FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

現在は旅の記事をお休みし、旅関連の本を紹介する読書ブログに切り替えています。

たかのてるこ『モンキームーンの輝く夜に』|読書旅vol.13

私にとって初のたかのてるこ作品となった『ダライ・ラマに恋して』(2004年)をご紹介しているこちらの記事でも書いた通り、「次に読む彼女の本はこれだな」と決めていました――2003年に刊行の『モンキームーンの輝く夜に』(幻冬舎)。

著者の興味をダライ・ラマ14世及びチベット文化圏へ向かわせる(間接的な)きっかけとなった、ラオス人との真剣交際を包み隠さず綴っているエッセイです。

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なぜラオスでの恋愛がチベット仏教と繋がるのかは、『ダライ・ラマに恋して』の記事でチラッと触れてしまいましたが、未読の方はぜひ時系列で『モンキームーンの輝く夜に』から『ダライ・ラマに恋して』をチェックしてみてください。俄然、共感度が上がると思います。私もこの順番で読みたかったな。

さて、『モンキームーンの輝く夜に』には2つのお楽しみポイントがあります。1つはラオスの風土を感じられる点。もう1つはよそ様のアグレッシヴな恋模様を覗き見できる点。まずは読書旅ブログに相応しく、前者から攻めてみましょうか。

 

素朴でのどかなラオスの魅力

東南アジア最後の辺境とも呼ばれるラオス。国土は238000km²で、そのうちの70%は高原山岳地帯。人口は716万9000人です(※2019年の統計)。

この20年間で人口が前年比約1.5%ずつ増加しているとはいえ、それでも日本の本州とほぼ同じ大きさの面積に世田谷区や大田区よりやや少ない人数しか住んでいないなんて……何と贅沢な土地の使い方! 食料自給率だって100%超えですからね。

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世界でもっとも貧しい国の1つに数えられているものの、資本主義経済が行き詰まりを見せるなか、案外ラオスの暮らしぶりって人類が次の時代を生き抜くヒントになり得そうな気がしなくもないです(社会主義の是非はともかくですよ)。

ラオスの印象はただただのどかの一言。私が記憶している限り、ホームレスは見なかったかな。良くも悪くもギラついた刺激が皆無で、それが逆に刺激的でした。

そんなラオスで受けた驚きが、軽快なタッチで言語化されている『モンキームーンの輝く夜に』。過去のラオスが鮮明に甦ってきて、一度でもかの地を訪れた人なら〈そうだった、そうだった!〉とニヤニヤしてしまうはずです。

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例えば、空港タクシーのやる気のなさ。東南アジアの空港は1歩外へ出るや、押し並べてタクシー運転手の鬱陶しい客引き合戦が待ち構えていますが、首都ビエンチャンも、観光都ルアンパバーンも、「私の存在が見えてないのかしら?」と心配になるくらい誰も声を掛けてきません。

社会主義国だからじゃないかって? いやいや、お隣ベトナムホーチミンの空港には悪質なぼったくり業者がゴロゴロいますからね。この緊張感のなさには拍子抜けでした。商売っ気がないにもほどがあります。

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商売っ気がないのは、市街地の観光客向けマーケットも然り。置いてある雑貨の8割前後がMade in Thailandで、確かラオスと国境を接するタイのノンカイから買い付けていると教えてもらったような……。

しかも、定番のタイパンツだってバンコクで買うよりだいぶ安いんですよ。別にタイ人ががめついのではなく、おそらくラオスの人が特別なだけ。

国産商品が極めて少ないのは農業以外の産業が発展しづらい土地環境に起因するため、〈自国の名産品をもっと作ろうよ〉とは軽々しく言えないながら、売り物のラインナップは別にしても、〈もうちょっとガツガツ接客してきても問題ないよ〉と余計なアドバイスをしたくなるレヴェルです。

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だからと言ってシャイかと問われるとそうでもなく、むしろカンボジアのほうがシャイ度は高め。老若男女みんなフレンドリーで、たかのさんほどではないにせよ、いろいろな場所で声を掛けられたり、手を振られたり、写真を撮られたりした思い出があります。

大してやることもないから時間の経つスピードがやたら遅いし、高い建物がないぶん異様に空は広いし、人は良いし……どこを切り取っても平和そのもの。ついでに、ハーブをふんだんに使ったご当地料理も安くて旨いです。

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そう言えば、ルアンパバーンの托鉢で食べ物をもらいすぎたお坊さんが、道端に置かれた大きなバケツにお米やらおかずやらを投げ入れていく姿を見て、〈何!? 捨てちゃうの?〉と早合点した私。

しかし、あとで地元のおばちゃんが〈あれは捨てたんじゃなくて、孤児院貧しい家庭に配る用だよ〉と教えてくれました。この時ばかりは一瞬でもお坊さんたちを疑った自分が恥ずかしかったです。

……といった具合で、本著を通じて自身の旅を回想するも良し、〈いつかラオスに行きたいな~〉と考えている方が旅行の予行練習をするも良しかと思います。

 

旅先での恋はありかなしか

もう1つ、『モンキームーンの輝く夜に』を語る上で欠かせないのが恋愛要素。〈そもそもモンキームーンって何だろう?〉と思いきや、月を見て著者が恋した相手(サル顔)に思いを馳せるシーンから取られた造語で……。

そもそも中国から日本に伝来したお月見の風習は、離れ離れになった人々が同じ日に同じ体験をしようと始めたものらしいです。同じ月を眺めて心の繋がりを実感し、丸い月に相手の顔を重ねていたとか。言わずもがな、恋愛モード真っ只中のたかのさんは月をモンキーフェイスに見立てていたわけですね。ロマンティック。

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2人が恋仲へ発展していった経緯の言及は避けつつ(ネタバレ防止)、とにかくたかのさんの率直な筆致が可愛らしいの何のって。旅先で現地の人を好きになった経験のない私は、ちょっと人生損している気になりました。

なかには〈旅先でローカルに引っ掛かるとはけしからん! だから日本人ギャルはちょろいって言われるんだよ!〉と眉間に皺を寄せられる方もいるかもしれません。

それこそ私の周りには、かつてバリのサーファーにドはまりし、かなりの額を突っ込んでしまった友達もいます。はたまた、日本人女性を食い物にしているシェムリアップのツアーガイドに遭遇したこともあります(その男曰く〈制服と私服のギャップが良いって女の子たちはよく言ってくれる〉とのたまっていたので、〈人の心を弄ぶんじゃない〉説教しておきました)。

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上手くいけばまだしも、旅の開放的なテンションでコロッと落ちてしまい、痛い目をみた子たちに対して周りの視線は大概冷ややか。でも、一瞬で熱病みたいな恋に落ちるのってステキですよね。その真っ直ぐすぎる情熱が羨ましい。

色白で軟弱、もしくはギタギタのオイリー肌で小太りな上司/同僚/後輩に囲まれて仕事をしていたら、東南アジア特有の浅黒い肌鍛えられた筋肉がやけに眩しく見えるのも事実。自然児というか、生命力が高そうな男性に惹かれてしまうのは、たぶん抗えない女の本能なのでしょう。

 

……って何の話でしたっけ? 無理矢理まとめると、恋愛ノンフィクション小説として『モンキームーンの輝く夜に』はキュンキュンできます。

別れるか/結婚するかもわからない発展途上の恋愛模様を著書で晒すことが、どんなに勇気のいる行為だったかは想像に難くありません。その甲斐あって(?)、ヘタなフィクションよりもよっぽどドラマティック生々しく、そっちの側面のみでも十分に楽しめます。

で、自分的には、そこに大好きなラオス要素もプラスされるのだから、エンタメ度は激高。スルッと一気に読んでしまいました。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著と直接関係はありません。

www.gentosha.co.jp

 

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