FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

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村上敦伺・四方健太郎『世界一蹴の旅 サッカーワールドカップ出場32カ国周遊記』|読書旅vol.88

ボケボケしていたらサッカーW杯まで1か月を切っていました。今回のカタール大会は異例の11~12月開催。欧州リーグがシーズン真っ只中で中断を余儀なくされ、強豪国を中心に準備不足も懸念されるなど、つい最近までイマイチ盛り上がりに欠けていた感は否めません。しかし、流石に開幕が間近に迫ってくると、否応なしにワクワクしてくるものです。

そこで今回はこのワクワク感をさらに加速させるべく、アシシこと村上敦伺さんとヨモケンこと四方健太郎さんの共著による『世界一蹴の旅 サッカーワールドカップ出場32カ国周遊記』(2010年/双葉社)をピックアップしてみました。

 

W杯出場32か国を踏破しよう!

ブログから派生したこの書籍は、2人のサッカー・フリークが2010年の南アフリカ大会をより楽しもうと、出場32か国の踏破に挑んだ紀行エッセイ。

旅の期間は2009年7月から2010年4月までの10か月。普通の勤め人にはなかなかハードルの高いスケジュールです。そんなこんなで、アシシさんとヨモケンさんは勤めていた会社をすっぱり退職

ちなみに、現在のアシシさんは経営コンサルタント兼ライター兼コンサドーレ札幌のサポーターとして活動し(Twitterのプロフ欄には「サポーターに対するサポート活動で生計を立てている」との記載も)、今回のカタールW杯にあたってはCAMPFIRE内にコミュニティー・サイト『カタールに行ってサッカー日本代表を応援しよう!』を開設。

一方のヨモケンさんは、シンガポールを拠点に人材育成会社を経営し、同時に神奈川県社会人2部リーグ鎌倉インターナショナルFCのオーナーもされていました。変わらぬサッカー愛に感服です。

 

寝ても覚めてもサッカー!

南ア大会出場への切符を手に入れた国には、日本と国交のない北朝鮮や、イスラム過激派によるマグリブの反乱で混迷するアルジェリアを含み、それらの国もスルーせず足を踏み入れていく2人(※ただし、凶悪なテロ事件が頻発するナイジェリアは身の危険を感じて空港にタッチするのみ)。

訪れた先々で彼らは何をするかと言うと、ご当地リーグの観戦はもちろん、各国のサッカー協会、ならびにその総本山であるFIFAへの表敬訪問(9割方はアポなし)、地元の方との草サッカー、そして貧困地域に住む子どもたちへボールのプレゼント……と、もうサッカー三昧です。

イタリアの街中で〈ITALIA〉と書かれたTシャツやパーカーを着ている人を多く見かけた折には、そこから国民の高い愛国心を汲み取り、〈同国がW杯に強い理由はここにあり〉と分析。

はたまた、オン/オフの切り替えが上手いアルゼンチン市民のライフスタイルに、マラドーナやメッシらの緩急自在なプレイ・スタイルを重ね合わせてみたり。

トラムや自動車に何度もヒヤッとさせられたアムステルダムでは、歩行者に優しくない同地の交通事情を紹介しながら、そういう環境下だからこそオランダ人は日常的に状況判断能力が磨かれ、サッカーにも活かされている……みたいな持論を展開したり。

〈その解釈はいささか強引なんじゃ?〉と思う場面も多々ありつつ、何でもかんでもサッカーと結び付けて文章を展開していく様がおもしろいです。

 

サッカー好きは読んで損なし

道中でロビーニョ(元ブラジル代表)やケーヒル(元オーストラリア代表)にサインをもらったかと思えば、日本代表の強化試合(の練習先)で本田圭佑に突撃ミニ・インタヴューを敢行(※その様子は下掲のYouTubeリンクで閲覧可能)。

組み合わせ抽選会場付近のバーでは、ドゥンガイエロカルロス・ケイロスファン・マルバイクに……と、往年のスターにも次々と遭遇します。羨ましい。

www.youtube.com

また、以下に引用した、アルゼンチンの名門ボカ・ジュニアーズのチームカラー(青と黄色)にまつわるトリヴィアをはじめ、思わずサッカー好きの知り合いに話したくなる豆知識も要所でさりげなく登場。

その昔、ボカのチームカラーを検討している時に、「次にブエノスアイレスの港に入ってくる船の国旗の色にしよう」という、なんとも適当な決め方をしたそうで、そこへやってきたのがスウェーデンのこっきを掲げた船だったとか。

つまるところ、サッカー愛好家はまず読んで損なし。逆に、興味のない人にとっては〈何のこっちゃ?〉な一冊かもしれません。むしろあまりのアツ苦しさに嫌悪感を抱く人がいても不思議じゃないです。

でもそれでいいと思います。各大陸をぐるっと巡るだけでも十分に貴重な体験で、作品として成立するなか、そこにもう1つテーマを設けているのが本書の強み

過去に当ブログで紹介した作品を例に挙げると、空手が世界に通用するか体を張って確かめに行った大山倍達さんの『世界ケンカ旅』や、各国の変わった食肉を求めて放浪する白石あずささんの『世界のへんな肉』、当時最年少で単独・無寄港・無補給の地球1周に成功した白石康次郎さんの『七つの海を越えて: 史上最年少ヨット単独無寄港世界一周』他、世界1周にプラスして特殊なコンセプトがある本は、やはり途轍もないオリジナリティーが生まれるよなと。

私も前職時代、特集の企画書を提出するたびに、よく編集長から「単に〈○○を紹介する特集〉じゃなく、〈○○の○○を紹介する特集〉って感じになるように全体のテーマをもっと意識して」と繰り返し言われてきましたっけ。

コンセプトがはっきりしていれば、仮に細部の内容が多少ブレてもある程度1つのかたちとしてまとまる。一方、どんなに文章表現がカッコ良くても、コンセプトが不明瞭だと、何のコンテンツかすら受け手には伝わらない――ブログECサイトを運営していくうえで物凄く大事なポイントを、今回の読書体験を通じて再確認した気がします。

 

どうなる、カタールW杯!?

さて、『世界一蹴の旅』の本当の意味でのゴールとなった南アフリカW杯当時の日本代表は親善試合などの成績が振るわず、前評判は最悪。同じグループには当時FIFAランク3位のオランダもいましたし、1次リーグ敗退はほぼ間違いないだろうと目されていました。

けれども、岡田ジャパンは下馬評を見事に覆し、決勝トーナメントへ進出。日韓大会以来2度目のベスト16に輝き、Twitter上には〈#okachan_sorry〉〈#総懺悔〉をはじめ、謝罪ハッシュタグが溢れ返ったわけです。

あれ? 何だか今大会の状況と少し似ている? 森保監督の現時点での支持率の低さに加え、日本が戦うグループEには、過去のW杯で優勝を経験している全8か国中の2か国、すなわちドイツスペインがいるというクジ運の悪さ。

我らがSAMURAI BLUEにとっては、贔屓目に見てもかなり厳しい状況ながら、南ア大会を踏まえると、逆境こそがチャンスだとも思えてきます。

それに前回のロシア大会では、韓国ドイツに2対0で勝利し、大国ドイツのグループリーグ突破を阻みましたからね。

……と、何だか妙に前向きになってきました。いよいよ開幕まで約1か月。4年に1度、サッカー漬けになる日々がやってきます。この本を手に取った当初の狙い通り、ワクワク感が急加速して止まりません。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

www.futabasha.co.jp

 

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