前回の『バンコクのホイクワンってどんな街?』に続き、今回はホイクワンのシンボルであるガネーシャの祠(Ganesha Temple/เทวลัยพระพิฆเนศ)を紹介していきます。
祠が生まれた背景
ガネーシャとは象の頭と4本の腕と太鼓腹を持つヒンドゥー教の守護神。古くからヒンドゥー教の影響を受けてきたタイでも広く親しまれています。
チャチュンサオ県のピンクのガネーシャのほか、タイ全土にさまざまなガネーシャの祠があるなか、首都バンコクでの強力パワースポットとして有名なのは、セントラル・ワールド前と、そして、ホイクワンでしょうか。

ホイクワン交差点にガネーシャの祠が建ったのは2000年。もともとは大理石工場だったらしいです。なぜ工場跡地に祠が造られたかと言うと、この交差点で交通事故が多発していたから。
プラチャーチャート・トゥラギット紙のウェブ版記事によれば、ホイクワン交差点にガネーシャの祠を建てるよう指示したのは、セントラル・ワールド前のトリムルティとガネーシャを手掛けた人と同一人物なんですって。
どんなご利益が得られるの?

2010年頃を境にホワイクワンの東側には中国系の起業家が集まりはじめ、プラチャーラートバンペン通り一帯は瞬く間にチャイナタウン化。
その移住組の多くもガネーシャを崇拝し、ビッグマネーを掴んだ事例が頻発したせいか、ここでは商売繁盛や出世運アップを祈願する人が多い模様です。
ただし、仕事やお金関係のみならず、元来、ガネーシャは困難を克服し、特に学問や芸術面での成功をもたらすとされているので、合格祈願の類にも効きそうですし、もっと大雑把に健康運や幸運を願う感じでも問題ないと思われます。肝心の交通事故が減ったか否かは調べてもわかりませんでした。
アクセス方法と参拝時間
行き方は簡単。MRTブルーラインのホイクワン駅4番出口を上がり、少し引き返して交差点を渡った先が目的地です。4番出口からの距離は100m弱。
祠は拝観無料で、24時間いつでもお参りできます。ちなみに、願いが叶いやすい参拝日は火曜と木曜。時間帯は空いている早朝か夕方が推奨されていました。
とはいえ、雰囲気が良いのは深夜帯。ホイクワンには夜職の女の子が多く住み、彼女たちの仕事が終わる頃にナイトマーケットはピークタイムを迎えます。
ガネーシャ祠がもっとも混雑するのも22時以降(※0時を過ぎても参拝客は絶えません)。もしも観光がてらホイクワン特有の活気を肌で感じたい場合は、夜に訪問するのがオススメです。
参拝方法
ガネーシャ像の参拝の手順は、①お供え物を用意し、②ガネーシャに祈りを捧げ、③ネズミにお願い事を耳打ちする、以上の3ステップです。
①お供え物の準備

お供え物は敷地に入って右手側で販売しています。スタンダードなものは、水牛のミルクと赤いシロップ、お線香、マリーゴールドの花輪。セットで30THBです。水牛のミルクと赤いシロップはすべてリラックマのコップに注がれていました。
それ以外にも、ガネーシャの乗り物であるネズミの置物が大サイズ1000THB、小サイズ200THB、ガネーシャに巻き付ける布が200THB……と、あれこれ売られていますが、まずは30THBのスタンダード・セットでOKでしょう。
②ガネーシャへの祈り

お参りセットに付いてくるカードの言葉を、心の中で読み上げるのが正式な作法。お祈りを捧げた後、①のお供え物をそれぞれ所定の場所に置いていきます。
なお、タイ語が読めない私は、まずガネーシャを称賛し、「あなたの力を私にも分けてください」と日本語で伝えておきました。よその祠でも神様に捧げる祈りはだいたいこのパターンが多く、内容的にはそこまで的外れじゃないはずです。
一応、本ページを投稿するにあたり、カードに書かれた内容をAIで文字に起こしてカタカナ変換ツールにかけてみました(※精度は保証いたしかねます)。
โองการพินธุนาถัง อุปปันนัง/オーン(グ)ガーンピントゥナータン(グ)ウッ(プ)パンナン(グ)
พรหมาสะ หะปะตินามะ อาทิกับเป/プロムマーサハパティナーマアティガッ(プ)ペー
สุอาคะโต ปัญจะ ปะทุมังทิสวา/スアカトーパンジャパトゥマン(グ)ティサワー
นะโมพุทธายะวันทะนัง โอมอิด พิฆเนศวรอิ/ナモープタターヤワンタナン(グ)オームイッ(ト)ピッ(ク)ガネーシャ
จะมหาพรหมา มหิตทิเดชา สรรพเสน่หา ประสิทธิเม/ジャマハープロムマーマヒタティデーチャーサッ(プ)サネーハープラシッ(ト)ティメー
サンスクリット語が混ざっていて翻訳機にかけても内容はチンプンカンプン。最後の1文は「偉大なる力、偉大なるブラフマーが私にあらゆる愛と祝福を与えてくださいますように」って意味みたいです。
②ネズミへの耳打ち

お祈りが済んだら、最後はガネーシャに仕えるネズミにお願い事を耳打ち。ピンクのガネーシャと同じで、ネズミに願い事を言うと、それをネズミがガネーシャに伝えてくれる仕組みです。
ホイクワンのネズミ像は左右に2体置かれていて、耳打ちするのはガネーシャの右手側。行列ができているため、間違えることはまずありません。
やり方は、ネズミの片耳に口を近づけて手で覆い、もう片方の手で反対側の耳を塞ぎます。これにてガネーシャへの参拝は終了です。
ガネーシャ以外の見どころ

ホイクワンのガネーシャの祠には、ガネーシャ像の周り以外にも人だかりができています。写真上は悪運や災いを排除してくれるラーフ神。
ラーフと言えば、月や太陽を頬張る姿が印象的ながら、ホイクワンでは駄菓子が備えられていました。この駄菓子セットも敷地内で購入できます。

続いてはトリムルティ。ブラフマー(創造)、ヴィシュヌ(維持)、シヴァ(破壊)の三位一体神です。
セントラル・ワールド前のトリムルティは恋愛成就のご利益で知られているのに対し、こちらはもうちょっとマルチな願いに対応してくれるとか。

個人的に一番グッときたのは、父親のシヴァと母親のパールヴァティと子のガネーシャが勢揃いしたエリア(※ガネーシャはパールヴァティの膝の上に乗っています。写真だとわかりづらくてごめんなさい)
シヴァが我が子とは知らず、ガネーシャの首を切り落としてしまい、象の首を取り付けてガネーシャを復活させたという壮絶なファミリー・ヒストリーも忘れさせてくれるくらい、とても和やかな空気に包まれていました。
参拝を終えて
いまのところ、まだ私の願いは叶っていません。でも、少しずつ事態は好転してきています。実際に解決していないぶん、「ご利益あります!」とは断言できないものの、お参りに行けて良かったです。
とりわけ、真剣な面持ちのタイ人に囲まれてネズミの耳打ちの順番を待っていたひと時は、言葉にできない不思議な気持ちになり、本当にゾクゾクしました。

「耳打ちしている瞬間を写真に撮らせてもらってもいいですか?」との変なお願いに対して笑顔で快諾してくれたお姐さんにも感謝の気持ちでいっぱいです。
ご利益云々はともかく、ぜひ皆さんもバンコクを訪れた際にはガネーシャの祠で地元の方の文化風習を覗き見してみてはいかがでしょうか。
普通の女の子がなかなかの大金をお布施したりしていて、タイ人の信心深さが窺い知れ、けっこう驚くと思いますよ。少なくとも私は仰天しました。
ランキング参加中。ぜひ応援クリックお願いします。