FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

現在は旅の記事をお休みし、旅関連の本を紹介する読書ブログに切り替えています。

坂井禧夫『インドネシア駐在3000日 200のインドネシア語ことわざ付』|読書旅vol.41

前回の『モノを捨てよ 世界へ出よう』にまんまと乗せられ、海外移住欲を掻き立てられたところで、今度はジャカルタを舞台にした『インドネシア駐在3000日 200のインドネシア語ことわざ付』(2002年/連合出版)を再読しました。

以前に投稿した『バリの魂、バリの夢』の感想文でも書いた通り、バリ島にゾッコンだった若かりし日の私(※詳しくはこちら)。『インドネシア駐在3000日』を手に取ったのも、バリのことを、ひいてはインドネシアのことをもっと知りたいと燃えに燃えていた時期です。

 

駐在員の奮闘記

著者の坂井禧夫さんは1982年に自衛隊入りし、除隊した翌1993年に民間企業へ就職してインドネシアへ出向。

ジャカルタ郊外での工場設立から、現地で数百人の部下を抱えるに至るまで、本書には駐在員として汗水流したおよそ3000日間の様子が綴られています。

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電話の応対1つを取っても、インドネシアではかけた側が名乗らず、出た相手に向かって〈君は誰だ?〉と尋ねるのだとか。『となりのトトロ』の劇中でサツキちゃんがカンタの親戚宅まで電話を借りに行ったシーンを思い出してみてください。

固定電話の普及率が低い同国において、電話が通っている本家的なポジションのお宅は、おのずと大所帯になります。となれば、受話器を取る人もその時々で異なり、発信者側が最初に電話口の相手を確認したくなる気持ちは理解できます。

ただし、携帯電話が急速に広まり、個人宛に直接連絡する機会が増えてもなお、発信者側の〈君は誰だ?〉で会話がスタートする習慣は変わらない様子でした。言うまでもなく、日本では電話をよこしたほうから名乗るのが普通ですよね。

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このように、日本の〈普通〉が〈普通じゃない〉異国の地で、法人企業の代表として現地採用した部下を束ねなければならないとは……。水道ポンプが身内に盗まれ、安全のために作業靴を支給してもここ一番の時にはみんな裸足になり、何でもかんでも施錠する癖が仇となって鍵の紛失が頻発し、戸棚や書類ケースを破壊することも日常茶飯事。

数年前に話題になった『同僚は宇宙人: 職場のモヤモヤ一掃マニュアル』の中で野澤幸司さんが使われていた言葉を拝借すると、インドネシア人部下もかなり手強いオフィス宇宙人ぶりを発揮しています。

また、中近東や北アフリカ地域に比べ、戒律が緩いとされてきたインドネシアイスラムにまつわる話――お祈り断食服装について――も興味津々でした。男性と女性の役割が明確に区別されているイスラム社会のイメージを、ガラリと覆された感じ。

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男女分け隔てなく、能力の高い人にはどんどんチャンスを与えるという国の方針のもと、例えば軍隊でも女性軍人が多く活躍し、男性とほぼ同じ条件で昇級できるみたいです。

「日本社会がこれまでいかに多くの場面において、主導権を男性へ優先的に与えてきたかがよくわかる」とは著者の言葉。

もっとも、昨年まで続いた新兵に対する処女検査を筆頭に、国際人権団体から猛批判されてきたイスラム文化圏らしい慣習もありつつ、いずれにせよ『男女平等ランキング2021』で世界153か国中120位の日本は、インドネシアから学ぶべきあれこれがたくさんありそうです。

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お気楽なフリーランサーである私は、生活習慣文化的/宗教的価値観の違いを、ただただ面白がって読んでいたものの、組織の上に立つ人であれば、おそらくもう1歩踏み込んだ読み方ができるはず。

満足に言葉が通じない部下とどうやって信頼関係を築いていったか。坂井さんが赴任先で発揮した統制力コミュニケーション・スキルは、日本で働く企業戦士にもたくさんの気付きをもたらしてくれると思います。

 

ことわざから知る日本との共通点

さて、副題にもあるように、インドネシアに伝わる200のことわざが、各エピソードごとに紹介されていく『インドネシア駐在3000日』。ことわざ慣用句はその国民の気質を如実に表すものです。

タイの〈コブラの喉に手を入れる(権力者から物を盗む)〉然り、韓国の〈処女が子を産んでも言うべき言葉がある(何にでも理屈はつけられる)〉然り、イタリアの〈女は災い〉然り。もっと身近なところで〈出る杭は打たれる〉なんて、まさに協調性を重んじる日本ならではでしょう。

各ページの下部に脚注的なかたちで設けられた本書のことわざコーナーは、日本語にほぼ同義の表現がある場合に限り、それも並記。あまりにも同じ意味のことわざが存在する点に、私は物凄く驚きました。

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電話のマナーも、職場の様子も、細かい部分の差異は山ほどあります。でも、日本人インドネシアの根底にある性質って、実はけっこう似ているのかも。

実際にインドネシア国民性は、気が利いて、勤勉で、帰属意識が高く、年配者を立て、良くも悪くも周りに流されやすいとも言われ、日本人との共通点を見出さずにはいられません。

約300の民族を擁し、国土も広く、約18,000の島から成る国ですから、もちろん一概に括れないと思いますが、古くから伝わることわざと照らし合わせてジャカルタ周辺の営みを眺めてみた結果、グッと同地が身近に感じられたのは事実です。

 

バリ島とジャワ島

白状すると、もともと私はジャワ人に良いイメージを持っていませんでした。バリ人ジャワ人の仲があまり良くないのは、バリ好きの間でよく知られています。

スリに遭いかけた話や、詐欺紛いのやり口で別荘を売りつけられそうになった話をバリ人に伝えた時も、漏れなく彼らはジャワ人の仕業だと決めつけ、あろうことか、私までそれを信じていました。

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外国人旅行者にはウェルカムな態度で接してくれるバリ人が、なぜジャワ人に対して排他的な感情を持つのか。経済格差信仰の問題をはじめ、そりゃ、いろいろあって当然です。

だとしても、通りすがりの部外者は、よくある隣人トラブルとして軽く受け流せばいいのに、心のどこかで〈ジャワ人は危険だわ!〉と思い込んでいたんですよ。

バリに傾倒するあまりジャワの皆さんを勝手に悪者扱いしてゴメンナサイ。本作を読んだ何年か後にジャカルタジョグジャカルタを訪れ、バリ島だけじゃなく、ジャワ島も大好きになり、いまではすっかり考えを改めました。

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ジャカルタに腰を据え、上司として地元の方々とガッツリ交流する経験は、誰でもできるわけじゃありません。少なくとも私はこれまで経験していませんし、この先もほぼ100%に近い確率で経験できないっぽいです。

だからこそ、著者が現地で過ごした貴重な日々と、そこから見えてきた地域の特色を、読者として知れるのは本当にありがたいな~って感じています。

まだまだ気軽に海外へ行けない状況のなか、自分の足が使えないなら、せめて読書を通じて海の向こうに意識を飛ばし、知見を広げていきたいと考えている今日この頃。コロナウイルスが終息するまで、もうしばらく私の読書旅は続きます。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

 

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