もともと観光産業への依存度が高かったパンガン島だけに、新型コロナウイルスの影響で地域経済は大打撃を受けているんじゃないか――久しぶりにパンガン島へ行くにあたって、私はこんなことを考えていました。
結論から言うと、完全に余計な心配でした。パンガンは私が思うほどヤワじゃなかったです。とりわけ島の玄関口であり、ローカルの生活を支えるトンサラ港周辺の様子は、コロナ前とほぼ同じ。島民たちの逞しさを感じずにはいられません。
歩行者天国の活気
平日の午前中は生鮮市場でお買い物している人々が、平日の夕方にかけては海沿いの公園で談笑、もしくは健康器具を使って軽く身体を動かしている人々が目立つトンサラ地区。
大型スーパーもフードコートもあって、リゾート・アイランドのなかでもこの一帯はひときわ庶民的な香りが漂っています。
そのトンサラがもっとも賑わうのは、毎週土曜日の16~22時に開催されるウォーキング・ストリート。300~400mに渡って商店街がナイト・マーケットと化します。
桟橋を背に一番手前は衣料品メイン(※下掲の写真左上)、真ん中にフードの屋台を挿み(※同写真右上)、奥側は雑貨とふたたび衣料品の屋台が多く並ぶといった構成。途中マリファナの露天(※同写真右下)もチラホラ出ていました。
総じて特別な何かがあるでもなく、タイの田舎でよく見るタイプの超普通な夜市。肌感覚ではお客さんの3割が旅行者、残りの7割が地元民みたいな感じでしょうか。
お惣菜を買いにきては目の前の公園でプチ宴会をしている大所帯ファミリーがいたり、初々しくダブルデートしているティーンエイジャーのグループがいたり、小銭を握り締めて駄菓子の屋台に群がる子どもたちがいたり……。
「普段はみんなどこにいるんだろう?」と不思議に思うくらい、ローカルの人出の多さと活気がハンパないです。
島に住む老若男女みんなの共通娯楽として、この週に1回の歩行者天国がしっかり機能しているんだな~と、何だか羨ましくなってしまいました。都会じゃなかなかお目にかかれない光景だと思います。
地元っ子の勢いに負けじと、私とツレはこちらのお店で80THBのカオモッカイ(ビリヤニ)を注文。ぶっちゃけ、店で食べるのと値段は大して変わりません。
でも、こういうのは雰囲気が大事。ローカルに混じって夜の浜辺でワチャワチャ食べたカオモッカイは絶品でした。
座禅のオーナーに話を聞く
話は変わって、別日の夕方にトンサラの和食レストラン=座禅をふらっと訪問。2009年にオープンした座禅はツーリストや移住者の心の拠り所です。
島のいろいろな情報を提供してくれるのはもちろん、店主2人(のぶさんとりっちゃん)の小気味良いやりとりが好きで、パンガンへ行くたびにマストで足を運んでいる方も少なくないでしょう。
感染が拡大した期間は店の営業も厳しかったんじゃないかと思いきや、「うちは観光客よりもパンガン在住の常連さんに支えられてきた店だから、意外と売上は落ちなかったよ」とのぶさん。
頼もしい言葉じゃないですか。入国規制や移動制限も何のその、地域密着型の商いは本当に強いです。
パンガンでも一時はコロナが流行ったそうです。自治体から飲食店に向けて時短営業の要請やアルコール禁止のお達しもあったとか。
しかし、「それじゃあ、生活できない!」と同業者が一丸となって役所に猛抗議。結局、諸々の規制は撤廃され、小規模のイヴェントもすぐに再開されたというから、流石はパーティー島です。
コロナ期間中もクラブへのガサ入れは続行され、違法薬物で拘留される人もそれなりに後を絶たなかったらしく、いやはや……。
また、パンデミック直後に島でマスクが圧倒的に不足していたにもかかわらず、国の決まりでマスクを着用していないとコンビニやスーパーに入店できなかった頃のエピソードも笑ってしまいました。
困った一部の島民は、店から出てくる知り合いを捕まえ、マスクを借りて難を凌いでいたんですって。凄くないですか? 衛生的な問題はさておき、やっぱり背に腹は代えられないです。
転んでもただでは起きない
文字にできないトピックも含め、この2~3年のパンガンの近況をのぶさんとりっちゃんに伺いながら強く感じたのは、「コロナには感染したくないけど、そればっかり考えて生きていても全然幸せじゃないよな~」ってこと。
いつ収束するかわからないものに対してただ受け身で待っていても、生活は困窮する一方です。ならば、自分たちでやれる範囲のアクションを起こし続け、人生を楽しむ努力を怠らなかった島民の姿が、私にはめちゃくちゃカッコ良く映りました。
確かに綺麗事ばかりも言っていられませんよ。高級志向のレストランや短期滞在向けのゲストハウスは容赦なく潰れています。
その代わり、トンサラを境に島の北側では長期滞在者や移住者をターゲットにした物件が続々と建設され、急ピッチでリリースされていました。
そうした努力の甲斐あってか、イギリスの保険会社がネット環境や物価、安全性の見地から、世界でワーケーションに適した場所の第1位にパンガンを選出(※ご参考までに、2位はスペインのグラン・カナリア島、3位はポルトガルのリスボン、4位はアメリカのオースティン、5位はブラジルのサンパウロでした)。
実際にロシアから脱出してきた一家や、光熱費の高騰を理由に冬限定でプチ移住していたイギリス人やドイツ人カップルなどとちょくちょく遭遇。パンガンを訪れる外国人の傾向が、数年前とは少し異なっているようです。
世の中のニーズをイイ具合に汲み取り、着実に生き残る道を探り当てているパンガン。何度も言いますが、この島はヤワじゃないです。コロナを経てパンガンの図太さを目の当たりにし、改めて惚れ直しました。
【お知らせ】東南アジアで買い付けてきたアイテムを販売中。春夏は水着やリゾート服を中心に、秋冬はアクセサリーを中心にラインナップしています。ぜひチェックしてみてください。
ランキング参加中。ぽちっとしていただけたら嬉しいです。