デート 魅惑のヨーロッパ・北中南米編』|読書旅vol.98

98回目の読書旅は前回に引き続き吉田友和さんの作品。奥様の松岡絵里さんとの共著となるデビュー作『世界一周デート 魅惑のヨーロッパ・北中南米』(幻冬舎文庫)をピックアップしました。

 

『世界一周デート』とは?

『世界一周デート』とは、結婚を機に会社を辞めた2人による1年8か月の壮大なネムーン記録。道中の様子をリアルタイムでウェブにアップし続け、2005年、それを加筆修正してTOKIMEKIパブリッシングより単行本化。

2013年には『怒濤のアジア・アフリカ編』、翌2014年には『魅惑のヨーロッパ・北中南米編』と前後編に分けて幻冬舎から文庫化されています。

当ブログで紹介してきた書籍の半分以上がアジアに関するものだったため、何となく今回は『ヨーロッパ・北中南米編』を選んでみましたが、特に深い意味はありません(※仮に前編をすっ飛ばしてもすんなり入れます)。

本文はご夫婦がリレー形式で執筆を担当。文庫本には各項目の終わりに10年後のコメントが追加されているので、個人的には幻冬舎版のほうがオススメです。

ちなみに、吉田さんにとってハネムーンが初めての海外旅行。初海外が脱サラして世界一周だなんて信じられます? 無謀とも思えるチャレンジですっかり海外旅行の虜になった吉田さんは、ほどなくして旅行作家の道を歩きはじめるのでした。

 

各地の文化や人々とのふれあい

さて、『ヨーロッパ・北中南米編』は、世界3大客引きがウザい国と言われるエジプトでスタート。商魂逞しいエジプト人のオニ絡みに読者の私もゲンナリしつつ、そのままトルコに上陸してヨーロッパを周遊。

以降、イギリスから大西洋を渡り、アメリをキャンピングカーで横断した後に中南米入りして日本へ戻るという旅程です。

もちろん、カッパドキア、青の洞窟、グランドキャニオン、ウユニ湖、マチュピチュを筆頭に、名だたる観光スポットのレポートは大きな観どころ。

世界最大規模を誇るテクノの祭典Love Parade(ラヴ・パレード)や、ソカやカリプソが鳴り響くNotting Hill Carnival(ノッティングヒルカーニヴァル)、ニューオーリンズのジャズ・クラブにキューバサルサバー、旅のフィナーレを飾るサルバドールカーニヴァルなど、各地の音楽カルチャー追体験できます(※絵里さんは元音楽雑誌の編集者)。

また、ペルーの長距離バスでPCやゲーム機を置き引きされたり、イパネマ・ビーチで白昼堂々ひったくりに遭ったり、夫婦別行動の日に吉田さんがポルノ映画館に行くもそこはハッテンバでオジサンに誘われたり、トラブル系のくだりもおもしろいです(読んでいるぶんにはね)。

しかし、再読して「ここのエピソードは初見の時も印象的だったわ」と思ったのは、どれも現地の人との何気ないやりとり

「自分ももっと自由に生きたい」と願いながら親の営むゲストハウスで働くトルコ人女性や、フィレンツェまで出稼ぎにきたセネガル人男性をはじめ、境遇の異なる人々と心通わせるシーンは、「これぞ旅の醍醐味!」といった感じがしました。

ボリビアで激しい歯痛に見舞われ、歯科通いする羽目になった吉田さんが、治療最終日にイスラエル人の医師に言われた「See you somewhere in the world」って別れの挨拶も粋じゃないですか。

 

ソロ旅より2人旅

本書で私がもっとも好きなのは、吉田さんが免許の更新で一時帰国した際、絵里さんが寂しさを覚える場面です。新婚旅行が初海外だった吉田さんに対し、絵里さんは根っからの旅好き。しかも、もともとはソロ旅派だったとか。

僕たち自身もつい忘れがちになるが、この旅はあくまでも新婚旅行だった。そうでないなら、「世界一周デート」などという、赤面したくなるタイトルは付けない。

よく訊かれるのだが、一人旅と二人旅は何が違うのか――。

たとえば、宿代が安く済む。食事はシェアできるので種類が食べられる。移動中トイレへ行くときに荷物を見ていてもらえる、などなど。一人よりも二人の方が都合のいいことは多い。

けれど肝心なのは、そういった目に見える利点ではない。

世界を旅する中で出合う数々の絶景や、現地の人たちとの心温まる触れ合い。ときにはトラブルに遭遇し、意気消沈するシーンも含め、旅はかけがえのない思い出で彩られる。それらを共有できる仲間がいるかいなかこそが、最大の違うだと思うのだ。

我が家ではいまも、夫婦でよく旅をしている。二人旅が標準なので、たまに一人旅をすると寂しい気持ちになることもある。

上記は吉田さんのあとがきに綴られた文言。素敵すぎます。私とツレはアツアツとは程遠い間柄。「何だ、コイツ……」と日々呆れています(※たぶん呆れているのは向こうも同じ?)。だけど、旅行するのはこの人と一緒がベスト。

母の世話で私が海外へ行けない間も、ツレは友達とちょくちょく訪タイしています。それ自体は一向に構いません。ツレの口からタイの近況を聞くたび、これまでに現地で繋がった縁が切れてないことを実感し、「この調子でじゃんじゃん遊んできて!」と思っています。

でも、どこかで「私と一緒のほうが絶対に楽しいはず!」みたいな感情を抱いてしまうのも事実。今回、『世界一周デート』を読み返し、私たちも吉田さん夫婦に倣って、どんなに険悪なムードになる日があろうとも、ずっと2人旅を続けていこうと心に誓った次第です。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

www.gentosha.co.jp

 

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