FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

旅のこととか、旅に関する本のこととか。

丸山ゴンザレス『アジア罰当たり旅行』|読書旅vol.11

クラウドワークスの話題を数回挿んで読書旅ブログの再開です。再開1発目は、わりとヴィジュアルがツレに近いことから勝手に親近感を抱いている、丸山ゴンザレスさんの『アジア罰当たり旅行』(2005年/彩図社)。

ジャーナリストとして不動の人気を誇るゴンザレスさんが、物書きの仕事を本格的に始めるきっかけとなった記念すべき処女作です。

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TV番組『クレイジージャーニー』では危ない場面に遭遇しても、いたって冷静なゴンザレスさん。見た目はガチムチコワモテなのに笑うとめちゃくちゃ可愛くて、そのギャップに一部の女子や2丁目界隈の方々はキュン死寸前? 丸っこいお顔も相俟って、TVで観るゴンザレスさんにはゆるキャラっぽい愛おしさがあります。

しかし、著書は押し並べてオラオラ系。柔道極真空手を嗜み(何かの記事で愛読書の1つに大山倍達さんの『世界ケンカ旅』をピックアップしていた記憶が……)、タイでムエタイ修行までしている方を捕まえて、「可愛い」なんて言ったら失礼ですかね。

ちなみに私は、ウンコを踏んじゃったり、金髪美人にデレデレしちゃう『クレイジージャーニー』でのキュートなゴンザレスさんも、ゴリゴリの武闘派ゴンザレスさんも、どちらも好きです。

 

世界のリアルを伝えてくれるジャーナリスト

コロナ渦中で渡航制限が掛かっている現在、ゴンザレスさんは彩図社の編集者であり作家でもある盟友・草下シンヤさんと、教養バラエティー裏社会ジャーニー』をYouTubeで配信中。

ヤクザ半グレ右翼団体の実態に迫ったり、芸能界に蔓延する枕営業の闇を紐解いたり、飛田嬢にインタヴューしたり、はたまたGoogleマップで世界のスラムを疑似再訪したり、海外の違法ドラッグ珍グルメ事情をレポートしたり……。

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(明確な名義分けがされているかは不明ながら)日本の裏社会を取材してきた丸山佑介名義での活動と、各国の危険地帯を渡り歩いてきた丸山ゴンザレス名義での活動が凝縮されたようなコンテンツで、多くのファンを楽しませてくれています。

例えば、世界一周の風俗旅行で知られるブロガーのJOJOさんをゲストに迎えた回。己の海外風俗体験もニヤケ顔でチラ出ししつつ、アジアで横行する少女の買売春には怒り心頭でした。

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売春が合法の国、もしくは特に規制のない国であれば、それについて外野がとやかく言う問題ではないというのが私のスタンス。だから、プノンペンバンコクの街角で買春ツアー的な日本人の殿方を見ても、「あらまあ、お盛んですね!」程度にしか思いません。

そういう団体に対して「日本の恥だ!」と言い放った女友達と大口論した経験だってあります。「好きで売っているわけじゃないだろうに」との弁に対し、「職種が何であれ100%好きで働いている人ってどれくらい存在するんだろうね?」みたいな。

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ですが、児童買春となると話は別。嫌悪感しかないです。セックス産業にも精通されている(?)ゴンザレスさんをしても、やはりそこはアウトだと。まあ、当たり前の話ですけどね。

とにかく、YouTubeにせよ著書にせよ、取材対象はさまざまですし、それぞれに別種のセンシティヴな問題を抱えているものの、何においても彼流の芯が通っているというか。自分なりの線引きがちゃんとあって、冷やかしのダーク・ツーリズムに終始せず、世界のリアルを伝えんとする姿勢が貫かれている点こそ、ゴンザレスさんの素晴らしさだと思っています。

 

男気が炸裂

無駄話で文字数を割きすぎました。やっと『アジア罰当たり旅行』についてです。ここには武闘派なゴンザレスさんの魅力がぎっしり。

まず罰当たりと言えども、ほとんどが致し方ない状況で起こったハプニングばかりです。これを読んで「けしからん!」とイライラする人は、よほどの正論主義者じゃないでしょうか。

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確かに、アンコール遺跡群で頭部が欠損した仏像に自身の顔を乗せた表紙写真は罰当たりに見えますが、読了後には「このシチュエーションなら仕方ないだろうし、むしろ最善策だったのかも」となる感じ。

インドでタクシー運転手を地面に叩きつけたのも、ゲストハウスに居合わせた日本人客のパスポートをドブ川に放り投げたのも、バンコクのゴーゴーバーで初心者3人にそれぞれレディーボーイをあてがったのも、納得できる理由があってのこと。読んでいてスカッとします。

日本人旅行者はナメられている。歓楽街に行けば、最も高い外国人料金を要求され、ピックアップバス乗り場では〈おとなしい日本人だから〉と後回しにされる。強盗は金持ち日本人を真っ先に狙うし、白人バックパッカーはイエローモンキーと吐き捨てる。俺には、それがたえられん(まえがきより)。

まさしくその通り。日本人だからと損を被るのはたまったもんじゃないです。日本のマナーも海の向こう側では通用しません。自分が我慢をしたところで、相手のマナーが改善されるでもなく、100歩譲って日本のイメージが良くなるでもなく、却って日本人旅行客の被害が増加するのを助長するのみ。場所によってはやりすぎなくらい自己主張しないと、自分たちがカモられて終了です。

本書を読み進めていくうちに、「これは無礼な奴に対するゴンザレスさん流の制裁なのでは?」と思えてくるのは、きっと私だけじゃないはず。

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もっとも、拍手喝采の武勇伝ばかりじゃありません。初めてバンコクの色町でベイパーした女性が生物学的には男性だったり、ネパールのトレッキングコースでマオイスト銃口を向けられたり、自分の力じゃなかなか回避しにくく、後者のように「ここで自己主張したら確実に死ぬよな」といった事件も勃発。

加えて、キマッた状態でミネラルウォーターとインドの泥水のロシアンルーレットをして下痢になるとか、調べもせずに行ったヌーディストビーチがゲイご用達スポットで……とか、バングラッシーカンボジア的に言えばハッピー・シェイク)を飲んで帰り道がわからなくなったとか、トホホな自爆エピソードに関しては若気の至り(身から出た錆?)としか言いようがないです。アホすぎます。けれど、それらも含めて私たち読者はいろいろ参考になるんじゃないでしょうか(何の?)。

 

ゴンザレスさんに学ぶ正しい地球の歩き方?

ゴンザレスさんほどではないにせよ、海外にいる時のツレはまあまあオラオラしています。整列という概念が存在しないパンガン島のカオスなフェリー乗り場では、途方に暮れるツーリストの中を割り入ってガツガツ前に攻めていくツレ

バリ島で「道端に立っている子どもたちが私のカバンを開けて中に手を突っ込んできた~」と報告するや、躊躇なくその場まで引き返して日本語で大説教するツレ

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シハヌークビルの中国人居住ゾーンにあるゴハン屋さんで、チンピラ風情の若者グループが私たちに向かって差別的な言動を取った瞬間、彼らのテーブルまでズカズカ行ってきっちりやり返すツレ

「日本人だから大人しく待ってくれるだろう」と対応を後ろ回しにしてくる輩や、約束した金額を無視して平然とぼったくってくる輩には徹底的にキレるツレ

こういう人を旅のパートナーに持つ私は、けっこうラッキーなんじゃないかなと思っています。よその国にお邪魔しているからといって無駄に委縮はしたくない。とはいえ、なかなか自分ではオラオラする勇気もなく、嫌な場面はすべてツレ任せ。〈男女平等〉が鼻で笑いますかね。

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何にせよ、予測できない出来事の連続だから旅は楽しいのであって、そこにはトラブルがつきもの。で、ビビリな私は『アジア罰当たり旅行』を通じて海外旅行の正しい作法を学んだり、学ばなかったりしています(正直これを実践するのはちょっとハードルが高いかな……)。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著と直接関係はありません。

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