FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

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2025年1月1日からタイでは大麻が再規制! いったいどうなる?

2022年にアジアで初めてマリファナ合法化したタイ。しかし、2025年1月1日以降、ふたたび規制されます。

私は大麻を吸いません。でも、解禁後のタイの自由な空気がけっこう好きでした。ディスペンサリーで溢れていた繁華街の風景はどう変わってしまうのでしょうか(※内心は大して変わらない気もしています。その理由はページの後半にて)。

何にせよ、こういう変化のタイミングに自分も居合わせたかったです。行けない代わりにせめてもの悪あがきで、2024年最後の投稿は再規制に至るまでの流れをまとめてみました。

 

2024年までの実状

2022年の解禁当初より娯楽用大麻の使用は認められていません。許されているのは医療大麻だけ。売り手/買い手問わず、本来は許可証なしでTHC含有率0.2%以上のバッズや加工品(コスメやエディブル製品など)を所持するのもNGです。

ただし、これらは建前上のルール。法律で義務付けられている購入時のIDチェックも90%(いや、99%かな)の販売店は実施していません。結果、外国人観光客であろうが、何なら未成年さえも、容易に入手できる状態が続いていました。

 

再規制のきっかけと草案

そうしたなか、2023年8月に保守連立の新政権が発足し、9月には当時の首相であるセター・タビシン氏が「規則を厳格化して医療大麻のみを認める」との方針を発表。同年11月にタイ保健省が出した草案はざっくり以下の通りです。

THC含有率0.2%超えの大麻を麻薬カテゴリー5に分類

②医療目的は推奨する一方、娯楽目的は厳禁

③栽培するには個人使用であっても許可が必要

④ディスペンサリーでの乾燥大麻の販売は禁止(営業自体は継続可)

とりわけ注目すべきは①。2022年に麻薬カテゴリー5から削除され、合法になったマリファナを、ふたたび麻薬リスト入りさせるというものです。

これを受け、②ではもともと個人使用に限りOKだった大麻栽培を取締の対象にし、④ではディスペンサリーを潰しにかかろうとしています。

なお、②は現行のルールから変更なし。改めて規定を明文化し、違反者はきちんと処罰しようといった狙いなのでしょう。

 

麻薬カテゴリー5について

少し脱線。タイの麻薬カテゴリーで最上位の第1類には、ヘロインや覚せい剤、エクスタシーやLSD他、39種のドラッグが該当します。とりわけヘロイン覚せい剤を製造や輸出入すると死刑が即確定。情状酌量の余地はありません。

第5類はソフトドラッグ扱いになっていて、今年5月、アヘンマジックマッシュルームも新しく5類に仲間入り。医療目的研究目的の使用が認可されました。

日本でもモルヒネ用に輸入しているアヘンはともかく、キノコはかねてより合法化が噂されていたので、5類へ格下げされ、解禁の準備段階に入った模様です。

言わずもがな、ソフトドラッグといえどもいまはまだ禁止薬物である事実に変わりなく、一般の方が食べたり吸ったりするのはダメですよ(※正直、キノコはわりと簡単に買えちゃうんですけどね)。

 

マリファナ支持派の反発

2023年11月に作成された草案に対し、大麻支持者は猛反発。まずは首都で大規模なハンガーストライキが行われ、すぐさま地方にも抗議活動が広がっていきます。

大麻合法化の立役者であるタイ誇り党の党首で、現在は内務大臣と副首相を兼務するアヌティン・チャーンウィーラクーン氏も、セター氏のやり方に異を唱え、大麻を麻薬リストに戻すか否かの採決に反対票を投じる旨を公言。「大麻の再規制は経済に悪影響を及ぼす」と警鐘を鳴らしています。

 

麻薬への再分類は一旦保留(!?)

諸々の声を踏まえ、政府はマリファナを麻薬に再分類するのではなく、法律によって規制する方向へシフトチェンジ。セター前首相は大麻に関する法律の策定を指示しました。

結局、これが最初に出た草案とどの程度の違いがあるのか、私はイマイチ理解できていません。とはいえ、デモが収まった様子をニュースで見ると、おそらくだいぶ緩和されたっぽいです。

新しい法案では、保健省の許可を得ずに大麻の所持や販売、輸出入が禁止されます。逆に言えば、ライセンス保持者は好き勝手に販売できるのかしら? 違反者に対してどんな罰則が下されるのかも曖昧な印象です。

ちなみに、THC濃度0.2%以下の乾燥大麻やエキスの所持・喫煙は引き続き犯罪扱いになりません。ヘンプシードオイルCBD株はもちろん、種の売買も法律上はセーフです。

 

なぜ再規制にもたついた理由

たぶんこれを読んだ多くの方が「そもそも医療大麻しか許されていなかったのだから、ルールを厳格化するのなんて簡単でしょ」と思うはず。

ところがどっこい、細かい経緯は省いたものの、見直し案が通るまでに紆余曲折ありました。すんなり再規制できなかった主な要因を次の4つです。

 

【1】投資家への配慮

解禁以来、さまざまな企業が大麻ビジネスに多額の投資を行ってきました。ディスペンサリーの数は1万軒を優に超えると言われ、Green House(グリーン・ハウス)やRoyal Queen Seeds(ロイヤル・クイーン・シーズ)を筆頭に、ヨーロッパの老舗シードバンクも続々とバンコクへ進出。

また、欧米と比べて格段に安く栽培・加工できるとなると、美容業界食品業界も放っておくわけがなく、タイは空前のグリーンラッシュに湧きました。

グリーンラッシュの背景には「この好機を逃してなるか!」と積極的に企業を誘致した自治が大きく関わっています。

誘致しておいて、政権が代わった途端に「やっぱりダメです」と言われても、業者投資家は納得しません。国の信頼も失墜します。現に一部の外国企業は国家賠償を要求していました。

再規制がスムーズに進まなかった最大の理由は経済への打撃。官民一丸となって大麻ビジネスを盛り上げてしまった手前、そうすんなりはひっくり返せませんよね。

 

【2】失業問題

大麻ビジネスの興隆は多くの雇用を創出。ご参考までに、マリファナが解禁されたわずか2週間後には、70万人大麻関連のライセンスを取得し、2000万人が栽培用アプリに登録したとの統計も取られています。

ディスペンサリー従業員に絞っても、少なく見積もって5~10万人弱。さらに農家加工業者で勤める方を含めたら、再規制の中身次第で一気に数十万から百万単位の労働者が職を失いかねません。その失業者への補償をどうするかは、最後まであやふやなままでした。

 

【3】説明が不十分

失業問題をないがしろにしたのに加え、「再規制する意義エビデンスと共にちゃんと説明しろ!」との支持派の要求に応じ切れなかったのも、国としては良くなかったと思われます。

政府が口ごもる間も、大麻擁護団体のWriting Thailand’s Cannabis Futureは、経済的に恵まれない人々や従来の病院での治療で改善が見られない人々にとって大麻代替医療になっていること、そして大麻解禁がヤーバー使用の減少に繋がっていることを数値で示し、正当性をアピール。再規制に賛同していたメディアすら、徐々に政府へ疑問を投げかけはじめます。

 

【4】首相交代

そうこうしているうちに、大麻の再規制を主要政策に掲げていたセター首相が失脚。タクシン元首相の次女であるペートンタン・シナワット氏が史上最年少で新首相に就任しました。

これによりますますタクシン氏の力が増して、保守派が警戒。連立政権を組む親軍政党の一部は閣僚人事から排除され、国内政治は不穏なムードに包まれています。

言い出しっぺのセター氏がいなくなるわ、政界が荒れるわ、もはやマリファナにかまっている場合じゃなくなったのが正直なところかもしれません。

 

まとめ

そんなこんなで、中途半端なものとなってしまった再規制。冒頭に小さい文字で「(繁華街の風景は)大して変わらない気もしています」と書いたのは、ここに繋がります。種は買えるけど栽培はNGとか、どう見たって抜け穴だらけ。

……とは言っても、年明けにルール変更されるのは確か。近々バンコクへ行き、何が変わって何が変わらないのか、自分の目でチェックしてきます。

※この先しばらくは頻繁に法改正される可能性が高そうです。最新ルールはタイ政府や関係省庁のHPでご確認ください。最後に念のためお伝えしておくと、法改正に関係なく、日本人が娯楽目的で大麻を喫煙するのは、たとえ日本国外であっても禁止されています。詳しくはこちら

 

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