FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

現在は旅の記事をお休みし、旅関連の本を紹介する読書ブログに切り替えています。

大山倍達『世界ケンカ旅』|読書旅vol.31

世間ではかれこれ1週間前に仕事始めを迎え、あれよあれよと成人の日も過ぎたところで、〈いい加減そろそろ正月ボケを何とかせねば!〉と、背筋を伸ばして『世界ケンカ旅』を再読しました。ご説明するまでもなく、著者の大山倍達さんは極真会館の創設者であり、空手を世界に広めた凄い方です。

ちなみに、私の兄は小学校中学年から大学卒業までガッツリ空手漬けだったのに対し、私自身はまったくの未経験者。しかも兄の取り組んでいたのが寸止め空手だったので、フルコンタクト系の知識はゼロに等しいです。

だから、実際は大山総裁の偉大さを100分の1も理解していないと自覚しています。でも、そんな私ですら120%わくわくドキドキさせてくれる『世界ケンカ旅』。これは控えめに言っても最高の1冊だと思います。

 

極上のエンターテインメント作品

1968年にKKベストセラーズより刊行され、1985年に徳間文庫から再登場した『世界ケンカ旅』は、〈極真空手国際化第1段階〉と総裁みずからが位置付ける時期の紀行文。エキシビション講演会を行うため、アメリカ・南米・東南アジア・中東・ヨーロッパを忙しなく巡っていた当時30代の大山総裁は、体力技術力も高く、ついでに性欲だってすこぶる旺盛です。

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旅の主目的は多くの人に空手を広めることと、道場建設の資金を稼ぐこと。その上で、「強い人間に会えるなら、私としては、それが世界のどこであっても、こちらから出かけていきたい」「世界じゅうの、武器を持たない格闘術を、片っぱしから自分の眼で見て、できることなら、空手との優劣をたしかめてみたい」と、とにかくギラついています。

NYスパニッシュ・ハーレムのギャング、シカゴの猛牛、ブラジルの短剣使い、タイのムエタイやフランスのサパットら各地に伝わる格闘技の達人など、次々と現れる難敵に立ち向かっていく――本の内容を簡潔に説明すると、こんな感じ。先輩や上司の語る昔の俺自慢は往々にして鬱陶しいですが、大山総裁くらいブッ飛んだ武勇伝であればむしろ大歓迎です。

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さらに、「ビスケイン湾をはさんで、マイアミ・シティマイアミ・ビーチがむかい合い、静かな海べのホテルの列と、ハイウェイとが、きれいな点と線の、灯のつらなりを見せている」とか、「いろんな国の、いろんな都会の昼間の顔が、それぞれ違っているように、都会の夜の化粧にも、その都会だけの個性があるようだ。先入観のせいかもしれないが、テヘランの街の灯はなんとなく甘ったるくて、なんとなく熱っぽい」とか、情景描写がロマンティック

加えて、ブロンド・ガールラスヴェガスの街角で身体を寄せ合っている場面にマッチョな元カレが登場する他、思わず身を乗り出さずにはいられない劇的な展開が随所で用意され、死闘後にはお約束のように各国の美女とのアヴァンチュールが艶っぽく描かれています。そのストーリー運びは、さながら地球存続の危機に晒されても最後はヒロインとキスして終わるハリウッド大作映画の如し。かなり大味だけど、それがまた良いんです。

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もしも本書が格闘シーンばかりだったら、ここまで重版を続けなかったかもしれません。〈流石に話を盛っているだろ!〉的な指摘もありつつ、そこは正直どっちでもよくて、仮に多少の脚色をしていたとしても、エンタメ度を高めて読者の好奇心を刺激し、空手の普及に結び付けているのだから、大山総裁のボロ勝ちと言えるんじゃないでしょうか。

そもそも名作漫画『空手バカ一代』だって、『世界ケンカ旅』なくして生まれ得なかったわけですもんね。

 

ハウツー本としての『世界ケンカ旅』

大山総裁のように、猛牛を素手で倒したいと意欲を燃やしている人間は滅多にいないと思います。しかし、強くなりたいと願っている方は多いはず。そういうニーズにも『世界ケンカ旅』はしっかり応え、肉体の鍛え方やいざという時の攻撃法をあれこれ指南。ご参考までに総裁の教えをいくつかピックアップしてみました。

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【①腕立て伏せの方法】手間もかからず、場所も取らない腕立て伏せは、一般の人にも良い運動だと語る大山総裁。手の平をピタッと床につけず、5本指4本指3本指と徐々に身体を支える指を減らしていく方法を推奨されています。

なお、全盛期の頃の総裁は1本で指立て伏せをし、2本の指で逆立ち歩行をしていたとか。ここまでいけば、10円玉を片手で軽く折り曲げられるらしいですよ。

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【②ベンチプレスの仕方】ベンチプレスで体重の倍まではバーベルを持ち上げられたものの、それ以上はどうしても上がらなかった総裁は、奥様に尻めがけてブスッと畳針を刺してもらい、その勢いで持ち上げるという妙案を思いつきました。

そして、「自分の力を、瞬発的に集中させる練習のために、これは効果のある方法だ」と綴られています。

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【③孤拳の活用法】孤拳とは手首の外側の部分。素手で戦う時のメジャーな方法(正拳・手刀・平手・貫手)はいずれも一度構えてから打つなり突くなりするのに比べて、「孤拳なら、脇にたらした手を、そのまま空いてのあごへふりあげればいいのだ。こぶしを固める必要もない」そうです。

敵が自分の腕の届く距離にいる際や、いきなり襲撃された際に、とても有効だとも補足されていました。

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【④相手と対峙する時の座り方】敵と向き合って腰をおろし、足を組む場合は、一方の足首をもう一方のに乗せるのがベター。その理由は向かい側の人間が飛びかかってきた時に、「相手の腹へ足をぶちこむにも、(中略)テーブルを蹴っとばすにも、一方の足首を最短距離でつき出せる」から。

「相手がなぐりかかってきても、この位置から足をつき出せば、スピードでも力の点でも、まず負けないだろう」とのことです。

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【⑤身の回りのものから己を守る術】非常時に備え、身の回りのアイテムや自分がよく使う道具を武器に活用できないか意識しておくべし、と助言されている大山総裁。もちろん拳銃やナイフといった法に触れるものではありません。

例えばデスクワーカーは机の上に何本かペンを用意し、壁に提げた標的へ突き立てる練習をする。また、「ペンほど強力な武器にならないにしろ、万年筆でも、万一のときに相手ののどへつき立てるつもりなら、少なくとも自分を守る手段にはなる」と続けます。なるほど……。

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【⑥刃物を持った相手と戦う時の気組み】総裁曰く刃物を持った人間に挑む際は、少々の怪我を恐れないのが鉄則。「には、決して刃物を受けてはならないが、片腕片足ぐらいには怪我をしても、相手がその傷をこちらに負わせているあいだに、相手をぶちのめしてしまえば、それでいい」と。勉強になります。

 

どうですか? どうですかって訊かれても困りますかね。①と②に関しては、ここまでストイックに肉体を追い込める自信が私にはありません。③から⑥に関しても、このテクニックを実践する機会が自分の身に訪れないことを祈らんばかり。

だとしても、心構えを養っておくのはとても大事です。大山総裁の行動や、そこから生まれた独自の哲学を狂気の沙汰と取るか否かは受け手次第ですが、少なくとも心も身体もなまりきった今日の私に気合いを注入してくれたのは確か。明日からシャキッとします。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

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