FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

旅のこととか、旅に関する本のこととか。

TABIPPO監修『僕らの人生を変えた世界一周』|読書旅vol.6

今回選んだ1冊は、このブログで今後取り上げていく旅エッセイの中でも、たぶんトップクラスで多くの読み手が共感できるんじゃないかな~と思っている『僕らの人生を変えた世界一周』(いろは出版/2013年)。なぜ共感度が高いか、その理由も交えてご紹介していきましょう。

 

TABIPPOって何?

まずは本書を監修したTABIPPO(たびっぽ)の説明を簡単に。TABIPPOとは2010年に世界一周経験者+学生スタッフが立ち上げた世界一周団体。『僕らの人生を変えた世界一周』を出した翌2014年に、株式会社として正式に起業しています。

〈旅に一歩踏み出してほしい〉との願いを社名に込めた彼らは、〈旅で世界を、もっと素敵に〉なるスローガンのもと、若者に旅の魅力を伝えるべく日々活動中。

ウェブ媒体での情報発信や、イベント運営、企業とのタイアップによる商品開発などなど、事業内容は多岐に渡ります。

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コロナ禍でもその志が萎れる気配はなく、設立10周年の節目にあたる昨年はサイトの全面リニューアル費とコンテンツ制作費をクラウドファンディングで募ったり、今年はオンラインで3日間に渡る大規模な旅フェスを開催したり……。

若者の旅行離れが云々と囁かれて久しい昨今、いやいや、こんなに素晴らしい団体がいるのですから、日本のバックパッカー業界(?)の未来は明るいだろうと私は勝手に楽観視しています。

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そんなTABIPPOの書籍第1弾が、本稿の主役である『僕らの人生を変えた世界一周』。TABIPPOは以降もライツ社からコンスタントに本を出版していて、どれも最大限に旅欲を掻き立てる内容です。

毛色は全然違うものの、かつて沢木耕太郎さんの『深夜特急』(1986~1992年)が多くの若者を世界へ連れ出したように、いまはTABIPPOがその役割を担っている……なんて書いたら褒めすぎでしょうか。

 

世界一周って意外と簡単?

15編の旅行記と、総勢50名の旅人によるちょっとした土産話で構成された『僕らの人生を変えた世界一周』。ここに登場する人々はプロの作家さんでもなければ、社会からドロップアウトしている系の変わり者でもなく、ごく普通の方です。

世界一周の字面を見て、「一般人にはハードルが高いよな~」と身構えつつ、最初の章を読み終えた頃には「これなら私にだってできそうじゃん!」と思わせてしまうあたりが本書の凄いところ。急に世界一周旅が身近な存在になるんですよね。

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例えば、毎日をただやり過ごしていた引きこもり生活から一歩踏み出し、人々の優しさと美しい絶景に生きる活力をもらった大学生

例えば、世間一般の幸せを求めてキャリアアップしていく日々から一歩踏み出し、異なる文化/価値を認めて国際結婚に至った看護師さん

例えば、週末のために平日5日間を耐え忍ぶ会社員生活から一歩踏み出し、旅先での出会いに背中を押されてカフェを開業したカップ

例えば、何不自由ない暮らしから一歩踏み出し、格差社会の現実を目の当たりにして自分の使命を受け止めたお金持ちのお坊ちゃま

例えば、仕事に没頭するあまり愛娘との時間を割けなかったお父さん。例えば、周りの友達とは違うことをしてみたかった元サッカー少年。例えば、新たな人生の目的を探していたエンジニア……。

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おそらく誰か1人は自分と近い境遇だったり、同じような感情を抱いていたりする旅人が出てくるはず。冒頭で「共感度が高い」と書いたのはそういうことです。

もっとも、「世界一周旅行で誰もが人生を変えられる!」と本気で信じ込めるほど私はピュアじゃなく、自分探しの旅的な言葉を聞くと何とも言えないイヤ~なむず痒さを覚えます。

どこにいても変われる人は変われるし、変われない人は変われない。変わるか変わらないかはすべてその人次第。

だとしても、『僕らの人生を変えた世界一周』の中で描かれた、自分と似た誰かが人生観をガラリと変えていく旅の道程はとても刺激的でした。

 

手作り感が素敵!

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さてさて、私が言うのも本当におこがましいのですが、上手すぎない文章も本書の素敵なポイント。「カッコイイ原稿を書いてやろう」みたいな山っ気は感じられず、どれもこれもストレート。文体が突然崩れてキャラ変する箇所とか、もし自分が編集担当なら赤入れ案件ですよ。

だけど、編集の方があえてそれを活かしているのは言わずもがな。拙さの残る文章だからこそ(偉そうにスミマセン……)、1人1人の体験談が生々しく届くというカラクリです。

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挿画も然り。プロのカメラマンさんが撮影したキレイな素材ではなく、著者の皆さんが撮ったと思しきスナップ風の写真が、これまた物凄く生々しくって。

なおかつ、本書は左開き横書きで、本文の背景にはノートの罫線がうっすら敷かれ、個人ブログさながらに太字Q数上げを多用して手作り感たっぷり。

そのカジュアルさがテキストと写真にめちゃくちゃフィットし、端々で編集者さん/デザイナーさんのこだわり&遊び心を感じます。

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特に私がキュンときたのは本の終盤。世界一周した50人の旅人のプロフィールをシンプルなアンケート形式で紹介していくページの下に、小さく書かれた〈世界一周に旅立つまでにやりたい100のこと〉リストです。

お役立ち情報からしょうもない小ネタまでがズラリと並び、100項目目には〈チケットを握り締めて飛行機に乗る〉、続けて〈それじゃあ気をつけて! いってらっしゃい!〉の一言。まんまとワクワクしてしまいましたよ。余白があれば51人目の旅人として、いつか自分のプロフィールも書き加えたい勢いです。

 

世界一周したい?

そんなこんなで結構その気になってしまった私は、ツレに「世界一周したい?」と尋ねてみることに。すると、「別にいいかな」とそっけない答え。

ツレ曰く「行きたい場所はいっぱいあるけど、線で一周結ぶ意味ある?」だそうです。浪漫の欠片もないな。思いっきり水を差された気分。

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でも、よくよく考えると行きたい場所がいっぱいあるって凄く幸せですよね。私も行ってみたい場所がまだまだたくさんあります。

そこでふと思ったんです。カンボジアに移住しようとした矢先、コロナウイルス感染拡大で計画は中断。コロナが落ち着いたらすぐさま当初のプランを遂行するものだと決めつけ、自粛生活をダラダラと送っていました。

しかし、どうせ予定が狂ったんだから、そのまま予定外の大掛かりな旅行をブチ込むのはどうだろうかと。自粛期間に予定外の副業で貯めた小銭を旅の軍資金に充てるのはどうだろうかと。

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『僕らの人生を変えた世界一周』で皆さんが経験した旅は予期せぬトラブルの連続で、人生も計画通りに進まないからおもしろいってことを学びました。

そして日本に軟禁されている現状もまた、私の人生計画にはまったく入っていなかった予期せぬ事態です。ならば、この外出自粛も旅費を稼ぐために必要不可欠な準備期間だと割り切り、もっとこの状況を楽しもうと思って。思考回路があまりにも単純ですかね?

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著と直接関係はありません。

 

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