2022年6月にタイでマリファナが解禁されて以来、同年10月にはアムステルダム発祥のRoyal Queen Seeds(ロイヤル・クイーン・シーズ)が、翌年1月にはサンフランシスコ発祥のCookies(クッキーズ)がバンコクに進出。
街中がグリーン・ラッシュに沸くなか、業界No.1の種ブランド=Green House(グリーン・ハウス)が満を持してタイに1号店を出したのは2023年5月でした。
その後、続々と2号店、3号店、4号店をオープン(※しかも、今年2月に出した4店舗目はよそ者が入り込み難いと言われるヤワラーですよ)。Green Houseの快進撃が止まりません。
私も遅ればせながらタイ本店とスクンビット店にお邪魔したのですが、訪問に先駆けて知人より「Green Houseの凄さをざっくり把握しておいたほうがより楽しめるよ」との助言をもらい、直前に大慌てで情報収集。
今回はまず付け焼刃的に学んだ基礎知識を皆様にもお裾分けします。本稿を読めばバンコクのGreen House見学がより楽しめるかも?
輝かしい受賞歴
1992年にアムステルダムでコーヒーショップを開き、いまや世界中に販路を広げているGreen House。非合法の日本にすら提携店がチラホラあります(※Green House Seed Companyの公式HP参照。詳しくはこちら)。
開業の翌年、アメリカの雑誌『High Times』が主催するCannabis Cupでコーヒーショップ部門を受賞。1994年には複数の部門を制し、現在までにCannabis Cupだけで40回も優勝しています。これは大会最多記録。
ちなみに、Cannabis Cupをサッカーに例えるとFIFAワールドカップみたいな感じでしょうか。そのCannabis Cup以外にもHighLife Cup(※こっちはサッカーで言うEuroかな?)をはじめ、30年以上に渡ってさまざまなアワードを獲得。
Green Houseが品種改良し、権威ある品評会で頂点を極めたWhite WidowやSuper Silver Haze、Hawaiian Snow、Exodus Cheeseは、いまもタイのディスペンサリーでよく見かけます。
とりわけCannabis Cupを2連覇したSuper Lemon Haze(※Lemon SkunkとSuper Silver Hazeの交配株)は、収穫量が多く、質も高い超優良品種で、業界に革命を起こしたとか。本当にめちゃくちゃ普及しています。
後述するYouTubeチャンネル『Strain Hunters』でも、「Super Lemon HazeはGreen Houseの歴史だよ」と語る創業者のArjanに向け、タイでの合法化に大きく寄与した活動家のSoranut“Beer”Masayavanich(今年4月に逝去)が「いまではみんなの歴史だよ」と賛辞を送っていましたっけ。
Green Houseのキーパーソン
①Arjan Roskam
1970年生まれ、Green Houseのオーナー。アワード受賞歴の多さから大麻の王様とも称され、自身の名を冠した品種やハッシュも多数出回っています。
15歳でマリファナの栽培をスタート。ほどなくしてネパールやタイ他、アジア各国に赴いて各地固有の原種を集め出し、23歳の時にGreen Houseを設立。
シードバンクに関しては、収量と生育期間ばかりに焦点が当てられ、肝心の品質がおざなりになっていた風潮を変えること、コーヒーショップに関しては、大麻のネガティヴなイメージを刷新するべく、明るく開放的な店作りにすることが、創設当初のテーマだったらしいです。
また、Arjanは精神と肉体の双方に与えるマリファナのポジティヴな影響を折に触れて強調。会社全体のヴィジョンとして「医療用/娯楽用問わず、将来的には世界中で大麻の合法化を実現させたい」というメッセージを発信し続けています。
②Franco Roja
1974年生まれ、Arjanの弟。兄と同じく新たな品種の開発に尽力するも、研究のために滞在していたコンゴでマラリアに罹患し、2017年1月に亡くなられています。
Francoの手掛けた代表作は、彼がこよなく愛したExodus CheeseとSuper Lemon Hazeの交配株であるLemon Cheese。
Francoの死後、Green Houseは彼に敬意を表すかたちでExodus CheeseとSherbert OGを掛け合わせた品種を発表。いつもエネルギッシュだった故人にちなんでFullgas!なる名前が付けられ、バンコク直営店でも大々的にプッシュ中です。
※ArjanとFrancoの写真はGreen House Seed Companyの公式HPより拝借しました。
世界を旅する『Strain Hunters』
銘柄云々や受賞歴の話はある程度お好きな方でない限りおそらく大して刺さらず、ましてや非喫煙者の私に至っては全然ピンと来ません。
しかし、Green Houseの関連事業のうちYouTubeチャンネル『Strain Hunters』には興味津々。マリファナと無縁な方であっても、例えばTV番組『クレイジージャーニー』のファンなら心を掴まれるのではないかと思います。
『Strain Hunters』とは、Green Houseの重役たちが世界中を旅するドキュメンタリー動画。旅の目的は、まだ十分に研究されていない在来種の発見と保全です。
2008年のマラウィに始まり、インド、モロッコ、カリブ諸国、欧州各国を巡り、Franco死後、数年間の休止を経て、2021年に彼と繋がりの深い南アフリカから旅を再開。最新シリーズではタイに訪れています。
タイ編ではチェンマイとチェンライの畑やムクダーハーンの工場を視察したり、グロワーや関係者にインタヴューしたり、あとはただただみんなで吸ったり……。
バンコクのソイカウボーイやチェンマイ市街地、サムイ空港などなど、観光客に馴染みの風景もインサートされ、タイ好きにはたまりません。
私がもっとも心に残ったシーンは、KD(※タオ島で改良され、タイ全土に広まった品種)の生みの親、通称Uncle Damの「生活のために最低限のお金は必要だけど、商売にはあまり興味がない」的なトークに、目をキラキラさせて頷くArjanの姿でした。
若い頃はヨーロッパで暮らし、1986年に帰国して以降も外国に行っては種を収集していたDamおじさん。
この10年間はタイ産大麻の品質低下を憂い、国内の農家にKDの種子や苗を無償提供。同時に合法化をめざし、国会前でプラカードを掲げていたそうです。こうした地道な活動にArjanも共感する部分が大きかったのでしょう。
Green Houseはなぜ人々を惹きつける?
なぜGreen Houseはスモーカーたちを魅了し続けるのか。この企業が特別たりえる理由を私なりに考えてみました。
突き詰めるとArjanのキャラクターな気がします。会社の規模がどんなに大きくなろうとも、やっていることは10代の頃から変わりません。
友達と旅して、お宝(種)を集めて、しこたま吸って、持ち帰ったお宝をカスタマイズして、それをみんなの前で発表して、また吸って……の繰り返し。
仲間やファミリーを大事にし、最愛の弟を亡くした時は潔く立ち止まる(≒気が乗らない時はやらない)あたりも凄く人間臭いです。
こういう見せ方(メディア戦略)のおかげで、そこまでビジネス感が前面に押し出されていないような印象を受けますし、「世界中で大麻が解禁されてほしい」「大麻の優れた効能をもっと世間に知ってほしい」といった会社全体のヴィジョンも、建前じゃなく心底願っているんだろうと思わせる説得力があります。これってパーパス経営の超わかりやすい成功例じゃないでしょうか。
個人的にはCookiesのBernerっぽい拝金主義タイプの経営者もけっこう好きです。ただ、知人を含む多くのユーザーがArjanの生き様に浪漫めいたものを感じているのも理解できました。
仮にGreen Houseが品質の良さのみをアピールしている会社であれば、知人もわざわざ「訪店前に予習しておいたほうがいい」なんて言わなかったはずです。
次回に続く……
さて、ここまではイントロダクション。Green Houseの概要を学んだところで、次回はショップのレポートを投稿します。
最後に、ArjanとGreen Houseの行動力や信念の強さについてはカッコイイと思いつつ、私自身、彼らのガンジャ論に賛同しているわけではありません(※大麻が100%悪だとも思っていませんけどね)。
加えて、合法の国に旅行したとしても日本人は吸っちゃダメだと日本の法律で決められています。決してタイでの喫煙は推奨していません。ルールを破ってでも吸いたい人は相応の覚悟を持ったうえ、自己責任でどうぞ。
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