引き続きオンヌットにあるWat Mahabut(ワット・マハーブット)のお話。今回はこのお寺と縁の深いメー・ナークの霊について書きたいと思います。
Mae Nak Phra Khanong Shrine(メー・ナーク・プラカノン寺)なる別名からも窺える通り、Wat Mahabutのシンボルはメー・ナークを祀った祠。
「先にこっちのネタを取り上げるべきだった?」という順番的な問題はさておき、前回のブログではWat Mahabutの娯楽スポット的な側面にフォーカスしています。
BTSオンヌット駅からのアクセス方法なども記載していますので、お時間があれば併せてこちらからチェックしてみてください。
メー・ナークの伝説
そもそもメー・ナークとは何なのか? タイで知らない人はいないとまで言われているこの霊にまつわる民話を、まずはざっと要約してみましょう。
遡ることチャクリー王朝初期。身分の低い庭師のマークと恋に落ちた村長の娘ナークが、家族の猛反対を突っぱねて駆け落ちするところから物語は始まります。
やがてナークは妊娠。時同じくしてマークは徴兵されるのですが、マークが戦場にいる間に彼女とお腹の子どもは難産のため死亡。
その後、夫への愛情と未練を断ち切れないナークは赤ちゃんと共に精霊になり、兵役を終えたマークと再び暮らし始めます。
ナークの死を知る周囲の人々は繰り返しマークに忠告するも、当の本人は「どうせお前らは俺たちの仲を引き裂きたいんだろ?」と聞く耳を持ちません。
けれどもある日、杵を取ろうとしたナークの手がビヨーンと伸びる瞬間を、偶然マークは目にしてしまいました。
ようやく真実を知った彼はWat Mahabutへ駆け込み、お坊さんに助けを要請。それを知ったナークはみるみるうちに悪霊化し、次々と村人を呪い殺していきます。
そんな折、功名な僧侶がお寺に現れて彼女を退治。ナークの骨壺はWat Mahabutの真裏にあるプラカノン運河に投げ捨てられましたとさ。おしまい。
映画は軒並み大ヒット
そうなんですよ、途中まではイイ感じのラヴストーリー。身分を捨ててまで愛した相手を死後も忘れられず、霊になって彼の前に現れるなんて素敵じゃないですか。
それこそ『トッケビ』とか『九尾狐』みたいなノリでロマンティック・コメディー仕立てに韓国ドラマ化したらハマりそう。
……それなのに、物語は突如としておどろおどろしいホラー路線へとシフトチェンジ。個人的には凶暴化したナークはもとより、寺に逃げ込んだマークがどうしても解せないんですけどね。
精霊であろうが何だろうが、「愛するナークと一緒に暮らせるなら僕は幸せだ」っていう考えになりませんかね?
とはいえ、古来よりタイの生活様式には精霊=ピーが深く根付き、ピーは信仰の対象であると同時に、いま現在でも人々を恐怖に陥れる存在。家や建物の前によくある写真上のような小さな祠もピーを祀ったものです。
実際にメー・ナークの話もノンフィクションと捉えているタイ人が少なくないとか。したがって、タイ人の前で「マークはヘタレだ」なんて口にしようものなら、イヤ~な顔をされるはず。文化の違いっておもしろいですよね。
なお、メー・ナークの物語はこれまでに何度も何度も映画化され、タイ国内で大ヒットを記録しています。
私が観たのは日本でも劇場公開された2013年作『愛しのゴースト』(原題:Pee Mak)。タイでの興行収入が同年の『アナと雪の女王』を大幅に上回ったことでも話題を呼びました。
↑の予告編に違わず『愛しのゴースト』はコメディー要素が強め。一方、もっとホラー寄りの作品がお好みな方には1999年作『ナンナーク』(原題:Nang Nak)をプッシュしておきます。
『アナ雪』超えした『愛しのゴースト』に対し、こちらは『タイタニック』の興行成績を抜いたという宣伝文句と共に本邦上陸。
いちいち欧米のビッグな映画を引き合いに出す日本の配給会社はいかがなものかと思いますけど、とにもかくにも興味のある方はぜひぜひ。
お参りの作法
そんなメー・ナークを祀った殿舎はバンコク有数のパワースポット。子授け・子宝・安産・縁結び他、女性に嬉しいご利益があると信じられています。
ここで「難産の末に亡くなり、いろいろあって悪霊になったメー・ナークが信仰の対象になり得るの? むしろ縁起悪いのでは?」と疑問に思ったのは私だけでしょうか。だって罪のない人たちを大量虐殺しているんですよ。
聞いた話では、彼女がマークを一途に慕い続けた点にタイの人々は強く惹かれているようで……。悪行よりも善行を見てその人(霊?)を判断するとは、彼らの心の美しさに感心してしまいました。私も少しは見倣いたいものです。
メー・ナークの殿舎は昼夜を問わず多くの女性参拝客で賑わっています。20THB(約70円)でお線香2本とロウソク1本、金箔をゲットし、順にお線香を立て、ロウソクに火を灯し、メー・ナークの像に金箔を貼り付けたら参拝終了。
願いが叶った際はお礼にタイドレスやおもちゃを奉納するのが作法っぽいです。ナークを怒らせないよう、参拝される方はくれぐれもお忘れなく。
ちなみに、メー・ナーク像のすぐ近くには撫でると宝くじの当たり番号がひらめくという驚きのご神木も存在。
ご親切に宝くじ売場も併設されていて(*写真上)、やけに俗っぽいです。「この国の人は本当にギャンブル好きだな~」としみじみ感じたり感じなかったり。
さらにその奥に広がるのは、メー・ナークの骨壺が投げ捨てられたプラカノン運河。ここでは生き物を放つことで徳を積む行為=タンブンが体験できます。
魚や貝、蟹など生き物の種類はさまざま。何を放つかによって得られる効果が変わってくる模様です。もっとも高額な小鳥は50THB(約175円)でした。また、川の魚に餌を与えて徳を積むことも可能。餌代は10~20THB(約35~70円)です。
参拝客の多いお寺なせいか、餌を投げ入れても全然喰いついてくれないのが少々気掛かり。まあ、たま~に鳩が食べてくれるため、そのへんは良しとしましょう。
以上がWat Mahabutにまつわるメー・ナークの伝説と参拝方法+αでした。信じるか信じないかはあなた次第?
いずれにせよタイの文化に触れられ、前回のブログに書いた通り人々の暮らしぶりも垣間見えるこのお寺が私は大好き。機会があったら足を運んでみてください。
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