前回の『海外ブラックロード 危険度倍増版』に引き続き、またまた彩図社の本を選んでみました。当ブログで取り上げるのは私の旅欲を掻き立ててくれる書籍に限っているのですが、ヤクザ・半グレ系やオカルト系をはじめ、我が家の本棚には彩図社の作品がそれなりに充実しています。
ビジネス書にしても歴史書にしても一筋縄ではいかないというか、やたらと剣呑な内容が多いというか……。時には露悪的と揶揄され、何かにつけて炎上しがちな出版社ではあるものの、知らない世界を垣間見せてくれる彩図社が私は大好きです。
そして今回ご紹介するのは、2006年に刊行された岡本まいさんの『「危ない」世界の歩き方』。オカマイさんの愛称でレゲエ好きにはお馴染みの方で、私も昔からよくお名前を拝見し、〈めちゃくちゃパワフルでカッコイイ女性だな~〉と思っていました。つまり、大好きな彩図社×尊敬するオカマイさんのタッグは、自分的にはたまらない組み合わせなのです。
オカマイさんって何者?
そもそもオカマイさんが何者かと言うと、これがなかなか一言では説明できません。かつてイエローキャブの制作宣伝部で主任を務め、90年代のグラビア・ブームを縁の下からがっちりサポート。
イエローキャブ在籍時代も頻繁に海外を旅行し、退社後は年間のほとんどを外国(と沖縄)で過ごしながら、グラビアのコーディネートをされたり、雑誌に写真や記事を提供されたりしていました。
ジャマイカに移住した2008年以降は、フリーマガジンの編集長、ライター、レンタカー屋やお土産屋の社長、プロモーター/コーディネーターとしてマルチに活躍。本当に肩書の多い方なんです。
主立ったところでは、日本人アーティストのジャマイカ・レコーディングを数え切れないほどセッティングしてきた一方、これまた数え切れないほどジャマイカ人アーティストの来日ライヴを実現させ……といった感じ。
意識しているか/していないかは別にして、日本で暮らす現行レゲエ・ファンは、漏れなくオカマイさんのお世話になっていると書いても過言ではありません。
移住の2年前に発表された『「危ない」世界の歩き方』にも、ジャマイカ及びレゲエ絡みのエピソードがそこここに。例えば、年末恒例の一大イヴェント『Sting』に合わせてジャマイカ入りしたオカマイさん。
入国審査で係員から「あなた『Sting』に行くんでしょ? 今年は誰が良いパフォーマンスをすると思う?」と訊かれ、そのままレゲエ談義に華を咲かせたそうです。イミグレがこの緩さって、ちょっと他では考えられないですよね。
また、パナマに向かう飛行機の中で偶然シンガーのSizzlaと意気投合し、VIP専用ゲートから入国した貴重な体験談も。当時のSizzlaなんて、それはもう信じられないくらいのペースでアルバムをリリースし(年間4~5枚も当たり前!)、USヒップホップ周りの客演仕事も増えはじめ、超イケイケだった頃。羨ましすぎます。
他にもパーティー会場で銃声が鳴り響いただの、カメラを盗難されただの、日本人狙いの詐欺師がいるだの、役所の対応がいい加減だの……。しかもそれがジャマイカでは日常茶飯事というから、やっぱりあの国はいろいろな意味でヤバイです。
なお、ジャマイカのネタは2013年作『危ない世界の歩き方 危険な海外移住編』(彩図社)でより詳しく綴られています。実はそっちからブログに載せようと思っていました。が、どうしても見つからず、『危険な海外移住編』はまたいつかの機会に取っておきます。
女性が歩く世界の危険地帯
さて、タイトルに偽りなく世界中のスリリングな場所が登場する本著。危険地帯の定番であるナイロビ(ケニア)、バラナシ(インド)、ラパス(ボリビア)もしっかり出てきます。そんな『「危ない」世界の歩き方』をもっとも特徴付けているのは、女性目線で書かれている点でしょう。
旅先での恋愛にハマる女友達についての章では、「常識で考えられる範囲で楽しんだほうが無難だろう」としたうえで、「そういう友達がいなくなると旅はそのぶんおもしろくなくなるから、大いにやってもらいたいという気持ちもある」と添えられています。
その通り! 間違いないです。海外にいる日本人女性を尻軽だと言い切った嵐よういちさんの『海外ブラックロード 危険度倍増版』に対するアンサーみたいにも思えてきて、何だか痛快でした。
旅行中に襲ってくる生理関連のお悩みも共感度高め。〈アフリカのタンポンは極太なのか~〉と妙なポイントで感心しつつ、思い返せば自分が旅行中にもっとも厄介だったトラブルって生理なのかも。眠いし、集中力は途切れるし……。この章は日本中の男性にコピーして配布したい勢いです(マジで!)。
もう1つ、これは共感じゃなくて見習いたいトピック。オカマイさんが旅で使うバックパックのサイズは何と20リットルなんですって。3か月強の旅行でもですよ。20リットルって一般的にはデイリーユース。1泊系の山登りでも普通はもっと大きいリュックを背負いませんか?
ちなみに、私の旅行用バックパックは55~70リットル。パンパンに詰めるとめちゃくちゃ重いです。これを背負っての徒歩移動は99%不機嫌になります。毎度ツレにも注意されます。でも、どうやったって荷物が減らせません。
対するオカマイさんの旅行バッグの中身は工夫でいっぱい。私が一番驚いたのは、下着のパンツをレース素材にするアイデアでした。ボディタオルを持参しない彼女はレースのパンツで身体を洗い、同時に洗濯まで済ませるんだとか。曰く「レースだと泡立ちも良く、乾きも早く、ついでに勝負パンツにもできる」らしいです。
あとは、盗難防止のために必携しているワイヤー鍵を、洗濯ロープに早変わりさせる裏技も秀逸。こうしたテクニックの数々に、旅行の荷物なんぞはやり方次第でいくらでもコンパクトにできるんだと純粋に感心しました。
好奇心の赴くままに危険地帯を訪ね歩くタイプの旅行記は、〈みずから進んで自分の身を危険に晒して何言ってんだ!?〉的なコメントが寄せられやすいです。試しに本書をAmazonで検索してみたところ、ネガティヴなレヴューも目立ちました。
しかし、なぜレヴュワーの皆さんがそこまで目くじらを立てるのか、不思議で仕方ないです。〈そう簡単には行けない場所、そう簡単には経験できない話が読めるんだから、呑気に楽しめばいいじゃん〉って心底思います(嫌なら手に取らなきゃいいだけ)。何よりケーススタディーにもなる気がして、私はわりと率先してヤンチャな旅エッセイを読んできました。
この『「危ない」世界の歩き方』に関しては、女性の書いたこれ系の本が男性の書いたものに比べて圧倒的に少ないため、とりわけ同性バックパッカーに刺さるトピックがたくさんあるかと思います。興味があればぜひチェックしてみてください。
※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著と直接関係はありません。
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