FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

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高杉裕二『中国で会社をつくったら、ひどい目に遭いました』|読書旅vol.106

今回取り上げる書籍は高杉裕二さんの『中国で会社をつくったら、ひどい目に遭いました』(2014年/彩図社)。前回の『中国なんて二度と行くかボケ! ...でもまた行きたいかも。』に続いて剣呑なタイトルです。

家庭の事情で旅行できない現在は、旅に関する本の感想文をアップし、ブログを続行している私。表題通り本著は中国で会社を興した話がまとめられたもので、旅の本ではありません。よって、コンセプトからはズレますが、どうか大目に見てやってください。

 

軟禁、暴行、拘置所送り

高杉さんは大学で中国語を学び、卒業後は大手製菓会社に入社。150名いた同期のうち中国語を話せる唯一の人材として、すぐさま中国貿易部へ配属されます。

勤め人時代は客先の社長や専務を現地でアテンド。商談はほどほどに、酒の席で女の子を用意するなど、なかなかしんどいお仕事を任されていたようです。

で、いろいろありつつも、中国にどっしり腰を据えて働く夢を諦められず、思い切って退社。人当たりの良い中国人に誘われ、まずは共同経営というかたちで起業するに至ります。

本書は全4部構成。1章は起業前のエピソード、2章は起業するも上手くいかずに単独で会社を設立した際の話、3章は著者の中国人論、4章は会社経営の顛末といった流れです。

『中国で会社をつくったら、ひどい目に遭いました』なる表題は誇張でも何でもなく、えげつないネタのオンパレード。従業員数名に軟禁されたり、共同経営者の差し金で暴行を受けたり、商売敵と警察にはめられて拘置所送りになったり……。

賄賂文化が根深く残り、過剰なマージンを搾取され、謀略報復も当たり前。これが真っ当なビジネス上で起きた実話なのか? さながらヤクザ映画の様相です。

 

それでも憎めない中国

以下、本文の一部抜粋させていただきました。本編は大方こんな感じ。中国で起業したい、もしくは中国に進出したいと考えている方が読んだら、一気に自信を失くしてしまいそうです。

・思うに中国の社会は、密告、裏切り、反逆という言葉が似合うもので、信頼、信用、責任という言葉はまったくふさわしくない。

・中国人は嘘でもよく泣く。泣いて「給料を上げてくれ!」とせがむのである。時には「母が病気でどうしても手術代がかかる」と平気で嘘をつく。また、知り合いの医師に頼んで診断書を書いてもらい、月に一度の有給病欠を使うようなこともする。中国人の従業員を日本人と同じように扱ってはいけない。まずは信じないことである。

・「社長は中国商売が分っていない。中国ではサンプルは必ずいいものを作るんです。実際は違っても問題ありません(※高杉さんの部下の言葉)」。

しかし、ただただ最後までボロクソ言っているわけじゃありません。中国ビジネスにしっかり順応し(?)、その筋の人を雇ってライヴァルに制裁を加える終盤を経て、ラストにはさんざんなハプニングに見舞われてもなお「中国を憎めない」と締め括っています。

 

異なるバックグラウンド


他の誰かに「中国人が嫌い」と言われると無性に腹が立つと綴る高杉さん。「中国人は好きか?」との問いに対しては迷わず「人によります」と答えるんですって。

私は中国人を決して悪いとは言わない。ある程度騙していかないと生きていけない人があまりにも多いのだ。また、学校や家庭での教育が日本とまったく異なることも忘れてはいけない。

バックグラウンドの異なる相手に向かって、日本の価値基準をあてはめ、中国人=マナーが悪いとか、一方的にマイナスなイメージを抱くのはよろしくないな~と気付かされました。

例えば三国志。日本では義理人情に厚い劉備関羽、権力に固執しない諸葛孔明あたりが人気なのに対し、中国では冷徹非情な曹操を推す人が多いらしいです。信じられますか? 曹操って悪役ポジションで描かれますよね?

この点1つを取っても、日本と中国では理想とするリーダー像が大きく異なり、それこそ日本の武士の情け的な考え方はおそらく美徳とされず、そりゃ、ビジネスのやり方も、普段の暮らし方や考え方も、全然違って然るべし。

ちなみに、高杉さんは「中国のビジネスパーソンはてんでダメで、日本のビジネスパーソンは優秀」みたいな表現を一切していません。むしろ中国でよく見かける横柄な態度の日本人駐在員をこき下ろす始末(※確かに読んでいる私も「コイツら最低だな」とムカついきました)。

結局は「人によります」ってことなのでしょう。この意識は対中国人のみならず、常に心掛けたいところ。ついつい主語を大きく捉えて人を判断してしまいがちな自分を猛省しました。

そして、どんな民族であれ、どんな思想の持ち主であれ、どんな職業であれ、できる限り自分のなかにあるフィルターを取り払って、世界中のいろいろな人と楽しく交流していきたいと考えた次第です。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

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