FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

現在は旅の記事をお休みし、旅関連の本を紹介する読書ブログに切り替えています。

黒田勝弘『韓国を食べる』|読書旅vol.12

私がもっとも訪れている海外の都市はダントツでソウルです。10代前半から父親の出張に大張り切りでついて行き(たまに釜山も)、大学進学後はそれにプラスして友達とも通いはじめ、社会人になって以降も身近な誰かが〈ソウルに行きたい〉と言い出せばフットワーク軽く帯同し……といった具合。ここ3年間こそご無沙汰なものの、その前は少なくとも年1~2回、多い時は年4回訪韓していました。

だからと言って〈K-Popに精通しています〉とか、〈最新の韓国コスメならお任せあれ〉とか、突出して詳しいジャンルがあるわけじゃなく、回数を行っているわりにはさして知識もありません。韓国語の勉強だって早々に離脱しています。

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でも隙あらば韓国に足を運んでしまうのは、韓国料理が大好きだから。〈和食は和食としてユネスコ無形文化遺産に登録されたのに、なぜ韓国料理はキムジャン(キムチ作りの習慣・製法)単体での登録なの?〉と憤っているくらいです。

そんなこんなで、今回選んだのは2001年に光文社から刊行され、2005年に文春から文庫化された黒田勝弘さんによる『韓国を食べる』。これ、めちゃくちゃおもしろいです(現在、紙の本は絶版/Kindleでは取り扱っています)。

 

日本におけるコリア報道の先駆者

著者と韓国の関係は、共同通信社の社費で延世大学へ留学した1978年に始まるというから、もうかれこれ40年強。1980~1984年に共同通信ソウル支局長を、1989年から2011年まで産経新聞ソウル支局長を務め、現在も産経のソウル駐在特別記者兼論説委員としてバリバリ活躍されています(昨年も『反日vs.反韓 対立激化の深層』を出版)。

また、日本向けに韓国の状況をレポートするのみならず、現地メディアに顔を出しては反日ニュースにもたびたび批判の声を上げてきた黒田さん。愛国心の強い韓国の方々から非難される場面も多々あり……並みの人間なら嫌気が差して日本に退散しますよね。

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で、どんなにバッシングを受けようと、「反日ニュースさえ見なければ、こんなに楽しいところはない」と語り、2008年作『ボクが韓国離れできないわけ 愉快な韓国生活!!』でも韓国暮らしの魅力を紹介されているのが印象的でした。

長年に渡り報道機関に携わってきた方なので、著作は政治・経済絡みのお堅いものがメイン。しかし、『ボクが韓国離れできないわけ』然り、今回取り上げる『韓国を食べる』然り、ゆるめのエッセイもいくつかあって、もっぱら私はこっちサイドの読者です。

 

料理を通じて知る韓国文化

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『韓国を食べる』と言っても、単なるグルメ本ではありません。参鶏湯の老舗『土俗村』や東大門の人気店『陳元祖補身タッカンマリ』といった観光客にも馴染みの深いご飯屋さんから、政界・財界の要人御用達の韓定職料亭、地方の知られざる名店まで、お店もたくさん登場しますが、あくまでもそれはサブ要素。

本書は、韓国料理を通じて〈韓国人とは?〉〈韓国社会とは?〉といった文化人類学なあれこれを、かなり噛み砕いておもしろおかしく学べる1冊です。濃密な在韓生活を送られてきた黒田さんにしか書き得えない本であり、何も考えずにただ韓国料理を頬張ってきた私には驚きと発見のオンパレードでした。

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韓国料理の魅力の1つは、やはりパンチャン(小皿料理)でしょう。料理を注文するや、ずらっと副菜のパンチャンが並べられ、メインが出てくる前にうっかりお腹はパンパン。

韓国では食卓が豪華な様子を〈お膳の脚が折れるほど〉と表現するそうで、借金してでも客をもてなす風習があるんですって。確かに良くも悪くも見栄っ張り文化な印象がありますもんね。

種類だけじゃなくが多いのも、〈お膳の脚が折れるほど〉の流れからくるものなのでしょうか。中国タイインドネシアでも出された料理をちょっと残す習慣がありつつ(完食=足りなかったと暗に示すことになります)、それと比べたって韓国はとかく量が多い。

観察している限り韓国人は概ねよく食べよく飲むとはいえ、〈1人前が日本の2~3人前に相当するのでは?〉といったレヴェル。おもてなしの国ニッポンも真っ青のサービス精神です。

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過剰サービスと言えば、カニ料理についての章。韓国ではカニ(大きめ)の身をお店の女将さんがほぐしてくれます。私も父の釜山出張にお供した時、取引先のアジョシが連れて行ってくれた店でこの体験をしました。

カニは自分でほじって食べるから旨いのに……〉という気持ちをグッとこらえ、〈これが韓国流のサービスなのね……〉と解釈してその場をやり過ごしましたが、本書によるとサービスのその先に〈男たるものみみっちいことはしない〉的な思いが根底にあるとか。

家父長制の強い韓国は男らしさが重視され、世界中のフェミニストから槍玉に上げられるケースもしばしば。韓国ドラマの法事シーンを見ていても、女性は夫の実家であくせく働き、男性は何もしていない光景が定番ですよね。

男性アイドルも少年性を売り出すタイプ(≒ジャニーズ)が王道の日本に対し、K-Popアイドルは逆三角形のマッチョが多いのも、たぶん韓国社会が男性性を求めているからだと思っています。

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だから、女性にカニをほぐしてもらうのは大いに納得。ついでに言うと、やたらめったら精力強壮食材が豊富。よく話題にされる犬肉をはじめ、イノシシの生き血・生き肝、クマの胆汁、ナマズウナギの尾びれ他、出るわ出るわ。

皮を剥がないでイカ刺しを食べるのだって、鶏のお尻の尖った部位を殿方たちが奪い合うのだって、タコの踊り食いだって、著者曰くすべて精力信仰からくるみたいです。大陸の男は本当に凄いですね(何が?)。

 

ニュースの見方がちょっと変わる?

その他にも、鍋料理に見る集団意識(ウリ意識)、回転寿司のレーンが速い問題などなど、〈なるほどね!〉と目からウロコが落ちまくり。読後は無性に韓国が愛おしくなり、ニュースの見方も少し変わること必至です。

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例えば、首都で魚料理が一般化されたのは、慶尚道出身の朴正煕が政権を握った1960年代以降。加えて木浦出身の金大中が大統領に就任した際は全羅道出身が躍進→羽振りが良くなり、ソウル中心部で全羅道系の店が繁盛→特産物のホンオ(エイ)の値段が爆上がりしたなんて話も。

さてさて、来年3月の次期大統領選後にソウルで流行るグルメは何だろう?――こういう下世話な予想をするの、けっこう嫌いじゃないです。

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中国と国境を接しているにもかかわらず、目立ったチャイナタウンが存在しない韓国。仁川にあるチャイナタウン(※写真上)は、中国と国交が結ばれた90年代後半に環境特区として政府主導で建設され、華人はほとんど住んでいない……と、この記事を書くにあたりウィキペディアに教えてもらいました。チャイナタウンを人工的に中国接待用で作った国は、韓国が初めてなんですって。

そして、いまなお韓国では華人の集住によって作られた天然モノのチャイナタウンが表向き存在しない模様です。日本もさんざん思い知らされてきた韓国人の民族意識の高さは、こんなところにまで表れているんですね。

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本著が書かれた当時、韓国での中国人差別が社会問題に発展していて、この場合の加害者にあたる韓国人の中からは〈我々は日本人の民族差別を声高に批判するが、我々にそれを言う資格はあるのか?〉と自己批判する声が上がっていたようです。こういう報道も日本で大々的に流してほしいもの。

何が言いたいかって? 日韓関係が過去最悪と言われ続けている昨今。隣国を知るためにも、多くの方に『韓国を食べる』を読んでいただきたいなと思って。

音楽ファッションスポーツも、もちろん食文化だってこんなに影響し合っているのに、政治に翻弄されて反韓反日感情がいつまで経っても消えない現状が、私にはアホ臭く見えて仕方ありません。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著と直接関係はありません。

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