FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

現在は旅の記事をお休みし、旅関連の本を紹介する読書ブログに切り替えています。

嵐よういち『おそロシアに行ってきた』|読書旅vol.52

こんなご時世にこんなタイトルの本を取り上げるのはデリカシーに欠けるけど、こんなご時世だからこそ紹介する意味がある気もするし……。

……って、冒頭から歯切れが悪くてごめんなさい。今回は嵐よういちさんの『おそロシアに行ってきた』(2018年/彩図社)をピックアップしてみました。

おそロシアとは、〈恐ろしい〉と〈ロシア〉を引っ掛けたダジャレ。主に日本では考えられない常識や文化風習を指して使われる言葉で、ソチ五輪サッカーW杯のロシア大会と前後し、ハッシュタグを付けておもしろ動画or画像をアップするのがプチ流行していましたっけ。

マクドナルドがロシアでの営業をストップするや、マック似のロゴを掲げたワーニャおじさんが出現したのも、戦争さえ絡んでいなければ#おそロシア案件として笑えたのでしょう(そもそも偽物にチェーホフの作品名を引き合いに出すなよ)。

 

いつもとは違う心持ちで読み進める嵐作品

嵐さんの作品を当ブログで紹介するのは2回目(※前回の記事はこちら)。本屋で新刊を見つけると、条件反射的にレジまで持っていってしまう作家さんの1人が、嵐よういちさんです。

おそロシアに行ってきた』もそうやって家まで連れて帰った気がします。ただし、購入したまま長らく積読していました。仕事を辞める前の私は、買うという行為で満足しがちなダメな奴だったんです。

おそらく発売当初に読んでいたら、ウラジオストック地ビール馬糞みたいな薫りだったとか、インフラが整っていない田舎街ではちょっとした雨でも坂道がウォータースライダーと化すとか、ドアなしの高速オンボロ観覧車が怖すぎたとか、嵐さん節炸裂の歯に衣着せぬ#おそロシア的な描写に萌えていたと思います。

ついでに、彩図社好きとしては、名物編集者と巡った極寒のロシア珍道中もテンションの上がるポイントだったはず。でも、ウクライナ侵攻を受け、今回ばかりは無邪気にはしゃげない自分がいました。

 

旅の目的

世界中のさまざまな危険地帯や辺境地に赴いてきた嵐さんをしても、ロシアには一度も訪れた経験がなかったそうです。

ところが、『未承認国家に行ってきた』(2017年)の取材を兼ねてクリミア共和国アブハジア共和国をはじめとする旧ソ連領に足を運ぶ過程で、ソ連の基幹民族であるロシア人に興味を持ち、2017年夏にウラジオストック→サハリン(樺太)→カリーニングラード→モスクワ、その年の冬にサンクトペテルブルクイルクーツク行きを決行。

旅の目的は、①ロシア人はいつも無表情不愛想なのか、②ウォッカばかりを飲んでいるのか、③英語はまったく通じないのか、④本当にネットで言われているおそロシア的な世界なのか、⑤観光をして楽しいのか――この疑問を直接確認することでした。

 

ロシア人は笑わない

旅行関連の口コミサイトを見る限り、レストランやホテルのサービスが良くないなどの辛辣なレヴューだらけで、ロシアがよそ者にフレンドリーな国とは到底思えません。だけど、やっぱり当たり前のように1人1人は良い人なんだよな~って、嵐さんの旅行記を通じて感じました。

“案の定モスクワやサンクトペテルブルクなどの大都市以外では言葉の問題が発生するし、無表情で時に怖い顔をしているロシア人に威圧感を覚えた。しかし、滞在日数を重ねるうちロシア人はシャイなだけで優しい人が多いことを知り進んで会話するようになった”

ロシア人があまり笑わないのは周知の事実。この国では無意味な笑顔は愚かさのしるしであり、歯を見せて笑うのは下品とされています。作り笑顔を〈形式的微笑〉と表現するロシア人の立場で考えると、日本人のヘラヘラした態度のほうが、よっぽど薄気味悪いかもしれません。

旅先のホテルやゲストハウスでは、多くの白人さんが向こうから笑顔で〈Hi!〉と声を掛けてくれるのに対し、ロシア人は俯いて通り過ぎるか、もしくはこちらから挨拶しても真顔で一瞥するだけのパターンがほとんど。

彼らのぶすっとした態度に心が折れかけた実体験を思い出しつつ、それが国の文化だとわかれば腑に落ちます。他国のカルチャーをとやかく言いたくないですし、何より本書を介してパッと見の印象で〈ロシア人=ちょっと怖い〉と判断していた自分を恥じました。

 

悪いのはプーチン

今年の2月24日を境に、SNSではロシア人全体に対する差別的なコメントが多く見受けられます。#こロシアなんてハッシュタグも、命を軽んじているとしか思えず、不快極まりなかったです。

言わずもがな、大多数のロシア人はウクライナ侵攻にノータッチで、とりわけあの政治体制下で反戦を訴えている方々の勇気は、尊敬に値すると思っています。

また、反戦運動をしていない方々であっても(仮にその大多数がプーチンだったにせよ)、キャッシュレス化が進んでいた同地でVISAマスターカードが決済停止になり、ルーブルも大暴落、各国の経済制裁によってスーパーから食料品日用品が消えたのですから、日常生活にはかなりの支障が出ているでしょう。

もちろん、〈実際に大勢の民間人が命を落としているウクライナに比べたらそんなの屁でもない〉という意見はごもっともですが、程度の差はあれど、多くのロシア人もこの戦争の被害者に違いありません。

なので、我が家では〈ウクライナ侵攻について話す時は主語に注意していこう〉と決めました。例えば〈ロシアが悪い〉じゃなくて、この場合は〈プーチンorロシア軍が悪い〉といった具合です。

 

ごく平凡な日常

話が脱線してしまいました。嵐さんのテキストを案内役にロシア各地の戦争遺跡を疑似訪問し、悪夢のレニングラード包囲戦を筆頭とするこの国の歴史に思いを馳せると、プーチンウクライナアゾフ大隊などをネオナチス呼ばわりして過剰に警戒したり、周辺国NATOの動きに敏感になったりするのも、理解できなくはないです(断じて現ロシア政権を擁護しているわけじゃないですよ)。

それでも、いまは21世紀。プーチンのやり方はあまりにも前時代的。何もしなきゃNATOだって攻めてきません。何かしても実質だんまりを決め込んでいるくらいですからね。

万が一、プーチンの夢であるロシア帝国が復活したとしても、この時代に他の列強国との交易を絶ち、自国の経済を維持させるのはなかなか難しい気がします。どう転んでも上手くいきっこない。だからプーチンには1日も早く諦めてもらいたい。それに尽きます。

最後に、モスクワの章に登場する、現地在住の日本人女性(良子さん)と嵐さんのやりとりの一部を以下に引用しました。

“「プーチンは国民にどう思われているのですか?」

「好きな層はたくさんいるみたいだけど、会社経営者やエリートの人たちには嫌われているわ。ただ、パーティでも大きな声で言えないし、階級が上になればなるほど、プーチン批判をしても何も得にならないし、睨まれるから控えているみたい」

「良子さんの旦那さんの友達とかはどうなんですか?」

「好きじゃないみたいよ」

「でも、普通の人たちには好かれていそうですよね?」

「そりゃ、好きな人は大勢いるわよ。でも、普段、生活しているぶんには、そんなことは特に意識しないわよ。ごく平凡な日常ね」”

あんなにプロパガンダが徹底されていたら、プーチンを好きな人が大勢いるのも納得。一般のプーチン支持層を責めたり、軽蔑たりするのは、ちょっと違う気がします(悪いのはプーチンで、一般の方々は悪くない)。

何にせよ、いまはとりあえずどっち派とか関係なく、プーチンプーチンも、そして当然ウクライナの人々も、みんながごく平凡な日常を取り戻せるように働きかけるのが最優先。

めちゃくちゃ微力ながら、私もできることをしていきたいと思っています。改めて戦争はダメです。もうこれは絶対です。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

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