FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

旅のこととか、旅に関する本のこととか。

たかのてるこ『サハラ砂漠の王子さま』|読書旅vol.113

今回ピックアップしたはたかのてるこさんの『サハラ砂漠の王子さま』(幻冬舎文庫)。サハラ砂漠を舞台にした前回の『世にも奇妙なマラソン大会』を読み返し、積読していたこちらのタイトルに目が留まりました。

 

学生時代最後の旅

サハラ砂漠の王子さま』は、2002年刊行の『モロッコで断食(上・下)』の上巻を再構成し、改題して文庫化した作品。上巻と下巻で違う魅力を感じたため、下巻については仕切り直して次回にアップします。

当時、たかのさんは大学4年生。就職先も決まり、「これが長旅できる最後のチャンスかもしれない」と、さっそく旅の準備を始めます。

目的地にロッコを選んだのは、処女作『ガンジス河でバタフライ』にて描かれたインド旅行(※すみません、『ガンジス河で~』は未読です)でヒンドゥー文化に触れ、次はイスラムへ行ってみたいと思っていたから。

なおかつ、サハラ砂漠で撮影された映画『シェルタリング・スカイ』が好きで、もともとモロッコに惹かれていたから。

いったん就職してしまうと、小さくまとまってしまうかもしれないという恐れが私にはあった。そうなってしまう前に、私は何者でもない自分を感じながら、砂漠の国をさまよってみたかったのだ。

ついでに、「せっかくだし、ヨーロッパも見ておこう」と思いつき、結果、内容盛りだくさんのひとり卒業旅行と相成りました。

 

運命的な出会い

最初に降り立ったのは深夜のシャルル・ド・ゴール空港。観光案内所で安宿を紹介してもらおうと試みるも、パリのホテルは軒並み予算オーバー。

空港ロビーで夜を明かすこともうっすら覚悟した瞬間、たかのさんは日本人の女性ツーリストを発見し、「泊まる場所が決まっていないなら、一緒に部屋をシェアしませんか?」とすかさず声をかけます。

すると、すでにホテルを手配していた相手から「シングルが空いてなくてツインに泊まるので、よかったら私のホテルに来ませんか?」との願ってもない申し出を受けるのでした。

美大に通う彼女もまた、たかのさんと同様に卒業旅行でひとりパリを訪れたのだとか。偶然にしてはちょっとできすぎていませんか?

運命の出会いはこれだけじゃありません。パリからポール・ボウ行きの夜行列車に乗り、翌朝、一気にバルセロナへ向かおうとしたたかのさんは、駅のホームで日本人の青年と出会います。

何と彼はかつて同じ高校に通っていたクラスメイト。高校時代はほとんど接点のなかった2人が、異国の地で意気投合し、スペイン滞在中、行動を共にします。

行き当たりばったりな旅行スタイルのたかのさんは、緻密に計画を練る彼のおかげで、コルドバでメスキータを見学したり、グラナダでスキーをしたりと、定番の観光コースを堪能。充実の10日間が過ぎていきました。

 

女性ひとり旅のリスク

同級生と別れ、いよいよフェリーでアフリカ大陸へ。船内を散策していたら、うっかり従業員用の食堂に入ってしまったたかのさん。そのまま賄い飯をご馳走になり、ひと息ついたところで船員の1人が船の案内役を買って出てくれました。

しかし、好意に甘えて彼について行いくと、人気のないボイラー室に連れ込まれ、無理矢理キスされそうになります。

さらに、タンジェの港町でもレストランのトイレにスタッフが入ってきて襲われかける始末。ヨーロッパを離れて早々に女性ひとり旅のリスクを思い知らされ、意気消沈するのでした。

その後も、カサブランカで宿の女性従業員と仲良くなったはいいけれど、彼女の恋人に寝床を襲われかけます。モロッコよ、いったいどうなっているんだ!?

度重なるエロ攻撃を受け、流石に女性ひとりで旅するのは危険だと判断したたかのさんは、同じ宿に泊まっていた日本人男性(※彼とはフェリーでも立ち話をしています。これも凄い偶然!)を誘い、エッサウィラマラケシュに立ち寄りつつ、一緒にサハラ砂漠をめざします。

砂漠の街マハミドへ向かうバスの車内で、たかのさんはスペイン人にひと目惚れ。このイケメンも仲間に加わり、彼の提案で歩いて砂漠へ行くことに。

当然の如くローカルからは「砂漠をナメちゃいかん!」「ガイドに連れて行ってもらいなさい!」と強く止められ……。

さてさて、無事に『シェルタリング・スカイ』で観たような砂丘まで自力で辿り着けるのか、たかのさんとイケメン君はどうなるのか、ここより先はぜひ実際に読んでみてください。

 

ひとりじゃないひとり旅

私はソロ旅が苦手です。苦手というか、完全なソロ旅は未経験です。現地集合/現地解散の旅行で数日ほど前乗りするのが精一杯。ソロ旅は一生しなくていいとさえ思っています。

そんな私が、この夏、予期せぬかたちでソロ旅をせざるを得ない状況になりかけました。ツレとタイ旅行を計画し、キャンセル不可の格安航空券をゲットした矢先、ツレが事故に遭って複雑骨折

その時に言われたのが、「2人分のエアチケット代をドブに捨てるのはもったいない。ひとりで行って現地の友達を作ってきなよ」との言葉でした。

結局は旅程を短縮し、完治していない状態のツレと一緒に行くんですけどね。でも、そうと決めるまでの1~2週間は人生初のソロ旅を覚悟。家族にも「母の世話ばかりじゃなく息抜きしてほしい」と背中を押されました。

サハラ砂漠の王子さま』を何の気なしに手に取ったのが、まさにこういうタイミングだったのも、きっとある種の運命。「確かにひとりで行けば、私も積極的に新しい友達を作るだろうな」と勇気づけられたものです。

ひとりで旅に出たからこそ、たかのさんはパリでお世話になった美大や、スペインで再会した高校の同級生、砂漠をめざしたバックパッカー2人らと濃密な時間を過ごせたわけで、もし友達と卒業旅行に行ったら、こうはならなかったでしょう。

幸か不幸か、私のソロ旅デビュー計画は頓挫しましたが、「ひとり旅は御免だわ」と思っていた私ですら、本著を読了後はだいぶ意識が変わりました。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

www.gentosha.co.jp

 

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