今回は、2024年に訪れた神社仏閣のなかで私がもっとも興奮したWat Phut Udom(ワット・プートウドム/วัดพืชอุดม)をご紹介。
バンコクからの行き方は別途こちらのページでアップしています(※けっこう簡単です)。余計な前情報を知らずに参拝したい方は同ページをすっ飛ばしてくださいませ。
Wat Phut Udomとは?
Wat Phut Udomとは日本でもマニアの多い地獄寺の1つ。地獄寺を大雑把に説明すると、立体像を使って地獄を描いたスペースのある寺院のことです。
タイ全土には80から100近い地獄寺が存在していると言われ、過去に当ブログでも知名度No.1のWat Phai Rong Wua(ワット・パイロンウア/วัดไผ่โรงวัว)を取り上げました。
Wikipediaのタイ語版によれば、Wat Phut Udomはタイ歴2417年(西暦1874年)に建立された由緒正しき王室寺院。その後、1950年代半ばに地獄ゾーンが増設されたみたいです。
加えて、地獄寺研究家の椋橋彩香さんが2018年に執筆された『タイの地獄寺』には「タイで最初期に作られた地獄寺」とも記されていました。
半地下に広がる地獄空間
多くの地獄寺が屋外に造られているのに対し、Wat Phut Udomの主な地獄エリアは本堂の真下。珍しい屋内型です。昭和のお化け屋敷チックな趣がたまりません。
看守役を左右に配したゲートには、タイ語で「地獄への入口」と書かれていました(※写真上参照)。さっそく内部を見学してみましょう。
最初に現れるのは死者の国を司るヤマ王。地獄へ行くのか、天国へ行くのか、閻魔大王の裁きを受ける日本とシステムは一緒。
他にも、地獄行きを言い渡された罪人が犯した罪によって釜茹でにされたり、舌を引っこ抜かれたり、針の山を登らされたり(※タイでは棘の木)、日本で言い伝えられてきた地獄との共通項は案外多いです。
例えば平安時代に描かれた絵巻『地獄草紙』に動物を虐待した者が巨大な鶏から逃げ惑う場面がありますが、タイの地獄寺でもよく人間が動物に食べられています。
逃げ惑う場面と食べられる場面とではグロさのレヴェルが違いますかね……。何はともあれ、動物愛護の精神に溢れた仏教の教えが、両国の死後観に強く根付いているのは確か。
また、タイでは獣頭人身のモチーフも多く、牛を殺めた人は半牛人間に、鶏を殺めた人は半鶏人間に、犬を殺めた人は半犬人間にされてしまいます。
類似点のみならず相違点も多々あって、とりわけ大きな違いを感じるのが獄卒の姿形。日本の獄卒はほとんどが鬼の格好をしている一方、タイの獄卒はわりと人の格好をしているんですよ。
人が人に苦しみを与える構図はそうとうエグいです。ブログに掲載する写真を選別する過程でも「これは過激すぎるよな~」と大量に候補から除外しました。
Wat Phut Udomの過ごし方
おどろおどろしいオブジェが薄暗く天井の低い空間で展示されている圧迫感満点のWat Phut Udom。屋外型よりも気味悪さが倍増します。
言わずもがな、ただただ参拝客の恐怖心を煽るだけの露悪的なエンタメ・スポットではありません。Wat Phut Udomを含む全地獄寺の存在目的は「地獄に堕ちないよう善行を積みましょう」と人々に説くため。
敷地内には「殺生したら地獄ではこんな苦しみが待っていますよ」「嘘をついたらこうですよ」といった説明書きが英語とタイ語で貼り出されています。そんななか、頻繁に目に飛び込んでくるのが「Do good, Do receive」の文言。その通りだと思いました。
1つ1つ解説を読みながら順路を進み、「悪事はしちゃダメだな」と改めて自分に言い聞かせるのが、Wat Phut Udomでの正しい過ごし方でしょう。
ちなみに、私が一番怖かったのは年季の入ったヘビのホルマリン漬け(※写真掲載は自粛します)。どういう意図で置いているのかは謎のままです。
両替のしすぎには要注意
Wat Phut UdomをB級スポット扱いしておもしろがるのは信者やお寺関係者に失礼だと肝に命じつつ、どうしたって笑いが込み上げてしまう瞬間もあります。その1つがこれ。
5THB硬貨を投入すると立体像が動くからくり装置で、20台か、それ以上か、とにかくかなりの数が置かれています。
手元に5THBがない時はお坊さんが両替してくれるので心配無用。「全部動かしたい!」と意気込んだ私はお坊さんに100THB紙幣を差し出すも、「20THB紙幣はない? 100THBは大きすぎるよ」とジェスチャーで伝えられました。
結論を言えば20THB分でも多いくらい。というのも、機械自体はたくさんあるのに、動くのはたった1台です(※稼働している機械はランプが点灯しています)。メンテナンスの甘さに脱力。
気を取り直して、唯一故障していなかった電動からくりにお金を入れてみたところ、すっとんきょうな音楽が大音量で流れ、サイケデリックなライトに照らされた人形が左右に揺れはじめました。
何て安っぽくてチャーミングなんだ! 1回じゃ物足らず、即リピートです。幸い財布には5THB硬貨がぎっしり。「20THB紙幣はない?」と私に促したお坊さんも近くで苦笑いしていました。
外へ出ても地獄は続く
大充実の屋内展示を鑑賞し終え、太陽の光が燦燦と降り注ぐ屋外へ出ても、まだまだ地獄は続きます。外は外で見どころたっぷり。等身大サイズや3m近くある立体像がズラリ並んでいました。
写真上は生前の邪淫によって局部が巨大化してしまった男性。大事な箇所がなかなかリアルに表現されています。
続いては、我が子を見殺しにしてしまった夫婦。地獄の世界に送り込まれ、今度は餓鬼なのか、悪魔的なものなのか、人ではない子どもを出産するハメに。
その他、臓器が剥き出しになっている人、全身に針を刺されている人、目が飛び出ている人、血だらけの人、土に埋まっている人などがいて、さまざま責苦を可視化。どれを見ても「絶対にこうはなりたくないな」と心底感じました。
地獄からの生還
いや~、お腹いっぱいです。次から次へと迫りくる壮絶な地獄模様にグッタリ。なお、境内には救いの天国エリアもありますし、お茶が飲める休憩所もあります。
さらに、お寺の裏は川になっていて、私はベンチに座って川をぼんやり眺め、無事この世に生還できた喜びをしばし味わっていました。
本当に行って良かったです。めちゃくちゃ楽しめました。もしこの記事を読んで地獄を疑似体験してみたくなったら、こちらの投稿でアクセス方法をチェックしていただけると嬉しいです。
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